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F1向けに導入されたアストンマーティンのセーフティカーがあまりに遅く「F1マシンのタイヤの温度が下がる」としてドライバーから不満噴出!FIAが異例の「擁護コメント」を発表する事態に

2022/04/19

F1向けに導入されたアストンマーティンのセーフティカーがあまりに遅く「F1マシンのタイヤの温度が下がる」としてドライバーから不満噴出!FIAが異例の「擁護コメント」を発表する事態に

| 華々しくデビューするはずが、どうしてこんな事態に |

オーストラリアGPでの速度が「アストンマーティン・ヴァンテージ・セーフティカー」の限界だったようだ

さて、アストンマーティンはF1グランプリに参戦すると同時にセーフティカー(ペースカー)としてヴァンテージを提供していますが、このヴァンテージがあまりに遅すぎるとしてF1ドライバーからクレームが噴出することに。

ちなみにF1のセーフティカーはアストンマーティン・ヴァンテージが導入されるまでの24年間「ずっと」メルセデス・ベンツのみが独占的に努めていますが、もともとメルセデス・ベンツがセーフティカーに採用されるようになった背景としては「他のクルマでは遅すぎたから」。

F1におけるセーフティカーの導入は1973年のカナダグランプリ、そして正式にルールが制定されたのは1992年のブラジルGPだとされ、そこからしばらくは「様々な」セーフティカーが使用されていたものの、しかしセーフティカーの速度が遅すぎたために「(セーフティカーが入っている間に)タイヤの温度が下がってしまい」、そこで導入されたのが速く走ることができるメルセデス・ベンツ製の高性能スポーツカー。

そしてセーフティカーは(コース上に登場すると)TV中継でも大きく写るため、メルセデス・ベンツとしては「広告価値が高い」としてずっとその役割を買って出ていたのだそう。

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なぜアストンマーティンがF1のセーフティカーに?

じゃあなぜアストンマーティンがセーフティカーに採用されたのかということですが、これはメルセデス・ベンツの意向だと考えられます。

というのも、現在のアストンマーティンは経営体制が大きく変わり、メルセデスAMGの出資比率が高まっているため。

これに関連してアストンマーティンCEOはメルセデスAMGからやってきたトビアス・ムアース氏へと変更され、それまでアストンマーティンが開発していたV6ツインターボエンジンが「完全に凍結」されてメルセデスAMG製のV8ツインターボを使い続けることになったりといった変化も。

さらにメルセデス・ベンツは「アストンマーティンのプレゼンスを高めるために、F1のセーフティカーに」ヴァンテージを推すことにしたのだと思われ、メルセデスAMGと共同で(開催されるレースによって分担し)セーフティカーを務めることとなったわけですね。

しかしそのペースはあまりに遅すぎた

ただ、2022年シーズンから華々しく登場したものの、オーストラリアGPにてこのヴァンテージ”ペースカー”が入った際、そのスピードがあまりに遅く、マックス・フェルスタッペンはこれを「(文字通り)亀」と表現し、F1(オーガナイザー)はその速度を上げる必要がある、と主張。

そしてジョージ・ラッセルは(アストンマーティン・ヴァンテージと共同でセーフティカーを務める)メルセデスAMG GTブラックシリーズに比較すると1周あたり5秒は遅いと指摘しており、シャルル・ルクレールも「あまりの遅さに文句を言いたかったけれど、テールがスライドしているのを見ると、もうヴァンテージが限界だとわかったので何も言えなかった」とコメントしています。

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ちなみにこのセーフティカーのドライバーは元DTMレーサーのベルント・メイランダー氏ですが、同氏いわく「シャルル・ルクレールがヴァンテージの限界に気づいてくれたのはありがたい。あれ以上の速度で走ることは、どんな技術をもってしても不可能だった」と述べており、オーストラリアGPでの速度は文字通りの「限界ギリギリ」だったもよう。

ただ、このヴァンテージ「セーフティカー」はF1グランプリ用にチューニングされており、4リッターV8ツインターボエンジンは+25HPの528HPを発生するほか、エアロパッケージも専用となっていて、つまりアストンマーティンは万全の準備をもってこのヴァンテージをセーフティカーとして送り出したということになりますね。

セーフティカーが遅いと何が問題?

そこで「セーフティカーが遅いことがなぜ問題になるのか」ということですが、これは単に走行する速度が遅ければ、後続のF1マシンの速度も遅くなり、そうなればタイヤの温度が下がってしまいグリップを維持できなくなるから。

実際にシャルル・ルクレールも「ヴァンテージの後ろを走っていては、タイヤの温度を維持することは難しい」とコメントしており、タイヤの温度が上がらなければ、レース再開時には様々な問題を引き起こす可能性も出てきます。

参考までに、ちょっと前に、「F1用のタイヤを市販車に装着して走ったら、市販車の速度ではどうやっても温度を上げることができずにグリップを確保できず、速く走れるどころか、氷の上を滑っているようで怖かった」という動画も公開されており、それだけF1用のタイヤは特殊だと(そして速度域が全く異なると)考えて良さそうですね。

【動画】市販車にF1用のタイヤを装着してみた!グリップが向上し速く走れるはずが「氷の上を走っているみたいで、全然速くならない」
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FIAはアストンマーティン・ヴァンテージの「スピード」を擁護

そして今回、こういった批判が噴出したことを受け、FIAはこのアストンマーティン・ヴァンテージ「ペースカー」の速度について養護する姿勢を見せ、公式ツイッターには下記の通りコメント。

FIAは、FIAフォーミュラ1セーフティカーの第一の役割につき、明白なスピードのみではなく、ドライバー、マーシャル、オフィシャルの安全であることを改めて強調したいと思います 。セーフティカーのスピードは、一般的にレースコントロールによって決定され、セーフティカーの能力によって制限されることはありません。セーフティカーが理論上の最高速度より遅くなる可能性としては、事故復旧、コース上のデブリの回避などがあり、これらはすべて、セーフティカーの速度が後続車の性能に与える影響は二の次 ということを意味しています。

このコメント発表については、メルセデスAMGの力がある程度及んだのではないかと考えていますが、現在アストンマーティン(F1チームのほう)はランキング最下位そして0ポイントのままであり、かつペースカーまでもが「亀」と言われてしまうと、コース上で二重の恥をさらしているようなもので、なんらかの状況の改善が求められるところでもありますね。

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