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ポルシェはなぜ最初のEVに「セダン」を選んだのか?スターターボタンの位置、2速ミッションはPDK、EVなのに回生によるワンペダル走行ではないなど「タイカンの秘密」が一挙公開

2019/10/17

| しかもエアコンの吹出口にはルーバーがない |

ポルシェのオーナー向け機関誌、「クリストフォーラス」にて、タイカンの特集記事が掲載。
ポルシェ初となるピュアエレクトリックカー、タイカンは今後のポルシェを占う上でも非常に重要なクルマでもありますが、ポルシェとしては全力でこれをプロモートしてゆきたい、という意図も読み取れます。

まずはポルシェCEO、オリバー・ブルーメ氏へのインタビューから始まっていますが、同氏のコメントとしては「間違いなく真のポルシェ」。
加えて「911と比較しても遜色なく、加速、ドライビングダイナミクスともに最高水準を達成し、情熱と魅力が詰まった最高の一台」であり、「スポーツEVセグメントにはまだ競合といえるモデルが存在しない」とも。

ポルシェが「サルーン」形状を選んだのには意味がある

加えてオリバー・ブルーメCEOは、1800年代ですでに(ポルシェ設立者の)フェルディナンド・ポルシェがインホイール式モーターを持つEVを開発していたこと、ポルシェ919ハイブリッドがル・マンにおいて3連覇を成し遂げたこと、ニュルブルクリンクにおいても919ハイブリッドEVOが”最速”記録を樹立したことをあげ、ポルシェのエレクトリック技術は長年の伝統と経験に下支えされたものであることを述べ、「ポルシェとエレクトリック」とは密接な関係にあることも強調しています。

そして面白いのは「なぜ、エレクトリックモデル第一弾として、4ドアサルーン形状を選んだのか」という質問に対する答えですが、これについてはまずタイカンはスポーツリムジンであり、そしてスポーツカーメーカーであるポルシェとして、”他社との違い”をアピールするための手段としてのボディ形状がリムジン(サルーン)あったということについて言及。
さらにリムジン(のボディ形状)はエアロダイナミクスが優れており、実際にタイカンの空気抵抗係数はポルシェのラインアップ中でもっとも低いこと、バッテリーセルを「中央に」敷き詰めて重量配分を最適化するにあたっては最適な形状であったことにも触れています。

実際のところは「セールス上、もっともマーケットが大きく採算性が高い」のがサルーンだったのだろうとは考えていますが、ポルシェがエレクトリックカーを発売するにあたり、「もっとも競争が厳しいボディ形状」を選んできたのは、他社製エレクトリックサルーンを圧倒でき、それによって新たな地位を獲得できるという自信があったのだとも思われます(スポーツカーにおいては「911はメートル原器である」とも例えられ、そこで911をエレクトリック化してもインパクトは薄く、不得意分野を制覇するほうがチャレンジの価値が高い)。

タイカンにはこんな技術が採用されている

そしてポルシェは、タイカンに採用される技術や仕様についていくつか紹介。
ここで代表的なものを見てみましょう。

スターターボタン

ポルシェは最新の911(992)においても、エンジンスタートさせるにはボタンではなく「キー状のデコイをひねる」ことで行うというシステムを採用しています。
これは昔ながらの「キーをひねる」という伝統的な儀式を重視しているということ、そしてル・マンにて最も多くの勝利を獲得したメーカーでもあるポルシェだけに「ル・マン式スタート」へのリスペクトがあると思われます。
このルマン式スタートとは、ドライバーがコース反対側へと「一列に並んだ」マシンに、スタートの合図とともに走り寄ってから乗り込み、それぞれのマシンをスタートさせるもの(今はもう採用されていない)。

