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ポルシェはこういったところを論じる車ではないけれど。ボクが考える「ポルシェにもうちょっと頑張って欲しい」ところ

2018/12/01

| ポルシェはまだまだデザイン面において進化の余地を残している |

さて、今日はぼくがポルシェに「もうちょっと頑張って欲しい」と思うところを挙げてみたいと思います。
ポルシェはご存知の通り第1級の動力性能を持つ車ですが、一方で装備やパーツのデザイン性などについては「あまりに質素」なことで知られるクルマ。
現行車種ではずいぶん改善したものの、911だと997世代までは(冗談抜きで)内装の装備は軽自動車の方がずいぶんマシ、という状況です。

そして現行世代の718ケイマンでも「ドアミラーを電動可倒式にするのに」6万円くらいのオプション価格を支払わねばならないのがポルシェですが、これは「車体の外側に、折り畳み機構(モーター)を取り付けるのは運動性能をスポイルする」という考え方から。

そのためぼくはポルシェの装備のプアさ、質素さも「ポルシェの個性」だと考えていて、ポルシェの考え方を支持してはいるものの、しかしはじめてポルシェを購入する人からすると「えっ」と感じる部分が多いのも事実(よく相談を受ける)。
つまり「ポルシェ」という高いブランドイメージと、実際のクルマとのギャップに驚く人も多いようで、ここではそういった可能性のある部分を紹介してみたいと思います。

ポルシェはモールの品質があまり良くない

まずはモールの品質。
こちらは運転席側のドアモールディング(ドアパネルとウインドウとの境界にあるヤツ)ですが、ドア側とリアクォーターウインドウ側でラインが合っていないことがわかりますね。※ちなみにドアはちゃんと閉まっている。半ドアではない

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そして助手席側はこう。
運転席側よりは「合っている」のがわかります。

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逆にこの樹種席側モールのフロント側、つまりドアミラー付近は「浮いた」状態。
つまり、このモールは上から見たときに「弧を描いてないと」ならないのですが、実際は「まっすぐに近い」ので、前か後ろか「どちらか」をドアパネルに合わすともう片側が「浮いてしまう」ということになり、つまりはパーツ自体の形状、もしくは素材(硬い)、さらには取り付け(製造)の問題、ということに。

ぼくは特に気にしているわけではありませんが、今後この「浮き」が大きくなるようであれば一度交換なり対応を考えてみたいと思います。

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ちなみに経験上、モールの品質が高いのはメルセデス・ベンツ、そしてアウディ。
国産だとトヨタがずば抜けていますね(日産はあまり良くない)。

欧州車でここがイマイチなのはポルシェのほかBMWで、しかしポルシェが今後コモディティ化し、より多くの人に訴求するブランドへと変わってゆくのであれば、ポルシェは「走り」以外の品質も高めてゆかねばならないだろう、と感じさせる代表例でもあります。

ポルシェはボディパネル間のギャップが大きい

そして次はボディパネルのチリ。
主にはフロントフェンダーとドア、フロントフェンダーとボンネット、リアフードとリアフェンダーといった部分ですが、つまりはここのギャップが大きく、つまり「隙間が目立つ」ということ。

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ただしこれらの部分は「可動する」部分でもあって、隙間をあまり小さくできないのも実情です。
それでもいくつかのメーカーは「対策」を行なっており、たとえばアウディの例を見てみましょう。

これは以前にも紹介したものですが、アウディTTやA5に採用されるクラムシエルボンネットが端的な例だと考えています。
そしてクラムシェルボンネットのデザイン面における利点は、前や上から見たときにフェンダーとボンネットとの「あるべき」境界線が見えないこと。

たとえば旧型A5だとフェンダーとボンネットとの境界はこんな感じ(赤い矢印のところ)。
これだと(いかにチリを狭くしても)必ず隙間が目に入ることになりますね。

こちらは新型A5ですが、フェンダーとボンネットとの境界がうまくデザインとして処理され見えなくなり、サイドのキャラクターラインの一部として表現されることに。
これだと「隙間」が目に見えないことになり、いっそうの「塊感」が強調されることもなるわけですね。

