1937年型メルセデス・ベンツ540Kスペシャル・ロードスターがペブルビーチにて最優秀賞を獲得。アフガニスタン国王の依頼によって製造・納車された個体

｜　この受賞により、メルセデス・ベンツは「ブガッティを抜き、ブランドとして最多と名10回目の受賞」を記録　｜

たしかにとんでもなく手間をかけて製造されたこと、そしてレストアされたことが一見してよくわかる

さて、フェラーリのクラシックモデルが非常に高い人気を誇ることはよく知られた事実ですが、同じようにクラシックカーが高い評価を受けるブランドがメルセデス・ベンツ。

そして今回、ペブルビーチのベスト・オブ・ショーにて1937年型メルセデス・ベンツ540Kスペシャル・ロードスターが”ベスト・オブ・ショー賞”を受賞することになり、72回のショー開催の歴史において「メルセデス・ベンツがブガッティを抜き、10回の受賞を獲得して受賞最多記録を更新」したとの報道がなされています。※今年は18カ国から216台のエントリーがあった

「ペブルビーチで栄誉を手にするクルマは、究極のものでなければならない」

なお、この72回の受賞者のうち49台が1930年代のクルマだとされ、今年も例外ではなかったわけですが、過去5回の受賞車もやはり1930年代のクラシックモデルに集中しています。

このメルセデス・ベンツ540Kスペシャル・ロードスターについては、1937年9月に、アフガニスタン国王の依頼でシンデルフィンゲンが架装したボディとともに納車され、つまり”生い立ち”そのものからして特別な背景を持っていて、1953年に米国のコレクターに売却された後、ずっと米国にて過ごしているのだそう。

現在のオーナーはジム・パターソンという人物であり、2022年（つまり昨年）のモントレー・カー・ウィークにてこのクルマを990万ドル（14億4200万円）で入手したと報じられていますが、今回の受賞によってこの個体の価値はさらに高まったと考えて良いかもしれません。

現在、メルセデス・ベンツ540Kスペシャル・ロードスターに関し、カバー付きスペアタイヤを備えたオリジナルの3台のみが現存していると考えられ、この個体の走行距離はわずか1万3,000マイル（約2万キロ）、そして推定180馬力の5.4リッター直列8気筒エンジンが搭載されています。

コンクール委員長のサンドラ・バトン氏は「このメルセデス・ベンツ540Kスペシャル・ロードスターは、力強さと、伸びやかなラインとスタイルのバランスがとれていて、その歴史もユニークです。このクルマについてオーナーと話す中で、レストアに費やされた時間と考えに感銘を受けました。この美しいメルセデス・ベンツのすべてのパーツは、その歴史に敬意を表するためにとても注意深く研究されています」とコメント。

一方、オーナーであるジム・パターソン氏は「（同氏が住む）ケンタッキー州では、常にダービーに勝つことが話題となります。私は今日までに2度、このコンクールで優勝している。今回の受賞は、私にとってのケンタッキー・ダービー三冠にも等しいと言えるでしょう」と述べています。

モントレー・カー・ウィークは、この最大の山場である第72回ペブルビーチ・コンクール・デレガンスの授賞式によって幕を閉じることになりますが、今回の受賞はメルセデス・ベンツのクラシックモデルが持つ”時代を超越した美しさ”を証明するだけでなく、メルセデス・ベンツ・クラシック・センターが（顧客から）預かったクルマを修復するために労力を惜しまないことの証にもなっており、元々のクルマの高い価値に加え、それを維持するための体制が整っていることを示すものだとも考えられます。

メルセデス・ベンツは「最初に自動車を発明し、発売した」自動車メーカーであり、多くの愛好家を抱えるブランドとしても知られ、自動車市場もっとも価値のあるモデルを送り出したことでも有名ではあるものの、意外なことにクラシックモデルはあまり市場に登場しておらず、つまりはそれだけ「そのクルマを保有しているコレクターが売りたがらない」ということなのかもしれませんね。

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