| 根本的にマクラーレンは他のスポーツカーメーカーとは異なる |
マクラーレンは「SUVを作らない」とかねてより明言していますが、今回もまた、マクラーレンのスポーツシリーズのプロダクトラインアップを管理するダレン・ゴッダール氏が「SUVは全くもってクールではない」と断言。
なお、マクラーレンは一本筋の通った会社で、CEOだろうがプロダクトマネージャーだろうが、各地の現地法人の管理者だろうが、揃って同じことを言うことが特徴。
それだけ意思が徹底されているということにもなり、しかしこれは自動車業界においてはけっこう稀有な例だとも思います。
たとえばマツダは公的には「ロータリーエンジン搭載のスポーツはない」とコメントしているものの、開発担当は「(スポーツカー用の)ロータリエーンジン研究中」、北米のマネージャーは「ロータリースポーツは販売面を考えると必要」など、本社と現場とで異なる意見が聞かれます。
これはBMWも同じで、公的には「スーパースポーツはない」としながらも、役員やM部門は「スーパースポーツを作りたい」と発言したり。
ただしマクラーレンの場合はこういった「トップと現場との相違がない」とぼくは認識していて、本来はこれが会社の正しい姿ではあるものの現実はそうもゆかず、その意味でも「マクラーレンはすごい会社だな」と考えています。
そして上述のダレン・ゴッダールによると「SUVはクールじゃない。SUVは販売台数を増加させるためだけの存在で、ピュアではない。(SUVのような)大量生産と、(スーパースポーツのような)少量生産とは全く違うんだ」。
そして同氏は2018年にマクラーレンが4,806台を販売し、これは前年比43.9%増であったこと、そしてロールスロイスの販売台数を超えたこと、ランボルギーニの5,750台に迫っていることにも言及。
つまり、マクラーレンの成長は「ピュアさ」を追求したからこそもたらされたのだということを言いたいのだと思いますが、「カーボンバスタブシャシーにV8ツインターボエンジンをミッドマウントする」クルマだけを作っているのにこの数字、というのは正直スゴイな、とも思います。
かつ、マクラーレンが市販車ビジネスを開始してから10年にも満たず、その状況での成功は「神話」と言ってもいいんじゃないか、というくらい。
なお、ランボルギーニがご存知の通るウルスを発売してその販売台数を倍に延ばす可能性が高く、アストンマーティンも「DBX」、フェラーリもまたSUVを発売予定。
その前にはベントレーが「ベンテイガ」、ロールスロイスが「カリナン」を発売して台数を伸ばしていますね。
ただ、マクラーレンの言うことに一理はあるものの、そこにはマクラーレンならではの特殊事情も。
マクラーレンは上述の通り「カーボンモノセルとV8ツインターボをミッドマウント」というパッケージングのクルマだけを作っていますが、つまりは共通性が高いために開発コストや製造コストが低い、ということを意味します。
ランボルギーニだとウルスを除くと「V10ミドシップ+4WD」「V12ミドシップ+4WD」という構成ではありますが、両者はエンジンはもちろん、車体構造、トランスミッション、4WDシステムなど「ほぼ全て」が異なります。
フェラーリも「V8ミドシップ」「V8フロントエンジン」「V12フロントエンジン」といういくつかのパッケージングを持ち、これからは「V8ミドシップ+ハイブリッド」も登場予定。
アストンマーイティンも「V8」「V12」フロントエンジン、しかし2ドアと4ドアを持ち、今後はヴァルキリー始めミドシップスポーツも展開することになります。
つまり、「同じコンポーネントとパッケージしか持たない」マクラーレンと他のスーパースポーツカーメーカーとでは全く事情が違うワケで(他の会社の方が、新型車の開発費用がマクラーレンに比べ何倍もかかる)、他の会社がSUVを作るということは「台数の追求」以外に「利益の獲得」つまり開発のための費用を得る、という目的もある、と考えています。
これはポルシェが実証しており、カイエンを投入することで大きく販売台数が伸び、それによって巨額の利益=開発資金を得ることができ、さらにその資金でより優れたスポーツカー(911やケイマン、ボクスター)を作ることができるように。
これはマクラーレンが良い悪い、他の会社が良い悪いではなく、マクラーレンは「ピュア」を追求し、他の会社は「より多くの消費者にアピール」、もしくは「何かが売れなくなっても他のモデルで販売をカバーできるように」という安定化を考えたというだけの差だと考えています。
VIA: CarSales