なお、この構造を簡略化して示すとこんな感じ(バーチャル断面図)。
ボンネットとフェンダーとの「段差」が重要で、この段差と同じ角度を持ったプレスラインがドアからリアフェンダーへと続くことで全体の整合性を取ることに成功しています。
これは「外板を鋭角にプレスする」という高いアウディの技術あってこそで、他のメーカーでは再現できないデザインだとも言えるのかもしれません。

実際にはボンネットとフェンダーとの間には「隙間」があるものの、人が立った状態で上からクルマを見下ろした状態では「ボンネットがフェンダーにかぶった状態になるので」隙間を目視することは不可能。
これによってアウディはボンネットとのフェンダーとの「隙間」を撲滅した、と考えられます。

↓しゃがんだ状態でフェンダーとボンネットとの隙間がやっと見える



ポルシェはテールランプなど「別パーツ」とボディとの隙間が大きい

そしてこちらもやはりポルシェでは「隙間が大きい」ということですが、テールランプそのものは樹脂製で、上半分が接するボディは金属、そしてやはり下半分が接することになるバンパーはウレタン製ということもあって、異なる素材同士において「隙間なく」接合するのは非常に困難(そう考えるとレンジローバー・ヴェラールの設計や製造に関わる精度は驚くべき高さにある)。

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これは素材ごとの(気温による)収縮率が異なったり、たわみが異なるために「ぴったり」くっつけてしまうと互いが干渉するためで、しかしこれについてもアウディはなかなかに優れた解決策を見出しています。

やはり以前に紹介した内容ではありますが、通常の自動車(ここだとポルシェ718ケイマンだと置き換えてもいい)とアウディTTとの比較はこんな感じ(横からの断面図だと思ってもらえれば)で、両者ともボディの凹んだ部分にランプユニットが収まるのは同じ。
ただそうなると当然、ボディとランプユニットとの間には「隙間」ができますね。

ですがアウディの場合はこんな感じで、ランプユニットの縁(この場合は下を「斜め」に成形することで隙間をほぼゼロに。
さらに言えばこれも「人の視線にて、上から見たときに隙間が見えない」ように計算されているのだと考えています。
なお、TTの場合はテールランプの上ラインがボディの継ぎ目部分と一体化しており、これまた「継ぎ目」「隙間」がわかりにくい設計ですね。

プレスラインやクルマの構造を利用して「継ぎ目」「段差」を少なくしているのがアウディですが、BMWはあまりそこは気にしていないようで、たとえばBMW X5だとこういった感じ。
継ぎ目や段差は仕方がないと考え、あえて立体的に見せているのかもしれませんが、こういったところを見てもポルシェとBMWは似ていて、ともに「隙間やラインを気にしない」傾向にあるようです。

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自動車が性能で選ばれる時代はもう終わった

外装についてぼくがポルシェに感じるのはざっとこんなところ(他にもいろいろありますが、また改めて)。
冒頭で述べたようにポルシェはこういったところを論じる車ではないことは理解しているものの、今やほとんどのユーザーがポルシェを走行性能ではなく「ブランド」で選んでいて、かつ販売が最も多い中国では「運転経験が少ない人々」がメインユーザー。
そうなるとポルシェはその考え方についてもシフトせざるを得ず、今後はいろいろと変わってくるのだろう、と考えています。

なお、現在ポルシェはアウディと同じくフォルクスワーゲングループ傘下にありますが、現行モデルでアウディの影響を受けていない(以前の体制で基本が設計された)のは718ケイマン、マカンの二車種。

911も最新の「992世代」へと進化しましたが、おそらくこれはアウディの影響を(いい意味で)色濃く受けていると想像しており、画像を見る限りはこれまで上に挙げてきたようなポルシェの「弱点」をきっちり潰しているように見え、かなり表面が「平坦」に感じられるデザインです。

つまりはポルシェ自身もぼくが感じたような問題を「他の人も感じている」と認識していて、アウディの技術をもってそれらの対策を行なってきた、と考えて良さそうですね。

なお、アウディ自身はこういった「目に見える部分の」品質を改善することで成長してきたメーカーですが、たしかにアウディとBMWとを並べて見るとその「見た目品質の差」は一目瞭然で、それは「ポルシェとアウディ」でも同様。
現代において自動車が選ばれる大きな決定要因は「デザイン」ということになりそうですが、この傾向が今後いっそう強くなるのは間違いないだろう、と考えています。

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