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アストンマーティンがサウジ投資ファンドからの出資を得て一時的に生きながらえる!それでも負債の60%程度しか確保できず、まだまだ不安も

2022/07/16

アストンマーティン

| ここまで業績が急速に悪化したスポーツカーメーカーも珍しい |

ただしマクラーレンも同様の運命を辿りそう

さて、いったんはローレンス・ストロール氏の救済によってその命が永らえたかのように思えたアストンマーティン。

しかし実際には相当にその財政状況が逼迫しているといい、「いつ(また)倒産してもおかしくはない状況だと言われていたのですが、今回サウジアラビア政府系の投資ファンドとの契約締結が発表され、アストンマーティンの将来が保証されることに。

ちなみに財政状況が悪化した理由はいくつかあるものの、まずは売り先が決まっていないのに大量の車両を生産して在庫過多になったこと、そして折悪しくコロナウイルスのパンデミックに襲われ在庫が売れずに苦しんだこと、さらにはハイパーカー「ヴァルキリー」の開発遅延による資金回収遅れ等が主なところだと言われていますね。

そしてローレンス・ストロール氏の買収とともにCEOがアンディ・パーマー氏から(メルセデスAMGの)トビアス・ムアース氏へと交代し、さらにはそのトビアス・ムアース氏も業績を回復させることができずに更迭されるという事態となっています(トビアス・ムアース氏は貧乏くじを引いた形になった)。

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アストンマーティンは合計で1070億円を獲得

今回なされた報道によると、サウジアラビア公共投資基金(PIF)は、資金繰りに苦しむアストンマーティンに7800万ポンド(日本円で129億円)を出資し、その代わりにアストンマーティンの「大きな割合の」株式と取締役会の2席を獲得。

そしてアストンマーティンはPIFの資金注入と5億7500万ポンドの増資を合わせると、アストンマーティンは総額で6億5300万ポンド(1070億円)を調達する計算となっています。

なお、このPIFは、すでにマクラーレンと(アメリカのEVスタートアップである)ルシード(ルーシッド)に出資していますが、今回アストンマーティンに出資することで同社の16.7%の株式を所有し、第2位の株主へ。

1位は18.3%の株式を持つローレンス・ストロール会長であり、これまで第2位の株主であったメルセデス・ベンツは、新株予約権発行の結果、持ち株比率が11.7%から9.7%に減少することになりますが、メルセデス・ベンツはその発言力を維持するためにさらなる追加投資を行うとも報じられています。

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アストンマーティンが大きく業績を回復させることは難しい?

アストンマーティンは109年の歴史を誇る名門自動車メーカーではあるものの、その道のりにおいては幾度となく苦境に立たされ、実際に7回も倒産するという憂き目を見ています。

その株価は今年に入ってから約73%下落し、3月末には9億5700万ポンドの負債を抱えていたといい(つまり今回獲得する資金であってもこれを賄えない)アストンマーティンは、新たに得た資金をひとまず負債の返済と将来の製品への投資に充てるといい、その「新製品」にはメルセデス・ベンツのプラットフォームとランニングギアをベースにした同社初の(ラピードEは黒歴史として葬り去られたようだ)EVが含まれ、2025年の発売が予定されています。

現アストンマーティン会長のローレンス・ストロール氏は「本日の発表は、アストンマーティンの進化における最新の成功であり、我々が受け継いだビジネスとバランスシートの回復、そして長期的な成長力の加速を意味します。これは、当社のバランスシート、流動性、キャッシュフロープロファイルを変革し、持続的にフリーキャッシュフローをプラスにし、大きな株主価値を創出するための道筋をより明確にするものです」とコメント。

別の報道では、アストンマーティンが中国の吉利汽車(ロータスやボルボの親会社)とモルガンから成るインベスト・インダストリアルからなるアトラス・コンソーシアムからの13億ポンドの投資提案を拒否したされ、これはアストンマーティンにとって不利になるだろうという見方もあるようですね(おそらくは主導権を奪われるために拒否したのだと思われるが)。

なお、アストンマーティンは今後PHEVやEVを拡充し現行ラインナップを一新しつつ、ヴァルハラといったハイパーカー、ミドシップとしての新型ヴァンキッシュを発売することになりますが、いずれのプロジェクトも収益性が高いとはいえず、やはり定期的に、そして大量に売れるクルマ(今だとSUV)のラインアップを拡充する必要があるのかもしれません。

ただ、それでもアストンマーティンの行動が「後手」に回っていることは間違いなく、ほかメーカーに比較しても優位性が感じられないため、「V字回復」は望めないだろう、とも考えています。

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