| ただし今からフェラーリを目指すのは難しいだろう |
一時は「消滅」の危機すら囁かれたアルピーヌですが、ルノーの新CEOであるルカ・デメオ氏はその存続を決め、さらには「ルノーF1チーム」を2021年から「アルピーヌF1チーム」へと名称変更すると発表済み。
さらに今回、同氏は「アルピーヌは、今後ミニフェラーリを目指す」ともコメント。
これはいささか急な展開ではありますが、ルカ・デメオCEOは「まずはF1での勝利によってブランド価値を高め、その高い価値をもって市販車(とレーシングカー)の販売を有利に進め、そこで得た利益をF1に投資する」というフェラーリ型のサイクル構築を目指すということを意味しているようですね。
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アルピーヌはミニ・フェラーリたり得るか
なお、F1チームを「ルノー」から「アルピーヌ」へと変更したことについて、フェラーリ型ビジネスモデルのメリットを教授することを考えた場合、ルノーはブランドとして大きすぎるというのがその理由。
つまりルノーはコンパクトカーやミニバン、SUVなど「フルラインアップ」メーカーであり、モータースポーツと結びつけるにはあまりにイメージが多様化してしまっていて、しかしアルピーヌであれば過去のヘリテージ、現行車種ともにブランドイメージを(モータースポーツ方向へと)先鋭化できると考えたようですね。
たしかにこれは納得の戦略ではありますが、フェラーリの場合は「F1と市販車」とが互いに作用しあうほか、フェラーリストアやフェラーリワールドのような「ライセンスビジネス」も存在し、正確に言えば「F1と市販車とライセンスビジネス」の三つが密接に結びついたトライアングルを形成していると言えます。
ちなみにフェラーリのライセンスビジネスによる売り上げは全体の15%を占めるといいますが、「利益率」で見ると(ライセンスビジネスは投資とコストが非常に低いので)割合としてかなり高いと考えて良さそう。
ただ、アルピーヌの場合はライセンス収入がゼロに等しいはずであり、しかしそれが短期〜中期的に増加するとも考えられず、よってフェラーリよりは「厳しい状況」にあるのは間違いなく、さらに「F1で勝ち続けなければ成り立たない」ビジネスモデルでもあるため、正直言うとアルピーヌがミニ・フェラーリとなるのはちょっと難しいだろう、と考えています。
ただしアルピーヌA110の評価は非常に高い
しかしながら市販車であるアルピーヌA110については「非常に評価が高く」、たとえばマクラーレンF1の設計者であるゴードン・マレーも「アルピーヌA110はベンチマークたりうる」と語ったことも。
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そのほかジェームズ・メイほか多くのジャーナリストがアルピーヌA110を支持しており、しかし今のところセールスはあまり芳しくなく、2019年にはわずか(世界中で)4835台にとどまっています。
その理由の大半は「知名度不足」だと考えていますが、もしF1にて知名度を向上させることができれば、この低調なセールスも好転する可能性があるかもしれませんね。
アルピーヌはこんなブランド
アルピーヌは1956年にレーシングドライバーであったジャン・レデレが設立したブランドで、ジャン・レデレがルノーディーラーを経営していたという関係上、当初はルノーのチューンナップ車、ルノーをベースにしたコンプリートカーを販売することからスタートしています(つまり当初から自動車メーカーであったわけではない)。
その後1973年にルノーへ株式を譲渡して「ソシエテ・デ・オートモビル・アルピーヌ・ルノー」へと組織を変更し1995年まで存続。
ただしその後もルノーの特殊車両(スポールスピダーやメガーヌRSなど)を生産するなどして製造拠点としての活動を続け、2012年にはついに独自ブランドとしての復活がアナウンスされることになり、2017年には待望の市販車「A110」の発表に至っています。
もちろん日本でも展開がなされているものの、販売拠点が少ないことから知名度と販売が伸びず、(クルマがいいだけに)ちょっともったいないブランドでもありますね。
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参照:Autonews Europe