そしてポルシェの場合は「キーシリンダーの位置」にちょっとしたこだわりがあり、それは通常のクルマに多い「右」ではなく「左」にあること(左ハンドルを基準とした場合)。
右側にキーシリンダーがあるのは、多くの人の利き手でもある右手でキーを回したほうが「確実」であるためだと考えられますが、ポルシェの場合は「右手でキーシリンダーを回した後、同じ右手でギアを1速に入れてスタートすると、コンマ数秒のタイムロスが出る」と考え、左手でキーを回してエンジンをスタートさせると同時にシフトチェンジできるよう、左側にキーシリンダーを設置した、と言われます。

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なお、右ハンドルの場合は同様の理論にて「シフトレバーとは逆の手でエンジンスタートできるよう」右側にキーシリンダーが移設されています。

そしてタイカンの場合はついに「キー」もしくは「キーの代わり」もなくなってしまい、ついに「ボタンによる始動」となってしまいましたが、それでも「シフト操作と逆」の手でスタートできるよう、本国仕様の左ハンドルだと「左側」にスターターボタンが設置されている、とのこと。

アドバンスド・クライメイトコントロール

タイカンのエアコン吹出口には「ルーバー」がないそうですが、それでも適切なところへと風を送ることができるアドバンスド・クライメイトコントロールを装備。
加えて風をダイレクトに当てる「フォーカス」モード、直接風を当てずに風を拡散する「ディフューズ」モードを持つようですね。
なお、ポルシェはパナメーラにもスイングルーバーを持つエアコン吹出口を採用しており、同グループのアウディもまた「デラックスエアコンディショナー」にて風を拡散させるという手法を用いていて、エアコン(というか送風)にこだわる傾向がいくつかのメーカーで見られます。

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フットガレージ

EVというと「フロアにバッテリーを敷き詰める」ことになり、そのぶんフロアが高くなるものの、タイカンでは後部座席の足元を「凹ませて」居住性を改善しており、これによって低いルーフを実現できたのだと思われます。

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チャージブースター

タイカンは発表前から「急速充電」について強くアピールしていて、これは「22分30秒で」バッテリー容量の80%までチャージできるもの。
800V仕様のバッテリーを使用することで可能になった技術ではありますが、400V用DC充電器でも安定した充電が可能、とのこと。

なお、EV先進国のノルウェーでは「Rekkeviddeangst」なる言葉があり、これは「航続距離に対する不安」という意味だそう。
800V仕様バッテリー、急速充電は、ポルシェのこれに対する回答と言えそうで、加えてポルシェは、現在BMW、メルセデス・ベンツ、フォード、アウディ、フォルクスワーゲンとともに、欧州の主要道路に400を超える少高速充電設備網を設置するとも述べています。

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電気ブレーキブースター

EVというと、「アクセルペダルを離すと同時に回生ブレーキが作動して減速を行う」ワンペダル操作が主流。
BMW i3や日産リーフ、ジャガーI-PACEもその例に漏れませんが、ポルシェの場合はそれを採用せず、アクセルペダルを緩めると「コースティング」に入り(つまり回生ブレーキは作動しない)、ブレーキペダルを踏んではじめて減速を開始する、とのこと。※この場合は摩擦によるブレーキに加え、回生ブレーキも作動する
これはサーキット走行を考えると重要なポイントでもあり(ワンペダルでは姿勢の制御が難しい)、やはりタイカンは”EVといえど”まぎれもないポルシェである、ということですね。

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2速トランスミッション

タイカンには「EVには非常にめずらしい」2速トランスミッションが搭載されますが、1速は加速専用、2速は高速専用。
1速だとタイヤが1回転するのにモーターが15回転し、2速ではそれが8回転と約半分に。
これによって、(トランスミッションを装備しない通常のEVに比べ)より鋭い加速を得られるのはもちろん、巡航時にはより低い「電費」となることで航続距離を伸ばせることになりそう。
ちなみにこの2速トランスミッションは出力軸が二本あり、つまりは「PDKと同じ構造」を持っている、と紹介されています。

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そのほか、クリストフォーラスでは断熱・遮音性に優れるサーモガラスルーフ(オプション)、強固なサイドシル、一体式の(溶接面のない)強固なフロントクロスメンバー、モーター製造等たくさんの技術が紹介されています。

VIA:PORSCHE

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