| 今後もフェラーリの中心的価値は「ドライビングプレジャー」、そして希少化戦略は揺るがない |
ガソリン車の販売比率が縮小するも、ガソリンエンジンの開発は継続
さて、フェラーリが投資家向けに「キャピタル・マーケット・デイ」を開催し、その中期計画を公表することに。
なお、これより前の中期計画は2018年から2022年にかけてのものであり、そこで示されたニューモデルの投入数は「15」となっていますが、この15車種とは「SF90ストラダーレ、SF90スパイダー、ローマ、ポルトフィーノM、F8トリブート、F8スパイダー、296GTB、モンツァSP/SP2、デイトナSP3、812GTB、812コンペティツォーネ、812コンペティツォーネM、296GTS、そしてプロサングエ」。
そして今回も驚くべきことに、2023年から2026年にかけ、またしても15車種を発売するとコメントしており、この中には2025年の「フェラーリ初のピュアエレクトリックスポーツ」、そしてハイパーカーも含まれています。
フェラーリはガソリンエンジンのラインナップを縮小
フェラーリは2026年までの期間において、「ガソリンオンリー」モデルの販売比率を40%、ハイブリッドを55%、5%をEVにする計画を公表していますが、その先の2030年になるとガソリンエンジン車はわずか20%、40%がハイブリッド、そして40%がピュアエレクトリックカーという予測を立てています。
ただし重要なのは、フェラーリにとって「核」となるガソリンエンジンにつき、今後も進化すると明言していること(プラグインハイブリッドにもガソリンエンジンが積まれるからだと思う)、そしてハイブリッド・パワートレインはレースからの技術移転を受けたものになること。
ちなみにハイブリッドパワートレイン(エレクトリック部分)はマラネロ(フェラーリの本社)によって設計され、手作業で組み立てられることについても言及しています。
モデル別ラインナップだと、SUV含む「コアモデル」が85%、「スペシャルシリーズ(これまでだと488ピスタや812コンペティツォーネのような)」が10%、残り5%はSP3デイトナのような超限定イコーナシリーズとラフェラーリ後継のハイパーカー。
そしてここで重要なのはプロサングエが9月に発表されると明言されたこと、そして年平均の出荷台数は全体の販売台数の20%に制限されること(初年度は生産期間が短いためにかなり台数が少ないものと思われる)。
そして2025年に発売されるというフェラーリ初のピュアエレクトリックカーについては「跳ね馬の伝統に根ざし、幅広い技術的専門知識を駆使して、ドライビングのスリルをさらに高めた」クルマになると述べており、「出力密度、重量、サウンド、ドライビング・エモーションなど、あらゆる次元で際立った存在となる」、そしてなにより真のフェラーリになる、とも。
具体的な数値は示されていないものの、その重要な差別化要素としては「バッテリーセルが、マラネロで組み立てられ」車両の軽量化、性能の向上、そしてフェラーリならではのドライビング・エクスペリエンスを実現するためにシャシーに直接組み込まれることだといい、フェラーリ創業者であるエンツォ・フェラーリの信念のひとつでもあった「フェラーリ史上最高の車は、まだ作られていない車である」を実現すべく、顧客の期待を超えることを目標に開発がなされる、と自信を見せています。
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今後のフェラーリの戦略は?
そして今後のフェラーリの戦略についてですが、ざっとまとめると下記の通りで、簡単に言うと、フェラーリの伝統を重視し、ドライビングプレジャーに特化し、顧客に対し、よりラグジュアリーな体験を提供するということになりそうです。
- 創業以来一貫して行ってきたように、コア・コンポーネントの開発と自社生産を続ける一方、厳選されたパートナーとの共同開発により、クラス最高の既存ソリューションをカスタマイズしてゆく
- 非中核となるハードウェアやソフトウェアの分野では戦略的なパートナーシップを結ぶことで、最先端の技術にアクセスする
- マラネロの工場をさらに拡大し、特に、電気エンジン、インバーター、バッテリーを設計し手作業で組み立て、さらに新しいペイントショップを設立することで、ラグジュアリー分野での重要なトレンドである、より高度なパーソナライズを実現する新しいE棟を充実させる予定
- 共有化、自律化、コネクテッド化、電動化が進む自動車の世界において、フェラーリはデザイン、パフォーマンス、ドライビング・スリルを常に運転中の体験の中心に据え、独自の方法を追求する
- ドライバーのために用意された特別な感情を維持するために、車の自律性をL2/L2+に制限する一方、所有体験と顧客との関係を強化するために、何よりもまずコネクティビティを提供する
- コミュニティを継続的に育成するために、オムニタッチポイント戦略を構築し、カヴァルケードやファイナリ・モンディアーリなどのイベントを含む、独占的で特注の体験を通じ顧客との関係性を強化する
今後のフェラーリの収益性は?
そして次はフェラーリの収益性。
ぼくはフェラーリの株式をけっこう持っているので気になる部分ではありますが、ちゃんと株主のことを考えてくれているようですね。
なお、フェラーリによれば、2018年以降、フェラーリに対して忠誠心の高い顧客(ロイヤルカスタマー)の拡大と若返りを狙った計画を実行し、全世界のHNWI(100万ドル以上の資産を持つ富裕層)約2600万人に対する「希少性の原則」を常に尊重しながらこれを達成したといい、結果として顧客基盤は25%増加し、従来の顧客よりも平均8歳若い新規顧客を獲得した、とのこと。
また、この計画期間中、フェラーリはトップコレクターを育成することができ、その60%が新規顧客となり、コレクターのガレージにあるフェラーリの台数を平均25%拡大させたという数値が出ているようですね。
- 2026年には純収益を67億ユーロに拡大することを目標とし、複合年間成長率は9%
- レース事業およびライフスタイル事業が業績に貢献すると見込み、ライフスタイル事業の売上高を2026年までにパンデミック前の水準から倍増させる
- 金利税引前利益は2026年までに18~20 億ユーロに達し、27%~30%の利益率を目指す
- 研究開発費(75%は製品、25%はインフラ)、販売管理費(主にコミュニケーションとマーケティング活動)は若干の増加
- 次年度以降の配当金を調整後当期純利益の 35%に安定的に増配
- 今後、計画期間終了までに 20億ユーロの自社株買いを開始
フェラーリ「キャピタル・マーケット・デイ」開催の様子を記録した動画はこちら
参照:Ferrari