| やはりどう考えても逃げ道はSUVしかない |
さて、マクラーレンCEO、マイク・フルーイット氏は自身のEメールアドレスを顧客に対して開放しているようで、そのために多くのメールが直接顧客から届くのだそう。
そしてその中でとくに注意を惹くのが「SUVを作らないで欲しい」「あまり多くの台数を生産しないでほしい」というものだと報じられています。
マクラーレンはSUVを作らない
まず「SUV」についてだと、マクラーレンは以前から再三主張しているように「SUVは絶対に作らない」。
これについては今回改めてマイク・フルーイットCEOが言及しており、当面はSUVへと進出することはなさそうです。
その理由としては「我々のブランドはモータースポーツ、ドライバーズカー、スーパーカーに根付いているため」だとしていますが、ここはまったくブレないところですね。
なお、こういったコメントは北米やアジア地域を管理する(マクラーレンの)マネージャーからも聞かれるため、マクラーレン全体としての揺るぎない信念だと考えて良さそう。
ただし他社の動向は異なる
しかしながら現在ではポルシェやランボルギーニがSUVを投入し、かつアストンマーティンもDBXを発売。
さらには「SUVは絶対にない」と公言していたフェラーリもついに”プロサングエ”を導入するに至っています。
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つまり、スポーツカーメーカー/スーパーカーメーカーでSUVを投入しないほうが少数派となってしまったわけですが、マクラーレンはそれでもSUVに対しては「NO」と言い続ける模様。
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しかし現実を見てみると、ランボルギーニはウルスの投入によって販売台数が「ほぼ倍」に成長しており、仮にアストンマーティン、フェラーリも同様の事態となったならば、現在経済的な苦境にあえぐマクラーレンはこれを無視できず、禁断の果実に手を伸ばすんじゃないかとも考えています。
マクラーレンは「希少性」を維持
そしてもうひとつの「生産台数」について。
マクラーレンは2018年に3,340台を販売し、2019年には4,662台を販売しています(ただし2020年はこの1/3くらいに着地すると言われている)。
そして今回、マイク・フルーイットCEOが述べたのは「マクラーレンは年産5,000台以内に抑える」。
なお、顧客が「台数を作らないで欲しい」、そしてマクラーレンが「生産台数を制限する」と言うのは希少性を保つためで、販売台数が多くなると希少性が下がり、価値も下がってしまうから。
一定のところまではランボルギーニやマクラーレンも「打倒フェラーリ」を掲げて販売台数の増加を狙うものの、一定ラインを超えると供給が需要を上回ってしまい、そうなると価値が暴落してしまうわけですね。
どうすれば少ない台数でも「稼げる」のか
そこで各社が考えるのが「台数を追求しなくても利益を稼げる方法」。
これにはいくつか手段があり、ひとつは「単価を上げる」。
ただし車両本体価格を上げてしまうと購入する人が減ってしまうので本末転倒となります。
よって、車両本体価格を値上げするのではなく「オプションを大量に用意し、オプション装着率・装着量を増やして客単価を上げる」。
ぼくはこれまでにランボルギーニを3台購入していますが、購入の都度オプションが充実していることに驚かされ、そして実際にオプションを大量に装着してしまうわけですね。
これによってランボルギーニは「一人あたりの利益」を増加させているということになりますが、これが”台数を増やさずとも”利益を増やす一つの方法。
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そしてもうひとつは「極端に単価の高い限定者やワンオフモデルを投入する」。
たとえば「1台数億円」のクルマを販売するということですが、3億円のクルマは3000万円のクルマの10倍の単価を持つものの、「利益は10倍以上」。
つまり手っ取り早く利益を得られるのが高単価の限定モデルということになり、実際にフェラーリもこれに助けられている、と報じられていますね。
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マクラーレンはかつて「先駆者」でもあった
マクラーレンはこういった手法にいちはやく取り組んだスーパーカーメーカーで、かなり早い段階からカスタマイゼーションプログラム「MSO」を立ち上げて広く周知させており、限定ハイパーカーに対しても積極的に取り組んでいます。
ただ、現在ではその手法に限界も見えてきており、次の一手が必要となっているのが現在のマクラーレンの状況。
ちなみにマクラーレンの工場の生産キャパシティは「1万台」、つまりマクラーレンが上限とする販売台数の倍の能力を持ちますが、これを遊ばせておくのはもったいなく、他社の生産を請け負う、というのもひとつの手段かもしれませんね。
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それでもやはりSUVしかないとボクは思う
マクラーレンのこだわりについては理解できるものの、SUV投入によってブランドイメージが下がったメーカーはないんじゃないかとも考えていて、むしろポルシェはSUV販売によって得た豊富な資金をもってスポーツカーラインアップを強化しており、SUVの「安定した販売台数があってこそ」スパルタンなスポーツカーを投入できるものと思われます。
ランボルギーニについてもウルスの投入によって(ブランドイメージ、効率性とも)状況が悪化したとは考えられず、いずれのブランドにおいてもスーパースポーツとSUVとはうまく棲み分けが出来ているようにも感じられ、マクラーレンの「SUVを作らない」というのはある意味では株主に対する背任行為のように思えないでもありません。
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参照: Wheels