まさに珍品。ポルシェ356のドライブトレーンを使用した「キットカー全盛時代の」ラダウリC3が競売に。なおシャシーはVWビートルからの流用

｜　まだまだ世の中には「知られざるクルマ」が多数埋もれているのかもしれない　｜

このクルマを見てポルシェとの関連性を感じ取れる人はまずいないだろう

さて、その存在が全くと言っていいほど知られていなかったポルシェ356-VWラダウリ・スペシャルが競売に登場。

このポルシェ356-VWラダウリ・スペシャルはアメリカにてキットカーが全盛だった時代（1950-1970年代）に製造されたうちの一つだそうですが、このキットカーというのは「組み立てられていない状態のクルマをバラで購入して自分で組み立てる」というもので、シャシーやエンジン/トランスミッション、ボディなどすべてが揃う場合や、ドナーカー（ベース車）への架装を前提にしてボディパネルだけをセット販売する場合など「様々なケース」が存在します。

通常、キットカーというと「レプリカ」が多いものだが

そしてキットカーの多くは「手に入れることが非常に難しいクラシックカー」を安価で再現することを目的としている場合が多く、ポルシェ550スパイダー、シェルビー・コブラ、フェラーリ250GTOなどがその代表例。

ただし今回オークションに出品されているのは「レプリカ」ではなくオリジナルデザインを持つキットカーであり、フォルクスワーゲン・ビートルの車体にポルシェ356のランニングギアを組み合わせ、さらに新しいデザインのボディを架装した一台です。

そしてこのポルシェ356-VWラダウリ・スペシャルは、ずっと行方がわからなくなったと思われていたものの、どういった経緯なのかひょっこり見つかり（そのあたりについては触れられていない）現在何故か英国で販売中。

上述の通り、車体はフォルクスワーゲン・ビートルを使用しているそうですが、見ての通り大きく構造が変更されており、そして搭載されるエンジンはポルシェ356 1600 Sから（フラット4）、トランスミッションはフォルクスワーゲンから、ブレーキ、サスペンション、15インチのホイールはポルシェから移植されたものだと紹介されています。

そしてプロポーション的にはどう見ても「フロントエンジン」なのですが、もちろんビートルがベースなので「リアエンジン」。※高名なクラシックポルシェのスペシャリスト、ロジャー・ブレイ氏によってポルシェのパーツであることが検証されている

このキットを作ったのは「カナダで最初にグラスファイバー製ボディを作った」ラダウリ車

なお、このキットを製造したラダウリ社は「カナダで最初にガラス繊維（グラスファイバー）製のボディを製造したことで知られ、同社の名称は、創業者のレスリー・アルバート・ドーウェス（LADAの由来）とその同僚であるダノン・ライト（Wriの由来）の名前から取られています。

創業されたのは1956年（カナダのブリティッシュコロンビア州）で、1957年にはカリフォルニアに移転したとされ、当時、同州はグラスファイバー製キットカーの中心地であったといい、ラダウリ社もこのブームに乗って「業界で最も多様なボディを提供する会社と」となったのだそう。

1961年になると、ラダウリ社はビクトレス社の金型と権利を買い取ることになりるのですが、このビクトレス社もやはりキットカーを製造しており、しかし1960年のオリンピックに関わる備品の製造などで忙しくなってキットカービジネスから手を引いたために権利を売却したと紹介されています。

今回販売されている個体の走行距離はわずか469マイル（755 km）で、見る限り内外装の状態は悪くなく、しかし現在は「不動」となっており、再び走行させるには専門家の手による整備が必要だとも。

ちなみに現在の価格は終了まで1日ちょっと残して6,000ポンドを少し超えたくらい（日本円にして110万円くらい）にまで上がっており、意外と「探していた人」が多かったのかも。

参考までに、過去にはラダウリシチリアと呼ばれていたこともあるそうですが、このボディはラダウリC3と呼ばれるもので、インテリアもまたラダウリC3専用のオリジナル品（ただ、”スペシャル”というからには、あちこちに手が加えられているものと思われる）。

なかなかに面白いクルマであり、「キットカー」というひとつのブームの生き証人だと言える一台かもしれませんね。

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参照：Collecting Cars