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VWグループが臨時株主総会を開催し「品質向上、グループ間のデザイン差別化に務める」と発言。ランボルギーニ、ブガッティ、ポルシェなどデザインはそれぞれ独自の道へ

2022/12/26

ランボルギーニ

| フォルクスワーゲングループは新CEOを迎え、その方向性が大きく変わることが予想される |

今回発表されたプランは非常に有効かつ効果的だと思われる

さて、フォルクスワーゲンが臨時株主総会を開催し、そこでオリバー・ブルーメCEOが同社の新しい方向性を発表しています。

この骨子としては、ブランドのデザイン言語再構築と最近の製造品質の低下を”取り組むべき主要な懸念事項”として指摘し、さらにフォルクスワーゲングループとしてはブランド間の差別化を拡大することを目指してゆくもよう。

参考までに、フォルクスワーゲングループはブガッティ、ランボルギーニ、ポルシェ、ベントレー、アウディ、VW、ドゥカティなど12ブランドを擁していますが、今後それらになんらかの変化が生じてゆくことが考えられます。

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今後のフォルクスワーゲングループの戦略は「10個の項目」に

そして今回の取締役会において、オリバー・ブルーメCEOは「戦略を10項目のプランに分解」し、各エリアを担当する取締役を発表。

その中でもハイライトは、(上述の通り)デザインへの注力と品質の向上、そして電気自動車の未来に向けて各ブランドが技術やコンテンツに関し、より明確な個性を発揮することであると示されています。

さらにオリバー・ブルーメCEOは「すでに我々は明確なデザイン言語を開発し、品質攻勢を開始した」とも語っていますが、品質に関しては、フォルクスワーゲンの稼ぎ頭であるゴルフの「コストダウン、低品質」に対する批判、IDシリーズの安っぽい内装に対する指摘、全般的な車種にわたるタッチセンサーやインフォテイメントシステムの反応の悪さなどを受けてのことだと思われます。

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このアクションプランに従い、グループ品質管理責任者のミヒャエル・ノイマイヤーに代わってフランク・ヴェルシュが、グループデザイン責任者のクラウス・ツィヒオーラに代わってミヒャエル・マウアーが就任すると発表されていますが、この二人は、それぞれアウディの品質責任者とポルシェのデザイン責任者としても活躍しており、それらポジションを維持したままでの「兼任」となるもよう。

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なお、フォルクスワーゲンCEOもまた、ポルシェCEOとの「兼任」ですね。

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今後のVWでは、既存モデルの役割、そしてブランド間の差別化も重要

さらにフォルクスワーゲンブランドは、ティグアンやゴルフといった人気モデルをどうエレクトリック時代に存続させるかについても課題だと捉えており、これは一つの方針転換だと言えるかも。

というのも、フォルクスワーゲンはこれまで電動化へのシフトを「100年に一度のチャンス」と語り、ディーゼル不正事件による”地に落ちた”イメージを払拭するため、既存モデルを廃止して新シリーズ「ID」へと切り替えることを目論んでいたため(つまりはリセットしたかった)。

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ただ、IDシリーズが思うように売れなかったことで「やはり既存モデルを継続するしかない」という方向へと調整を図ることとなったのだと思われます。

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そしてもうひとつの重要な方向性が「将来的に重複がなくなるように、ブランドごとに排他性を強調する」ということ。

フォルクスワーゲン各ブランドにはそれぞれデザイナーが存在するものの、各ブランド間でのデザイン的類似性は小さくなく、たとえばランボルギーニのフロントバンパー内に採用される「ハの字」については・・・。

フォルクスワーゲン・ゴルフや・・・。

ベントレーでも採用。

リアだとナンバープレート装着部分のくぼみが「ハの字」となっているのも、多くのフォルクスワーゲングループのクルマに共通するデザイン的特徴です。

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ランボルギーニ・ウラカンEVO RWDとの類似性も。

これらについては、意図的にグループのデザイン統括責任者が「共通性」を持たせるよう各ブランドに対して働きかけているからだと思われますが、今後はこういった類似の範囲を小さくしてゆく、ということなのかもしれません。

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現時点であってもこういった共通性が各ブランドの価値を既存しているとは思えませんが、今後電動化時代を迎えると、使用するプラットフォームが(ガソリン時代に比較して)各ブランドにて共有されることになり、つまりメカニズム的な共通性が大きくなることから、「外観を差別化せねば」プレミアムブランドの車両価格を正当化できないと考えた可能性も。

さらには車両に使用されるソフトウエアについても、プレミアムブランドには普及価格帯のクルマとは異なるものを使用する計画もあるといいい、物理的なコンポーネントの共有化にて会社全体のコストを下げる一方、デザインやインフォテイメントシステムなど、目に見える部分での差別化を図り、プレミアムブランドにおいては「より高く」、量販車ではコストを抑えてより安価に大量に販売することで「VWグループ全体の利益増加」を目指すのだと思われます。

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また、このほかだとスカウトブランドの復活についても言及があり(ただし詳細には触れられていない)、さらにオリバー・ブルーメCEOが強く主張したのが「変化こそがすべての答えである」ということ。

「私のチームでは、(就任の)初日からフォルクスワーゲン・グループに新しい形式を与えることに着手した。私たちは、チームスピリット、公平性、情熱を持って、勝つためにプレーします。私たちの戦略を信頼していただき、ありがとうございます」と株主総会を締めくくっています。

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フォルクスワーゲンの開催した臨時株主総会の動画はこちら

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参照:Volkswagen Group

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