| まさに運命の出会いはどこで起きるかはわからない |
ワルター・ロール氏(ポルシェ・ジャパンでは”ヴァルター・レアル”と表記)はラリーにおける生ける伝説とも言える人物で、ポルシェにとっても「最も需要な」人物の一人。
同氏が最初に購入したクルマは中古のポルシェ356Bクーペだったそうですが、「できるだけ安い個体を探した」ためにエンジンが載っていなかったといいます。
その後ワルター・ロール氏はフォードやオペル、ランチア等のワークスドライバーとして活躍し、一方では「プライベーターとして」ポルシェ911にてラリーへ参戦し続け、1981年にはついにポルシェ契約ドライバーの座を獲得。
ラリーのみならずIMSAやパイクスピークでの優勝経験があるほか、ドライビングを「わかりやすく説明」する能力にも長けていて、それがポルシェにとってはこの上なくありがたく、実際に959、カレラGT、918スパイダーの開発にも参加することに。
なお、現在同氏はポルシェのブランドアンバサダーとして活動しており、2017年に70歳を迎えた際にはポルシェミュージアムにおいて、“Genius on wheels”(運転の天才)と題された記念展示もなされています。
その衝撃はまさに天啓のようだった
そんなワルター・ロール氏が乗る「最新」の愛車が、最初に購入したクルマと同じ「ポルシェ356」。
ただしこちらはオープンモデルで、さらにオリジナルの4気筒ではなくフラットシックス、しかも911ターボから移植したターボエンジン(260馬力)を搭載しています。
なお、このポルシェ356は「ポルシェ356 3000 RR」と命名されており、もともとはヴィクター・グレイザー氏なる人物が作成したもの。
ただ、残念なことに同氏が急逝してしまい、この356 3000 RR、そして一緒に保管されていた2台の356とともにクラシックカーディーラー、ディエス・クラシックへと引き取られることになり、そこでレストアが施されることになったようですね。
この356はもともと1959年に「356Bロードスター」として誕生した個体で、その後ヴィクター・グレイザー氏によって1977年モデルの930ターボからのエンジン移植手術を受けることに。
その段階においてワイドフェンダーやオリジナルエンジンフード、911風のフロントバンパーが装着されていた、と紹介されています。
もちろんそれらの作業は容易ではなかったと見え、 ディエス・クラシックへとこのクルマが入庫したときは「未完成」。
その後ディエス・クラシックはレストアを行うとともに内外装を仕上げ、ヴィクター・グレイザー氏が手を付けていた「右ハンドルから左ハンドルへのコンバート」を完了させています。
レストアが完成した後にディエス・クラシックはワルター・ロール氏をテストドライブに誘い、そこでワルター・ロール氏は「オリジナルの356からあまりに改造されているので」用心してこのポルシェ356 3000 RRの試乗に望んだそうですが、走り始めてすぐにその完璧さに魅了されることに。
そしてついにこのポルシェ356 3000 RRはワルター・ロール氏の愛車となったわけですが、リアのエンジンフード上には同氏がモンテカルロ・ラリーにて4度の優勝を成し遂げた際に獲得したバッジが誇らしげに輝きます。
残念ながら急死してしまったヴィクター・グレイザー氏ですが、ワルター・ロール氏がその志を引き継いだことで、このクルマとともに永遠に語り継がれることになりそうですね。
VIA:CARSCOOPS, Porsche 356 Club Deutschland Stammtisch Südbayern, PORSCHE