| もはや「自動車」という概念で製品を作ってはいない |
さて、ブガッティのデザイナー、アキーム・アンシャイト氏(1993年にポルシェでキャリアを積み、1996年にVWグループ、2004年にブガッティへ)が「自分の好きな、6台のブガッティ・ヴェイロン」をコメント付きで公開。
なお、ヴェイロンは2002年にはじめて「量産車ではじめて1000馬力/最高速400km/hを突破」したクルマとして鳴り物入りでデビューしています。
このプロジェクトを牽引したのはポルシェ一族の故フェルディナント・ピエヒ氏で、日本を訪れた際に新幹線の中でヴェイロンのパッケージングを思いつき、手元にあった封筒にメモを記した、と言われていますね。
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ブガッティ・ヴェイロンの計画は、VW会長が来日して列車で移動中に書いたメモから始まっていた!そのメモが公開に
| 往々にして天才は「思いつき」を実現する | https://www.flickr.com/photos/110074903@N02/49778791641/in/album-72157713879 ...
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もちろん「前人未到の」偉業を達成するのに払った代償は小さくなく、1億7000万円という車両価格にもかかわらず、実際には1台売るごとに7億円近い赤字を出していた、とも言われています。
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ブガッティ・ヴェイロンは1台売るごとに6.24億の赤字だった!そのためブガッティのニューモデル投入につき親会社のVWは開発資金提供を渋っている模様
| ただし承認を得ることができたらば、それは4シーターGTもしくはSUVになる | ここ最近、様々な報道がなされるブガッティ。今回、ステファン・ヴィンケルマンCEOがブルームバーグに語ったところによる ...
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ブガッティ・ヴェイロンには様々なバリエーションが存在する
ヴェイロンは10年かけて予定生産台数の400台(正確には407台)を消化していますが、そのモデルライフ中には様々なバリエーションが存在。
機能面でいえば16.4グランスポーツ(タルガトップ)や16.4スーパースポーツ(運動性能強化版)、グランスポーツ・ヴィテッセ(タルガトップの高性能版)があり、さらにカラーや仕様においても「ワンオフ」から「数台」レベルの特別仕様車が存在します。
なお、こういった「多品種少量生産」については、「一人のオーナーに複数台を購入して(コレクションして)もらう」ためだと考えられ、というのもブガッティの購入には社会的地位や職業などの厳しい審査があり、そもそも購入できる人自体が非常に少ないから(お金がいくらあっても、ブガッティが”ふさわしい”と認めなければ購入はできない)。
ブガッティのデザイナーお気に入りの6台はこのヴェイロン
そんなブガッティですが、ここでデザイナーの挙げる「お気に入り」を見てみましょう。
ヴェイロン16.4 ピュール・サン(Veyron 16.4 Pur Sang / 2007)
ヴェイロンにとってはじめての特別仕様車で、5台のみが限定発売されたピュール・サン。
アキーム・アンシャイト氏によれば「まるではじめての息子が誕生したときのようだった。そのときのことはずっと忘れない」とのことで、ここからブガッティのカスタム路線がスタートしたものと思われます。
ボディはアルミニウムのポリッシュ(クリア塗装)とカーボンファイバーとのコンビネーションを採用し、ピュール・サンとは「純血」という意味。
発表はフランクフルト・モーターショーにおいてなされており、45分で5台が完売した、という記録が残ります。
ヴェイロン 16.4スーパースポーツ(Veyron 16.4 Super Sport / 2010)
2010年には出力を1200馬力に向上させ、時速427.988kmという世界最速ギネス記録を樹立したクルマとしても知られ、30台のみの限定発売。
外観は通常のヴェイロンに比較して小変更があり、アキーム・アンシャイト氏によると、そのルーフ(ダクト?)は「ブガッティEB110SSをイメージした」「ブガッティにとって、”形態は機能に従う”という考え方を導入した最初のクルマだった」。
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【競売】1991年ですでに「クワッドターボ、4WD、611馬力」を実現していたブガッティEB110SS。生産わずか30台の超レアカーを見てみよう
現代のランボルギーニ・ウラカンと同じスペック 1990年代の超レアなスーパーカー、ブガッティEB110”スーパースポーツ”がオークションに登場。「ブガッティ」と名はつけども現代のブガッティとは別の経営 ...
