
| しかも空気抵抗を発生させて重量を増加させたため、このリアウイングを装着することで「むしろ遅くなった」とも |
まさかこのウイングが「無意味であった」とは驚きである
ランボルギーニ・カウンタックは、「ファイティングブル・エンブレム」を背負うスーパーカーの中でも”最も記憶に残る1台”として語り継がれており、その鋭く、ウェッジシェイプ形状を持つボディとシャープなラインは1980年代のスーパーカーの象徴そのものだと言っていいかもしれません。
そしてこのカウンタックの象徴ともいえるのが「巨大なリアウイング」。
このウイングは「見た目のインパクトは抜群」ではあるものの、実はまったく空力効果が得られないシロモノであったという事実が存在します。
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あの“リアウイング”は、ランボルギーニの駐車場にて、「その場しのぎ」で取り付けられた
このカウンタックのリアウイングは「カナダ人実業家ウォルター・ウルフの存在がきっかけ」だとされ、彼はF1チーム「ウルフ・レーシング」の出資者であり、熱狂的なランボルギーニ愛好家であったことも知られています。
そしてウォルター・ウルフは標準仕様のカウンタックでは満足できず、よりパワフルでハンドリングに優れたモデルを特注することになりますが、この「ウォルター・ウルフ・スペシャル」は3台が製作され、これに取り付けられていたのが「あのリアウイング」。
驚くことに、リアウイングの取り付けはランボルギーニ工場の駐車場で行われていたという逸話があり、工場のラインから出てきた完成車に対し、エンジニアが電動ドリル片手に10分ほどで(即席にて)装着したというのが通説です。
そのウイングは“かっこいいだけ”だった
そしてこのリアウイングは「デザイン的には」カウンタックのイメージを決定づける重要なパーツであったものの、「性能的には」完全に無意味であったといい、その理由は単純で、ウイングの角度がルーフラインと平行に設置されていたから。
ウイングは本来、「角度がつけられる」ことで走行風を利用しダウンフォースを発生させ、車体を路面に押し付けてグリップを高めるものですが、しかしながらカウンタックのものはただの“飾り”。
よってこのウイングは空気抵抗を増すだけで、ダウンフォースをまったく生まなかっただけではなく、ウイングを付けるとむしろスピードが落ちると言われたほどの存在です(仮にダウンフォースを生んだとしても、車体バランス的にはハンドリングを悪化させた可能性も。ランボルギーニが最近出願した特許のように”ルーフ”にてダウンフォースを発生させるのであれば話は別であるが)。
ランボルギーニはカウンタックの開発に際し風洞実験を行っていない
「なぜこんなことになったのか」を掘り下げてみると、そもそもカウンタックの開発では予算が限られていたため、風洞実験すら行われていなかったという事実に端を発します。
そしてランボルギーニは風洞実験を行う代わり、ボディに短く切った「ひも」を貼り付けて走行し、そのひもの動きを見てボディ表面を流れる風の動きを目視で確認するという原始的な方法を採用していたわけですね。
そのため、空力性能はお世辞にも良いとは言えず、そのCd値(空気抵抗係数)はウェッジシェイプからは想像もできない0.42にとどまり、これは1980年代のフォルクスワーゲン・ビートルとほぼ同じ数値でもあります。
現代版カウンタックにはウイングが存在しない
2021年に発表された現代版ランボルギーニ・カウンタック LPI 800-4では、過去のデザインへのオマージュが多く取り入れられたものの、あの巨大なリアウイングが姿を消したのは特筆すべき点(これは当時でも多くの指摘がなされ、あのウイングを背負ったレンダリングも多数制作された)。
その代わり、このカウンタックLPI800-4には現代的なアクティブエアロシステムが採用されており、機能面でも格段の進化を遂げていて、空力性能数値(Cd値)は公表されていないものの、元祖カウンタックを超えているのは間違いなさそうですね。
スーパーカーは「性能だけ」では語れない
ランボルギーニ・カウンタック(初代)は、性能よりも「夢」や「憧れ」といった感情を呼び起こすクルマであり、機能的ではないリアウイングさえも、今ではこのスーパーカーの伝説の一部となっています。
そしてカウンタックが教えてくれるのは、「クルマの魅力はスペックだけじゃない」ということで、美しさ、個性、そして大胆さ――それらすべてが合わさってこそ、真の“スーパーカー”と呼べるのかもしれません。
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参照:CARBUZZ