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各自動車メーカーはEVの「値付け」に苦慮!製造コストがガソリン車よりも高くなり、しかし高く設定すれば売れず、ガソリン車と同等にすればモトが取れないというジレンマに

2023/06/18

EV

| 結局はEVをギリギリ「売れる」価格に引き下げ、そのぶんの損失はガソリン車を売ってカバーするという矛盾が発生 |

やはり急激な電動化シフトには色々と問題があるようだ

さて、現在世界中の自動車メーカーが苦戦しているのが「電動化への対応」。

これには(自動車メーカーの立場から見て)様々な問題があり、主には研究開発費がかかること、製造コストがかかること、販売に際しても(追加の)コストがかかり、修理についてもまたコストがかかること。

正直言うと、ずっとガソリン車に作ってきた既存自動車メーカーにとっては「できればEVはやりたくない」というのがホンネなのかもしれません。

まだまだEVは高い買い物である

そして既存自動車メーカーにとって悩みの種が「ガソリン車との価格バランス」。

たとえば、同じCセグメントのSUVについて、ガソリン車の価格が400万円くらいだとして、同じクラスに属するEVを400万円で販売することはまず難しく、たとえばトヨタだとbZ4Xは600万円からという価格設定ですが、ハリアーは312,800円から、そしてRAV4は2,938,000円から、ランドクルーザープラドは3,676,000円から、ランドクルーザーは5,100,000円から。

こういった状況ではとうていbZ4Xが売れるはずがないことがわかるものの、これは他のメーカーでも同じことで、たとえばメルセデス・ベンツだとEQEセダンが1248万円から、そしてEクラスセダンが873万円から。

BMWでは4シリーズ・グランクーペが708万円から、しかしその電動版であるi4は848万円から、という価格設定です(これは電動版の価格を抑えるべく、かなり頑張った方である)。

さらに言えば、マセラティは「グレカーレ」「グラントゥーリズモ」「MC20」など新しいラインアップに対して「ガソリン」「ピュアエレクトリック」を設定することになりますが、このピュアエレクトリック版=フォルゴーレについては「同じクルマなのに、パワートレーンが電動になっただけで」価格が大きく上がることになるものと思われ、(まだ価格が発表されていないものの)フォルゴーレの価格設定について、マセラティは相当に頭を悩ませることになりそうです。

Maserati-GranTurismo (3)

GM「普及価格帯のEVは採算が取れない」

そこで今回GMも「EVの価格設定には苦慮している」というコメントを出しており、「3万ドルから4万ドルのEVは現時点では採算が取れない」とも。

EVの要である”満充電あたりの航続距離”を伸ばそうとなると(バッテリーのコストが上がるので)製造コストが高くなり、しかし販売価格を高くするとそのEVは売れないので開発コストを吸収できず、現在かなり困ったことになっているもよう。

そしてGMは2023年末には「これまででもっとも安価なEVである」シボレー・ボルトEV(27,000ドル)の販売を終了させ、GMにおけるエントリーEVを(SUVであり、より高額に設定できる)シボレー・エクイノックスEVに置き換えるとしていますが、それでもまだ利益を出せないといい、ゼネラルモーターズのCEO兼会長メアリー・バーラ氏は(第39回バーンスタイン戦略的意思決定会議において)「バッテリーコストは、大衆市場、つまり3万ドルから4万ドルの車、つまり世界中の新車販売の大部分を占めるCセグメントのような(内燃機関を搭載する)クロスオーバーSUVに到達できるレベルにはまだありません」とコメント。※ハマーEV、キャデラック・セレスティックのような高価格EVを優先してリリースするのはここに理由があるものと思われる

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ただ、「元が取れない」からといってそのセグメントのEVを販売せねばEV市場における覇権を獲得できないばかりかプレゼンスを失ってしまい、現在は「利益が出なくても」売るしか無いという状態でもあり、「ではどうやって会社を存続させるための利益を得るのか」というと、その手段はシボレー・シルバラードやGMCシエラのような、より市場が大きい、そしてより大きなガソリンエンジンを搭載するSUVやトラックを大量に販売することなのだそう。

つまり、「少しのEVを売るために、大量の大きなトラックやSUVを販売せねば会社が存続できない」という意味不明な状態となっていて、しかしもちろんこれはGMだけにあてはまる事象ではないものだと思われます。

EVは自動車メーカーにとって「諸刃の刃」でもある

ただ、現在の社会情勢、そして規制を考慮するに、EVをどんどん開発して販売せねばならないことも間違いなく、そしてこの状況は自動車メーカーの財政を圧迫することになりますが、GMのように「ガソリン車の販売によって、EVのマイナス分をカバーできる」のはまだいい部類であり、というのも「ガソリン車を持たないEVメーカー」は惨憺たる状況にあるため。

テスラが黒字化するのには相当に長い年月を要していますが(黒字化したのはつい数年前のことである)、中国で「三大EVメーカー」のひとつに数えられるNIO(蔚来汽車)は2023年第1四半期において(売上高が前年同期比で7.7%であったものの)損失額が前年比165%の47億4000万元に拡大したといい、この状況は「いかにEVで利益を得ることが難しいか」を如実に表している事実なのかもしれません(三大EVメーカーの残りの2つはLi Auto=理想汽車とXpeng=小鵬汽車)。

NIO

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参照:CARBUZZ, 36Kr, etc.

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