| ナッパレザーはたしかに高級で上質であるが、「万人にとって」メリットがあるわけではない |
あくまでもクルマに「付加価値をもたらし、その価値を維持するためのメンテンスを要求する」素材であることを忘れてはならない
さて、クルマのインテリアにおいてよく見かけるのが「ナッパレザー」。
その高級感と細やかな質感でよく知られるプレミアムなレザーで、特に高級車の内装に使用されることが多く、素材としては若い動物(通常は羊、ヤギ、または子牛)の皮を使って作られますが(つまりは牛革以外にもナッパレザーがある)、若い動物の皮を使用するのは「年齢を重ねた動物の皮に比べて柔らかく、しなやかだから」。
そしてナッパレザーは、クロム鞣し(なめし)という方法で処理され、その特徴的な滑らかで柔軟な仕上がりが得られるのですが、この方法は1875年にエマニュエル・マナッセによって(ワインの産地でも有名な)カリフォルニア州ナパバレーで開発され、その後「ナッパレザー」という名前が付けられたのだそう。※このほかにも鞣しの方法には「タンニン鞣し」「混合なめし」などがある
ナッパレザーはどのように作られるのか?
ナッパレザーの製造工程において、まずは最上級の皮が選ばれ、清掃され、鞣し処理の準備がなされます。
ナッパレザーに使用されるクロム鞣しは、レザーを柔らかくし、しなやかにしながらもその自然な外観を保つための方法で、その後、レザーはさらに加工され、細かなデザインや豪華な仕上げに対応できるよう柔軟性が高められます。
鞣し後は染色され、場合によっては模様をつけ、保護コーティングが施され、耐久性と豪華な感触を保つこととなるわけですね。
ナッパレザーは、そのリッチで滑らかな質感で高く評価されており、高級車やハイパフォーマンスカーによく使用され、ロールス・ロイス、メルセデス・ベンツ、ジェネシスなどのブランドはもちろん、マツダやシボレーなどの”より手が届きやすい”ブランドであっても、ナッパレザーが標準装備またはオプションとして提供されている場合も見られます。
さらには座席だけでなくダッシュボードやドアパネル、ステアリングホイールにも使用され、車内全体に一貫した豪華な雰囲気を提供でき、高級感を演出するのに欠かせない素材でもあります。
ナッパレザーの特徴は?
そしてナッパレザーとほかのレザーについて比較してみると「普通のレザー」「人口レザー」だと以下の通り。
- 普通のレザー:ナッパレザーに対する「普通のレザー」は成熟した動物の皮を使用したり、皮革の「第二層(上質で質感に優れる第一層を剥いだその下)」を使用したもので、表層に比較的分厚いコーティングが施されているために、ナッパレザーに比べて硬くて耐久性があり、しかし柔軟性が劣ります。
- 人工レザー(ヴィーガンレザー)は人工的な素材で作られ、レザーの外観を模倣しており、見た目はレザーに似ていて、手入れが簡単で耐久性に優れ、環境に優しいとされることもありますが(そうでないとされる場合もある)、リアルレザーの特徴である自然な感触や経年変化を楽しむことは不可能です。※ただし”手触り”については非常に優れた製品が登場している
そしてナッパレザーの利点と欠点については以下の通り。
- 利点:
- 柔らかく豪華な手触り
- アレルギー反応を起こしにくい
- しわが寄りにくい
- 自動車の内装に高級感を提供する
- 欠点:
- 普通のレザーより高価
- 傷が付きやすく、汚れや油を吸収しやすい
- 定期的な手入れが必要
- 鞣しの過程が環境に影響を与える可能性がある
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ナッパレザーの手入れ方法は?
ナッパレザーを手入れするには、柔らかい布と温水、そして石鹸を使うのが良いとされ、専用のレザークリーナーやコンディショナーを使えば、経年劣化を防ぎ、さらなる保護が可能となりますが、一方で強力な化学薬品は避けるべきで、レザーの柔らかな表面を傷つけてしまう可能性が出てきます。
定期的な手入れを行うことで長期的な美しさを保つことができ、特に毎日使用されるクルマのシートは2〜3ヶ月ごとにコンディショニングを行うと良いとされ、直射日光を避け、クルマを涼しく乾燥した場所に保管することが大切だとも。
なお、水に濡れたナッパレザーは自然乾燥させることが重要だとされています(熱を加えると収縮することがある)。
こういった感じで適切な手入れが要求される素材ではあるものの、ナッパレザーは柔らかさ、快適さ、豪華さを提供し、正しく手入れをすればクルマの価値を保ち、さらには再販時に価値を高めることができますが、手入れの頻度やデリケートな性質を考慮すると、全ての人にとって最適な選択とは言えないかもしれません。
よって、ナッパレザー=よりよい製品である、とそのまま捉えず、その性質を正しく理解し、自身の使用環境を考慮し選択することが重要であると思われます。
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