| アストンマーティン・ヴァルハラ、ヴァンキッシュは当初の計画よりも2年遅れ、そしてパワートレインを変更して登場 |
アストンマーティンほど荒波にもまれた自動車メーカーもそうそうない
さて、つい先日「世界最強のラグジュアリーSUV」DBX707を発表したばかりのアストンマーティンですが、今回はアストンマーティンCEO、トビアス・メアース氏が「ヴァルハラ」「新型ヴァンキッシュ」について改めて言及しています。
数年前まで時計の針を戻すと、アストンマーティンはミドシップハイパーカー「ヴァルキリー」にて前人未到のパフォーマンスを達成し、その後はやはり(ちょっと安価で生産台数が多い)ミドシップハイパーカー「ヴァルハラ」にてハイパーカー市場での存在感を強め、その後にミドシップ化される「新型ヴァンキッシュ」にてスーパーカー市場へと殴り込みをかけ、フェラーリやランボルギーニ、マクラーレンに対抗するという計画を発表。※そのためフェラーリからエンジニアを引き抜いている
つまりは、それまで(プロトタイプを除くと)フロントエンジンレイアウトのスポーツカーしか持たなかったアストンマーティンにとって、ミドシップ市場へと参戦するための”武器”がヴァルキリー、ヴァルハラ、ヴァンキッシュだったということになりますね。
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アストンマーティン・ヴァルハラとは
そこでアストンマーティン・ヴァルハラについてですが、これは2019年3月に「AM-RB003コンセプト」としてデビューしており、その後に「ヴァルハラとして市販される」と発表されています。
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参考までに、アストンマーティンは1988年のヴィラージュ(Virage)以降、伝統的に「V」ではじまるネーミングを採用することが多く、ミドシップ三兄弟は「すべてV」。
ヴァルキリー(Valkyrie)は北欧神話に登場する「勝敗を決する女神」を意味し、ヴァルハラ(Valhalla)はやはり北欧神話にて死者の魂が運び込まれる宮殿(主神オーディンの館)、そしてヴァンキッシュ(Vanquish)は「征服」という意味を持っています。
なお、アストンマーティンはこの命名法則について、「V」は勝利を意味するからだ公式にコメント。
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ただしこれら「ミドシップモデル」の計画が始まった後、アストンマーティンはコロナ禍によって急速に業績が悪化し、その立て直しのために経営母体が変わったうえ、経営陣も刷新され、CEOはそれまでのアンディ・パーマー氏から(メルセデスAMGの)トビアス・メアース氏へと交代しています。※当時、中国に身売りするという報道まで出ていた
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その段階にてアストンマーティンではいくつかの事業計画が変更され、大きなものだと「ラゴンダ計画の凍結」。
そのほかマニュアル・トランスミッションの廃止、V12エンジン継続についても翻意がなされて近日中に最終モデル「V12ヴァンテージ」が登場してそのライフが尽き、さらには急速なエレクトリック化が進められることになります。
そしてミドシップ計画についても中断されるかと思われたものの、ありがたいことにその計画は継続され、しかしそれまでアストンマーティンが開発していた「60年ぶりの新型エンジン」であるV6ターボがなんと完成を目前にして「白紙撤回」。
そのかわりに採用されるのがフラットプレーンクランク採用のV8ツインターボですが、これはもちろん、メルセデスAMG GTブラックシリーズに搭載されるユニットと考えて良さそう。
トビアス・メアース氏はこのエンジンにつき、「AMG GTブラックシリーズとの関連性」について言及せず、エンジンの製造はアストンマーティンにて行うとコメントしていますが、もろもろ考慮すると(レブリミットも同じ)、「設計を共有している」のは間違いないと思われます。
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このほかにも(新オーナーであるローレンス・ストロール氏が所有していた)レーシングポイントが「アストンマーティンF1」へと改称したり、24年ぶりにメルセデス・ベンツ以外のF1向けペースカーとしてヴァンテージが採用されるといった変化も起きています。
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これだけの短期間に、これだけの変化を迎えた自動車メーカーも難しく、しかし現代ではその変化のスピードがこれくらいじゃないと生き残ることができないという一つの例が昨今のアストンマーティンだと考えていますが、かくしてヴァルハラはなんとか生きながらえることになり(すでに予約金を集めており、開発もある程度進んでいたからだと思われる)、そして今回「2024年に発売される」と強調されているわけですね。
ヴァルハラは新型ヴァンキッシュとドライブトレーンを共有
そして今回もう一つ言及されたのが、「ヴァルハラは新型ヴァンキッシュとパワートレインを共有する」、ということ。
同じミドシップレイアウトを採用する以上これは必然であるともいえ、やはりヴァンキッシュも予定していたV6エンジンを捨て、ヴァルハラと同じV8エンジンを採用するということになりますが、ヴァルハラではハイブリッドパワートレイン搭載にて937馬力を発生することがこれまでの報道に見え隠れしています。
いまのところ、ヴァンキッシュではハイブリッドと組み合わせられるかどうか、そしてその出力についてまで言及されていないものの、アストンマーティンは「2026年以降は全社ハイブリッドもしくはEV(つまり電動化)」になるとも発表しているので、ヴァンキッシュもなんらかのエレクトリック化がなされるのは間違いなさそう。
ただしあまりに高価になると当然「売れず」、よって新型ヴァンキッシュでは「マイルドハイブリッド化」等にてコストを抑えるのかもしれません。
なお、現在マクラーレンとフェラーリは「V6+エレクトリックモーター」というパッケージングを新たに採用していますが、その中でV8+エレクトリックモーターというのはけっこう訴求力があり(C8コルベットのハイブリッドモデルもそうなる可能性が高い)、これによってアストンマーティンのスーパースポーツ市場におけるプレゼンスが高まる可能性もありそうです。
ただ、当初予定していた「マニュアル・トランスミッション」の採用については「(エミッションコントロールの関係上)ない」と認識しておいたほうがいいのかもしれません。
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