| ここまで豪快にパクられると「正規ライセンス品なのか」と一瞬思ってしまう |
さて、北京モーターショーにて、中国の自動車メーカー「SongSan Motors(松散机車)」がC1世代のシボレー・コルベットにそっくりなクルマを発表。
あまりにそっくりなので「ライセンスを取得した、ちゃんとしたクルマ」なのかと思いきや、実は無許可のコピーとのこと。
ぼくは何年か前に北京モーターショーを訪問したことがありますが、そこはまさに「コピー天国」。
「なにかに似ている」という次元を通り越し、「完璧に同じ」コピーも多数展示されていて、そのため最初にそれらを見た時、ぼくはてっきり「ライセンス生産品(もしくはノックダウン生産)だと思ったほどです。※ダイハツ・シャレードを天津一汽夏利汽車が、正式な契約に基づいてノックダウン生産したという例が存在する
おそらくは小規模自動車メーカー
そしてこのSongSan Motorsですが、展示場所が室内ではなく「屋外」であるところを見るに、「室内での展示場所を確保できなかった」もしくは「そのぶんのお金を払えなかった」小規模メーカー。
北京/上海モーターショーにおいては、継続出展を行うことを条件に「いい展示場所」を割り当てていると聞いており、よってこういった屋外展示場にしか車両を並べることができないメーカーは「新興」もしくは「弱小」ということがが中国メディアによっても報道されています。
ただ、このSongSan Motorsのブースについては、1950-1960年代風のダイナーを再現するなどけっこう手が込んでいて、それなりにコストを投じているということもわかります。
ちなみに空の色が黄色っぽく見えますが、これはおそらく「黄砂」。
実際に北京を訪れた際に驚いたのがこの黄砂で、これによって空が黄色かったり、遠くが見えなかったり、クルマに砂が積もっていたり、そういった環境で雨が降ると「クルマがひどく汚れたり」といった状況が発生するわけですね。
SongSan Motors SSドルフィンはこんなクルマ
話をこのクルマに戻すと、その名をSSドルフィンといい、その姿はC1世代のコルベットを模しているものの、ヘッドライトにはLEDを採用するなど現代的な部分も。
サイドそしてリアもC1コルベットそっくりですが、エンブレムはコルベットではなく「SS(SongSanの略)」へと置き換えられています。
ボディサイズは全長4,800ミリ、全幅1,850ミリ、全高1,390ミリとけっこう大きく、オリジナルのC1コルベットに比較すると一回り大きい、といった印象です。
インテリアもまた「近代的」で、レトロなアナログメーターのかわりにデジタル式メーター、そしておそらくはデジタル式のインフォテイメントシステムも。
「許可なしのコピー」というのは許されることではありませんが、なかなかに雰囲気が出ているクルマではありますね。
中国はまさに無法地帯
そしてさらに驚くのが、このSongSan Motorsの公式サイトでは実際のC1コルベットに加え、マリリン・モンロー、トム・クルーズ、ジョニー・デップ、ブラッド・ピット、ジョージ・クルーニーといったハリウッドセレブの画像が使用されていること。
当然これらも無許可と思われますが(もし許可を取ろうと思うと相当な額になる)、こういったことを(報道ではなく商用利用を)平気でやるのはまさに驚愕。
そしてこの行動の背景には「やったもん勝ち」という心理があるのだと思われ、もしなんらかの訴訟が起こされたとしても、こういった会社は最初からそれを想定して「トカゲの尻尾」として設立されている可能性が高く、じつは裏で糸を引いていたのは大手自動車メーカーという現実があるのかもしれません。
参考までに、このSSドルフィンのエンジンは、中国のBYDから供給を受けたものだと報じられているので、黒幕はそのBYDということなのかもしれず、BYDはトヨタとの合弁相手としても知られるほか・・・。
世界でもっとも(フェラーリよりも!)利益率の高い自動車メーカーとしても知られます。
もう一つ参考までに、ランボルギーニ・ウルスの「悪名高き」コピー、XシリーズC60についても、発売や製造を行うのは地方の弱小自動車メーカーではあるものの、実際にそれを動かしていたのはメルセデス・ベンツの合弁相手でもある大手「北京汽車」であるということも報じられており、要は「見つからなければ何をやってもOK」「見つかればしっぽを切ればOK」という考え方が根底にある、ということもわかります。
参照:SongSan Motors, Autohome