| 多くのスポーツカーメーカーはSUV発売によって生産台数が「倍」になっているが |
合わせてフェラーリは電動化に対して「実は慎重」に進めているもよう
さて、フェラーリは先月に新しい中期計画を公表していますが、一般向けに公開されていなかった情報のひとつが「生産台数」。
フェラーリは2021年に1万1155台(1日あたり46台)を生産しており、これがどれくらいのペースで増加するのか明かされていなかった、ということですね。
ただし今回AutoNewsが報じた内容によると、フェラーリは2025年までに1万5000台(1日あたり65台)の生産を行う計画を持っているとされ、つまり毎年「1000台ちょっと」づつ生産が増えてゆくことを意味します。
さらに注目すべきは、この数字を見る限り「プロサングエを発売したとしても、総販売台数が大きく増えない」ことで、ここはSUVの発売によって販売台数が倍になったポルシェ、ランボルギーニ、アストンマーティンとは全く異なるということですね。※ランボルギーニの場合、ウルスの販売台数を最大化することでスーパースポーツ(V12モデルやV10モデル)の販売を絞り、そこで希少感を演出する計画だと言われている
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台数が増えると希少性が下がる?
なお、そのブランド全体の販売台数が増加すると「希少性やブランド価値が下がる」のは間違いなく、しかしフェラーリ自身が一番よくこの問題を理解しており、その対策として「モデルラインアップを増やし、1モデルあたりの販売台数を減らす」こと。
フェラーリはもう一つ前の中期計画にて「15車種」を追加すると発表しており、実際に15車種(SF90ストラダーレ、SF90スパイダー、ローマ、ポルトフィーノM、F8トリブート、F8スパイダー、296GTB、モンツァSP/SP2、デイトナSP3、812GTB、812コンペティツォーネ、812コンペティツォーネM、296GTS、まだ未発表ですがプロサングエ)を発表しています。
そして今回の新しい中期計画においても15車種を発表するとコメントしていますが、これだけ車種が増えたとしても年間の販売台数は10%以下の増加に抑えられ、つまり1台あたりの販売台数も抑えられている、ということになりますね。
実際のところ、F8トリブートはもちろんF8スパイダーの受注も終わり、2019年末に発表されたローマの受注はすでに終了していて(日本では2020年4月に受注が開始されているので約2年の受注期間だった)、2020年11月に発表されたSF90ストラダーレの受注も同じく終了、そして2021年6月に発表された296GTBの受注は年内にも終了するという話もあり、最近のフェラーリ現行モデルについては「2年くらいしか受注期間が設けられていない」ということに。
正確に言うならば、「期間」ではなくモデルごとに定められた「台数」の上限に達した後にオーダーブックを閉じているということになりそうですが、296GTBの受注が比較的速く終了するのは「予定生産台数が少なかった」もしくは「予定生産台数が他モデルと同じであっても、受注のペースが速かった」からなのかもしれません。
そしてプロサングエについては、「大量に売る」予定はなく、他モデルと同じくらいの生産台数に限定され、もしかすると早々にオーダーが終了してしまう可能性もありそうです。
フェラーリは電動化に対して慎重なアプローチを取る
そしてもう一つ報じられたのがフェラーリの電動化に対する姿勢。
現在フェラーリは「SF90ストラダーレ」「SF90スパイダー」「296GTS」「296GTB」というラインアップを持ちますが、非電動化車両はローマ、812GTS、ポルトフィーノM、F8トリブート、F8スパイダーの5モデル。
つまり電動化比率は44%にも達しており、「受注可能な」モデルにのみに絞った場合、この数字はもっと高くなります。
これはもちろんマクラーレンやランボルギーニ、ポルシェ(のスポーツモデル)に比較しても圧倒的に高く、フェラーリは「かなり熱心に電動化を行うスーパーカーメーカー」だと捉えることも可能。
ただ、フェラーリからすると「スポーツカーの電動化には大きな欠点がある」といい、それはバッテリーに起因する「重量増」。
よってフェラーリはこの問題を解決すべく個体電池や水素燃料電池の開発も行っているとされ、それと同時に(現行モデルの)車両に積むバッテリーを最小限にとどめています(よって296GTBでは、ピュアエレクトリックモードでは25kmしか走行できない)。
こういった事情もあり、フェラーリは現段階において、プラグインハイブリッドといえども「バッテリーに依存する」比率を高くしたがっていないとも報じられ(重くなるので)、スポーツ性能を損なわずに済むレベルで電動化を進めることになると考えてよく、このあたりは「一見すると電動化に積極的に見えつつも、実際には慎重派」だと捉えることもできそうですね。
加えてですが、電動化に際してはもちろん開発パートナーを持つものの、今やフェラーリは独立した自動車メーカーなので、ランボルギーニやポルシェのように、フォルクスワーゲングループの持つリソースを活用したりといった「シナジー効果」を期待できるわけではなく、開発費が重くのしかかってくるのもまた事実。
これもまた「電動化を慎重に」進める理由のひとつなのかもしれません。
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参照:AutoNews