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ポルシェがル・マン初優勝を記録した356が発見され、ふたたびル・マンを訪れる。かつては歴史の表舞台から消え、すでにどこかで廃車になったものと思われていたが

ポルシェがル・マン初優勝を記録した356が発見され、ふたたびル・マンを訪れる。かつては歴史の表舞台から消え、すでにどこかで廃車になったものと思われていたが

| この個体はルーフをカットされレッドにペイントされるなどして「別の車両」として路上を走っていたが |

偶然イベントにてマニアの目に止まり、検証と復元作業が開始される

さて、ポルシェはル・マン24時間レースにおいてもっとも多くの勝利を記録した自動車メーカーですが、今回は「ポルシェがはじめてル・マンにおけるクラス優勝を飾った356SL」が長い期間のレストアを経てようやく完成し、そして(展示のため)ル・マン24時間レースが開催されるサルト・サーキットへと戻ってきた、とのこと。

このポルシェ356SLは「数奇な」運命をたどっており、ここでその足跡を辿ってみましょう。

ル・マン24時間レースでクラス優勝を収めることでポルシェは一夜にして有名な存在に

まず、このポルシェ356はオーストリアのグミュント(ポルシェ一族の出身地)にて製造された個体だといい、正式には356/2と呼ばれ、ポルシェがル・マンに参戦するにあたり、軽量化とねじれ剛性の向上のために旧式のアルミボディを使用し、356のオリジナル木製を使って手作業で成形されたレーシングカーだと紹介されています。

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これがポルシェのスポーツカーの「メートル原器」!356生産初年度に使用された木型が公開に。当時、356のボディ製造には90時間もかかっていた
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かくしてボディと空冷4気筒エンジンに大幅な改良が加えられたこの「シャシーナンバー356/2-063」は、完成後に実際にレースに投入され、オーギュスト・ヴェイエとエドモンド・ムッシュのドライブによって(ル・マンの決勝にて)45番手のグリッドに並びます。

ル・マン24時間レース決勝では、あいにくの雨という悪条件の中でも完璧な走りを見せ、総合20位、そして751-1100ccクラスで優勝を果たすことになりますが、この勝利によってポルシュはモータースポーツの歴史に名を刻み、本格的なパフォーマンスカーメーカーとしての地位を確立するわけですね。

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なお、フェラーリを有名にしたのも「ル・マン24時間レースでの優勝」だと言われていますが、ル・マン24時間レースは「国際色豊かな」レースであり、実際に世界各国から強豪が参戦するため、そこでひとたび優勝すれば「世界各国で」その勝利が報じられることに。

よって、いままで知られていなかった自動車メーカーが一夜にして世界中にその名を轟かせるということが往々にしてあった、と言われます。

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ただしその後、このポルシェ356/2-063は一時行方不明に

このポルシェ356/2-063は、ル・マンにて成功を収めた後、カリフォルニアのジョン・フォン・ノイマンに売却されますが、残念なことにフォン・ノイマンはこのクルマのルーフを切り落とし、さらにはレッドに塗り直してしまい、ここでいったんこの「356/2-063」の存在が(オリジナルとはまったく異なるクルマになってしまったので)消息不明となってしまいます。

さらにその後、ポルシェ356/2-063はチャック・フォージなるコレクターの手に渡り、彼は長年この車を所有することになりますが、ある日北カリフォルニアのイベントに持ち込んだとき、このクルマに目を留めたのが現在のオーナー、そしてこの356/2-063をもとの姿に戻したキャメロン・ヒーリー。

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キャメロン・ヒーリーは当時を振り返って「1993年、当時はモンタレー・ヒストリックレースと呼ばれていたのですが、そこで私は小さな赤いロードスターに目を奪われました。それまで356ロードスターはおろか、グミュント製のポルシェも見たことがなかったし、その背景も知らなかったのです」と語っています。

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その後2009年、キャメロン・ヒーリーは前オーナーの遺品としてこの356/2-063を手に入れ、友人であり356の専門家であるロッド・エメリーの協力のもと、その後5年間かけて、このクルマが356/2-063というシャーシであるということを突き止めたといいます。

そこからは大規模なレストアプロジェクトが開始されて「当時の姿」に戻されることになりますが、そこで同氏が考えたのが「この356/2-063でル・マンまで持ってゆきたい」。

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今年はル・マン24時間レース100周年、そしてポルシェ75周年という歴史的な年でもありますが、キャメロン・ヒーリーは「このクルマをル・マンに連れてゆくならば今しかない」と思いたち、ポルシェとの連携にて「ル・マンへの足跡をたどる旅」へと出ることとなります。

まずキャメロン・ヒーリーはこのクルマをドイツまで輸送し、そこでポルシェは自社のポルシェミュージアムにこの車両を展示することになりますが、同時に進められたのが「(ポルシェ本社のある)シュトゥットガルトから(ル・マン24時間レースの開催される)ラ・サルトまでを走る準備」。

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ポルシェはそのために過去に使用されたという旅程表と1950年代の古い道路地図を使用してルートを組み、キャメロン・ヒーリーはそれに従って「シュトゥットガルトからル・マンまで」当時のポルシェ一行が走ったのと正確に同じルートを辿って何日もかけて町から町へと車を走らせます。

そして、ポルシェが数十年にわたり拠点として使用していた「Rue du 8 Mai」ガレージへとクルマを運び入れ、ついにル・マン24時間レース過去100年間の総合優勝車とクラス優勝車80台を展示した特別展の会場であるミュージアムへとついに到達することに。

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キャメロン・ヒーリーが初めてこのクルマを目にしたのは「偶然から」ではありますが、彼がこのクルマを「356/2-063であると」証明しなければ、この貴重な個体は永遠に歴史の表舞台から消え去っていたはずで、そう考えるとこの出会いは偶然ではなく「必然」であったのかもしれませんね。

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参照:Porsche

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