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ブガッティはシロンベースにて、EB110をモチーフとした限定車「チェントディエチ」を発表していますが、けっこう前からEB110を意識していたということになり、これは意外な事実だと言えそう(そもそも、ミドシップ+クワッドターボ+4WDという構成そのものがEB110からの引き継ぎではある)。
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ブガッティ設立110周年記念にしてEB110へのオマージュ”チェントディエチ(Centodieci)”正式発表!「次の100年に向け、過去とテクノロジーとを融合させた」
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ヴェイロン16.4グランスポーツ・ロル・ブラン(Veyron 16.4 Grand Sport L’Or Blanc / 2011)
この「ロル・ブラン」はベルリン王立磁器製陶所(KPF)とのコラボレーションによって特別にデザインされたもので、陶磁器とそこへ映る光をイメージしたグラフィックを持っています。
よくこんなデザインを考えたなというカラーリングですが、これはブガッティだけに職人によって塗り分けられていると思われ、ヴェイロンの中では「もっとも手間がかかっている」塗装なのかもしれませんね。
なお、このロル・ブランには「レッド」バージョンの”ロル・ルージュ”(L'Or Louge)、”ル・サフィール・ブル”(Le Saphir Bleu)も存在。
アキーム・アンシャイト氏によると、「最初にこのアイデアを思いついたときは懐疑的だった」とのことですが、見事に自動車がアートに昇華した一例だと思います。
ヴェイロン16.4グランスポーツ・ヴィテッセ(Veyron 16.4 Grand Sport Vitesse / 2012)
ヴェイロン16.4グランスポーツ・ヴィテッセはオープントップのグランスポーツに、世界最速記録を打ち立てたスーパースポーツのドライブトレーンを移植したクルマですが、アキーム・アンシャイト氏によると「最初にこのクルマを発表した時、そんなにパワフルには見えず特別感がないという批判を受けた。しかし我々の顧客は、ルーフを閉じるとクーペ同様に見える、シンプルなスタイルを評価してくれたんだ」。
顧客が自分の意図を汲んでくれたということになりそうですが、そこが印象に残ったのだと考えられます。
ヴェイロン・グランスポーツ・ヴェネ(Veyron Grand Sport Venet / 2012)
こちらもロル・ブラン同様の「アートカー」ですが、フランス人の彫刻家、ベルナール・ヴェネ氏とのコラボレーションによって誕生しています。
同氏は自動車業界とそれまでまったく繋がりがなく、しかしそういったアーティストと「ともに何かを作り上げてゆく作業は非常に興味をそそられ、かつ印象的であり、結果として何ものにも比較できない作品を作り上げることができた」とアキーム・アンシャイト氏。
ヴェイロン・レ・レジェンデ・ドゥ・ブガッティ エットーレ・ブガッティ(es Légendes de Bugatti Ettore Bugatti / 2014)
ヴェイロンのファイナルモデルとしての位置づけが「エットーレ・ブガッティ」、つまりブガッティ創業者の名を持つスペシャルエディションであり、ベースは16.4グランスポーツ・ヴィテッセ。
このモデルの最大の特徴は「最高級のコードバン(馬のお尻の部分の革)」で作られた内装の一部。
コードバンは取れる面積が狭いためにこういった広い部分に使用されることは稀で(そのため一般的に靴や財布等に使用されるのみ)、そもそも馬革の内装を持つ自動車というのが非常に珍しいと思います。
ブガッティのフロントグリルは「ホースシュー(馬の蹄鉄)」がモチーフですが、そのルーツに立ち返ったということなのでしょうね。※もともとブガッティは馬具や馬とは関係はないが、エットーレ・ブガッティは乗馬愛好家であった。GENROQにグリルの由来についての考察が記載されている
アキーム・アンシャイト氏によると、「過去にこれほどの品質と耐久性を持つコードバンの靴が作られたことすらないだろう」とも語っており、ブガッティらしい、最上級をも通り越した素材を使用しているということになりそうです。