
| 新型SLの登場が300SLの価値をさらに上げるかもしれない |
メルセデス・ベンツ300SLの中古物件がオークションに登場。
この個体は1957年に2月22日に工場をラインオフしたものだとされ、その後はベルギーのオーナーへと納車されることになりますが、同オーナーは1981年までこの車両を保有しのちイギリスのオーナーに売却。
そのイギリスのオーナーは22年間この300SLを保有したものの、2003年に現在のオーナーへと手渡すことになったと紹介されています。
メルセデス・ベンツ300SLはこんなクルマ
メルセデス・ベンツ300SLは1954−1963年の間に製造され(ガルウイングは1957年まで)、「世界初のスーパーカー」、そして世界ではじめてガルウィングと直噴エンジンを採用したことでも知られます。
もともとはレーシングカーとして企画されていますが、北米のメルセデス・ベンツディーラーが「これは売れる」と踏んでメルセデス・ベンツ本社とかけあい、ロードカーとして市販されたという珍しい経緯を持っています。

メルセデス・ベンツ300SLはもともとがレーシングカーであっただけに非常に性能が高く、3リッター直6エンジンからは215馬力を発生。
なお最高速度は260km/hだという記録が残り、1950−1960年代のクルマとしては規格外であったと思われます。
そのために当時、この車を運転中に事故を起こして死亡するケースが相次ぎ、「ウィドウメーカー(未亡人製造機)と呼ばれることになりますが、この不名誉極まりないニックネームを頂戴するのはこの300SLが初めてかもしれません(のちにポルシェ911GT2が襲名)。
300SLクーペが1,400台、300SLロードスターが1,858台という非常に少ない生産台数であり、「もっともコレクターの欲するメルセデス・ベンツ」としても有名ですね。

現在、メルセデス・ベンツ300SLの相場は急上昇中
今回販売されているメルセデス・ベンツ300SLは2014年〜2016年にかけてレストアを受けており、その際に内外装が一新。
ボディカラーは新車製造時と同じライトブルーにペイントされ、内装もブルーとホワイト、そしてグレーへと改められています。

なお、「ガルウイング」を採用した理由ですが、これはカッコいいからではなく「その必要があったから」。
上述の通り300SLはレーシングカーとして考案されたもので、レーシングカーであるゆえに高いボディ剛性を追求しており、そのためサイドにもぶっといパイプが通るという構造を持っています。
その状態で普通のドアを採用すると、開口部の天地(上下)が非常に狭くなり、ドライバーが乗り降りできなくなってしまうめ、ガルウイングドア採用にてルーフを開放し、ドライバーが容易に乗り降りできるようにしたのだと言われます(フォードGT40のドアが”屋根ごと”開くのも同じ理由だと思われる)。

そしてガルウイング構造を持つ車両にてレースに参戦するにあたっては一悶着あったようですが、「規定には”ガルウイングが禁止だとは書かれていない”」ということで認められた、という話も聞いた記憶が。

なお、メルセデス・ベンツ300SLの落札相場は2018年あたりまでは1億5000万円くらい。
ただし2019年〜2020年あたりに高額落札が相次ぎ、現在のところ相場は一貫して高騰中。
この個体についても現在1億2000万円くらいの値を指しているものの、オークション終了までにはまだ時間があり、ここからさらに値を上げてゆくのは間違いなさそうです。

なお、メルセデス・ベンツは現在AMGと共同にて新型SLを開発中ですが、次期SLとAMG GTは車体を共有すると言われており、ブランディング上の理由そして(AMG GTとの)差別化を考慮してか、新型SLは「300SLを意識した」クラシカルなクルマになる、とも言われていますね。
ぼくが思うのは、こういった「過去モデルのオマージュ」としてニューモデルを展開するのは”歴史ある”メーカーにしかできず、そもそもオマージュ元となる名車を持っていないと不可能な話だということ。
よって、これができる自動車メーカーは競争の厳しい現代において「幸運」であり、できるのであれば「どんどんやったほうが」いいのかもしれません。
そして「過去モデルをフィーチャーした」新型車が登場することで過去の名車にもスポットライトが当たることになり、その名車の価値が高騰することで、ブランド価値も同時に上がってゆくことになりそうですね。