![フェラーリ250LMが55億円にて落札され一気に「フェラーリの高額落札」上位へと踊りでる。このクルマの何がそんなに特別なのか](https://intensive911.com/wp-content/uploads/2025/02/Ferrari-250LM.png)
Image:Ferrari
| 499Pが登場するまでは「最後のフェラーリのル・マン優勝車」そして今でも「プライベーターによって総合優勝がもたらされた唯一のフェラーリ」である
さらには申し分のない経験、履歴、コンディションを誇る
さて、2024年の自動車オークションは「記録ずくめ」となっていますが、2025年にもさっそくいくつかの記録が誕生しており、そして最新の記録が「フェラーリ250LM(3620万ドル=約55億円)」。
これはRMサザビーズがパリにて開催した競売において、”目玉”として登場したクルマであり、「フェラーリのクラシックカー市場でもトップクラス」で落札されるにふさわしい歴史的背景を持っています。
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このフェラーリ250LMが市場に出るのは「54年ぶり」
今回出品されたフェラーリ250LMは1965年に開催されたル・マン24時間レースの総合優勝車であり、その時のドライバーはマステン・グレゴリーとヨッヘン・リント。
ちなみにこの250LMはプライベーター(私設チーム)として参戦したフェラーリ車で唯一ル・マンを制したモデルで、生産台数はわずか32台、この個体はその中の「6番目(シャシーナンバー05893)」。
シャシーナンバー05893は1964年末に完成し、6台目の250 LMとしてアメリカ・コネチカット州のルイジ・キネッティ・モータースへと納車され、最初は公道仕様として個人オーナーに販売されるも、すぐにキネッティの元へ戻り、フェラーリ支援のもとNART(ノースアメリカンレーシングチーム)にてレース用に改造されています。
Image:Ferrari
この際の主な変更点としては、コーチビルダーのピエロ・ドロゴによる空力的に優れたロングノーズなどがあげられていますが、その後この250LMはル・マンを2回、デイトナ24時間レースを3回走っており、そのうち1965年にはル・マンでの総合優勝を飾っているわけですね。
このフェラーリ250LMを(1970年以来)今まで保管していたのはインディアナポリス・モータースピードウェイ博物館で、博物館はこの250 LMを半世紀以上にわたって丁寧に維持し、オリジナルの3.3リッターV12エンジン(ティーポ211)とギアボックス(タイプ564-940、もちろんエンジンともどもマッチングナンバー)を保持した状態で「はじめて」オークションへと出品されることに。
さらには購入当初からの詳細な記録がすべて揃っていて、整備履歴や交換部品の履歴までが文書で明確に残されているという「これ以上望みようがないほど」のバックボーン、そしてコンディションを持つクルマです。
フェラーリ250LMはこんなクルマ
そこでこのフェラーリ250LMについてもう少し紹介してみると、デビューは1963年のパリ・モーターショー。
搭載されるV12エンジンはプロトタイプレーシングカーの250Pと基本構造を共有し、車体構造はチューブラーフレーム。
しかしながらボディはカロッツェリア・スカリエッティにって新設計され、風洞実験によって空力上の改良が加えられていますが、後のスポーツプロトタイプ「330 P」にも受け継がれるフライング・バットレス構造が採用されていることも視覚的な特徴です。
もともとフェラーリは市販車ベースとなるGTカテゴリーでの(ル・マン24時間レースへの)参戦を想定していたものの、FIAは250 LMをプロトタイプクラスに分類してしまい、これによって250LMは専用設計のレーシングカーと競争しなければならず、総合優勝は難しいと考えられていたわけですね。
ただ、実際に1965年のル・マン24時間レースが開幕してみると、フォードや(ファクトリーチームの)フェラーリが走らせる強力なプロトタイプ勢を相手にしながらも予想外の活躍を見せ、レース21時間目からは独走状態となり、そのまま優勝をさらっています。
そしてこの勝利は近年になってフェラーリが499Pで勝利を飾るまでは「フェラーリにとって最後の」ル・マン24時間レースにおける総合優勝でもあり、この意味でも「いかに250LMが特別であるか」がわかるかもしれません。※1966年から数年間はフォードが圧倒的な支配力を発揮し、フェラーリは撤退を決めている
フェラーリ250LMは「現在のル・マン覇者」499Pとも対面
そして時が流れて2023年、フェラーリは499Pを投入することで50年ぶりにル・マン24時間レースへと復帰し、みごと58年ぶりの総合優勝を果たしたわけですが、今回のオークション出品前、この250LMはフェラーリ本社にも立ち寄ることとなり、そこでは2023年と2024年のル・マン覇者である499Pの2台と対面することに。
かくして「新旧」ル・マン24時間レースの覇者が一緒にフィオラノ・サーキットを走るという後継が実現したわけですが、この250LMは「公道走行も可能(のちにレーシングカーにコンバートされたといえど、もとはロードカーである)」でもあり、今回のフィオラノ訪問ではエミリア・ロマーニャ地方の風光明媚な田園地帯を走る姿も披露されています。
Image:Ferrari
そしてフィオラノ・サーキットにおいては、499Pを駆りル・マン24時間レースでの優勝を果たしたドライバーたちも250LMのステアリングホイールを握ったそうですが、アレッサンドロ・ピエール・グイディは「当時のドライバーがこんなクルマでル・マンを走ったなんて、信じられない。相当な勇気が必要だったはずだ。こんなモンスターを操り、偉業を成し遂げた彼らこそ、本物の英雄だ」とも語っており、これは「死をも恐れぬ勇気」を持つものこそがモータースポーツにおいて輝くことができるという当時の状況をよく表しているようにも思えますね。
なお、このフェラーリ250LM”シャシーナンバー05893”の落札によって得られた収益金の一部はフェラーリが指定する国際的な教育支援団体に寄付される予定であるとされ、これは60年前のル・マン優勝という歴史的快挙を記念するにふさわしい形にて、250 LMの伝説が未来へと受け継がれていくことを意味しています。
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参照:Ferrari