奇抜に見えるけどそうじゃない。その理由を説明しよう
以前にもチラリと紹介した、オークグリーンメタリックのボディカラーを持つポルシェ・カレラGT。
これはポルシェ自身がレストアを行った車両で、アメリカ在住のコレクターである依頼主の好みを存分に反映させた仕様となっていますが、ポルシェはこのオーナーの要求を拒否せず、本来カレラGTに用意されていない内外装へとレストア(レストモッドというべきか)したということになりますね。
この仕様はポルシェを知り尽くした人でないとオーダーできない
なお、ボディカラーのオークグリーンメタリックは「ポルシェにとってゆかりのある」ボディカラーで、というのも 930、964、993世代のポルシェ911 に用意されていたため。
そして、ポルシェ愛の強いオーナーさんがマクラーレン・セナのボディカラーにこのオークグリーンメタリックを選んだ例もありますね。
そしてポルシェ911の設計を行った、フェリー・ポルシェの愛車も(おそらく)オークグリーンメタリック。
こんな感じで「一見奇抜に見える」このグリーンも、ポルシェにとっては由緒正しいボディカラーということになり、よってポルシェはこのカスタムを断らなかったのでしょうね。
なお、かなり多くのカラーを使用していることになりますが、逆にブレーキキャリパーは「ブラック」採用とシンプルに抑えており、かなり細部まで考え抜いた仕様であることもわかります。※標準だとブレーキキャリパーはイエロー
そして「Carrera GT」エンブレムやホイールのディスク部分などは「ゴールド」。
このゴールドも突飛に見えるものの、ポルシェ911「100万台記念車」も”グリーンにゴールドのエンブレム(ただしこのグリーンはアイリッシュグリーン)”。
ホイールはディスク部分がゴールド、リム外周はポリッシュ。
なお、カレラGTのホイールは「マグネシウム製」ですが、マグネシウムはポリッシュをかけると著しく素材にダメージを与えてしまうため、ポルシェは様々な方法をテストし、解決方法として編み出したのが「(貴金属の)シルバーをコートして磨く」。
これによってアルミをポリッシュ加工したような光沢を出していますが、酸化を防ぐためにクリアコートを行うというこだわりよう。
つまり、オーダーした顧客はどうしてもこの光沢を実現したかったのだということになり、しかしそれにポルシェもきっちり応えており、ということは「この顧客は超VIP」。
そしてテールパイプやディフューザー周りのカーボンパーツもすっかりきれいになっていて、テールパイプの内側は「ブロンズ」っぽくも見えますね。
さすがにこれは「ステンレスの焼けた色」だと思われ、ここまでこだわって着色したわけではないと思いますが、もしオーナーさんの指示でブロンズにペイントしていたとしたら”まさに脱帽”であります。
カスタムカレラGTのインテリアはこうなっている
そして外装以上に驚愕なのがこのカレラGTのインテリア。
シートのフレーム(カバー)はボディカラー同様のオークグリーンメタリック。
そしてシートのメイン部分はパープルのようなレザーですが、これも「え?」という印象を受けるものの、実はこれも「ポルシェのヘリテージ」。
ちょうど90年代あたり、911が「964」世代だった頃にこういったカラーの内装をポルシェが採用していたことがあり、これについても「オーナーさんがポルシェを知り尽くしているがゆえ」。※下の画像は「クレイジーカラー」仕様ですが、このパープルのようなレッド(ルビーストン?)をシート全面に採用したインテリアもあった
そしてシート中央のチェック「ペピータ」も当然ポルシェのヘリテージ。
つまり内外装は「ポルシェのヘリテージがぎっしり詰まった」ポルシェ愛のかたまりのようなクルマがこのカレラGTということですが、さすがにこの内容をオーダーされるとポルシェとしても「ノーとは言えない」ということがわかりますね。
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ステアリングホイールのセンターにはグリーン、そしてゴールド。
スムースレザー(ツルンとしたヤツ)ではなくこの”シボ”があるレザーを選択したというのも当然オーナーさんのこだわりなのだと思います(このシボレザーを選んだ理由はわからない)。
そしてエアコン吹出口のルーバーにもレザー張り。
これはポルシェを新車オーダーする際に特別オプション「ポルシェ・エクスクルーシブ・マヌファクトゥア」で選択できますが、さすがにこのパープルのようなレッドを選ぶのは無理。
以上、奇抜なように見えて実は「ポルシェの歴史そのもの」が詰まったカレラGTでした。