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「マニュアル・トランスミッション」を積むフェラーリが15年ぶりに復活。「12チリンドリ・マヌアーレ」が拓く”革新的MT”、そしてその意味とは

フェラーリ12チリンドリ 「マヌアーレ」のエクステリア(レッド)〜フロント

Image:Ferrari

| まさかフェラーリが先陣を切って「疑似MT」を発売するとは |

しかしフェラーリはいつも時代の先端を走ってきた

フェラーリの聖地、マラネロから世界中のエンスージアストを震撼させる驚愕のニュースが登場。

2010年代初頭を最後にフェラーリのラインナップから姿を消していた「マニュアル・トランスミッション(MT)」が最新のフラッグシップV12モデルをベースとして奇跡の復活を果たしたというもので、今回発表された限定モデル「フェラーリ 12チリンドリ・マヌアーレ(12Cilindri Manuale)」は、最高出力830馬力を誇る9,500rpmまで回る伝説的な自然吸気V12エンジンへと「足元のクラッチペダルと美しく輝くオープンゲートの6速マニュアルシフトを融合させた」世界限定1,499台の特別なクーペモデルです。

ただしこのマニュアル・トランスミッションは「クラッチ、シフトレバー、トランスミッション」との間に物理的リンケージを持たない、「電気的な信号によって」クラッチの切り離しと接続、そしてギアチェンジを行う「マヌアーレ・バイワイヤ」なる機構。

まさかフェラーリが自動車業界の先陣を切って「疑似マニュアル・トランスミッションを発売しようとは」という感じではありますが、思えば「マニュアル・トランスミッションを廃止したり」「電子制御によるドライブモードを取り入れたり」したのもフェラーリが「業界最速」の部類であったので、今回フェラーリが他社に先んじてこの「電子制御マニュアル・トランスミッション」を取り入れたのも「(モータースポーツからのフィードバックではないものの)あるべくして」なされた展開なのかもしれません。

フェラーリ12チリンドリ 「マヌアーレ」のエクステリア(レッド)〜サイドスカットル

Image:Ferrari

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この記事の要約(30秒チェック)

  • 15年ぶりのMT復活: フェラーリ公式として約15年ぶりとなる、3ペダル・オープンゲート風マニュアル仕様の特別限定車。
  • 革新の「マヌアーレ・バイワイヤ」: クラッチとシフトレバーの動きをセンサーで検知し、既存の8速DCTを制御する新開発システム。
  • 驚きの「ATモード」も搭載: ひとたびオートマチックモードを選択すれば、通常の8速DCTとして快適なクルマージングが可能。
  • 伝統とモダンが融合した内装: ステアリングからパドルを廃止。センターコンソールにはLEDバックライト付きのアルミ製丸型シフトノブとスチール製ゲートを配置。
  • 伝説の名車へのオマージュ: 内外装には、かつての名車「365 GTB/4(通称デイトナ)」を彷彿とさせる特別なテーラーメイド仕様を適用。

矛盾を可能にした自社開発「Manuale by-wire」システム

1997年の「F355 F1」以降、超高速のパドルシフト(セミオートマチック)が市場を席巻し、現代ではデュアルクラッチ(DCT)が当たり前となったスーパースポーツの世界。

その先鋒でもあり頂点に立つフェラーリが、なぜ今あえて「ドライバーとの純粋な一体感」を求めてMTを復活させたのか。

そこには最新のバイワイヤ技術を用いた革新的なブレイクスルーが隠されており、「マニュアル仕様でありながら、オートマチックモードも選べる」――。一見すると完全に矛盾しているように思えるこの夢のようなメカニズムを実現したのが、フェラーリが完全自社開発した革新的な「マヌアーレ・バイワイヤ(Manuale by-wire)」システムというわけですね。

フェラーリ12チリンドリ 「マヌアーレ」のインテリア〜シフトレバー

Image:Ferrari

このシステムは物理的なリンク(ワイヤーや油圧配管)でトランスミッションを動かすのではなく、クラッチペダルとシフトレバーに設置された高精度センサーがドライバーの細かな入力を検知し、そこから電気信号を介して12チリンドリに標準搭載されている最先端の8速デュアルクラッチトランスミッション(DCT)を人間の手と足の感覚通りに緻密に制御するというロジックを持っています。

フェラーリによれば「ゲームのコントローラーのような味気ない感覚では」という懸念は無用だといい、マラネロのエンジニアは、五感に訴えかける完璧な「機械的フィードバック」を徹底的に作り込んだと自信を見せ・・・。

  • クラッチペダル: プレロードスプリング、カム、ローラーを組み合わせた独自の機構により、半クラッチのミートポイント(噛み合い点)から完全に踏み切った奥の位置まで「本物の油圧クラッチと全く変わらない」リアルな踏力を再現
  • シフトレバー: 金属塊から削り出された高強度スチール製の反転ブロックを組み込み、ギアを吸い込ませる際の心地よい「重み」を再現。さらに、ゲートに金属が当たる往年のクラシック・フェラーリ特有の「カチッ(Snick)」という官能的な金属音まで音響工学的にチューニングされている
フェラーリ12チリンドリ 「マヌアーレ」のインテリア〜全景

Image:Ferrari

さらにはバイワイヤ化されたことで、従来のMTの弱点であった「5速から2速へ間違えてシフトダウンしてエンジンをオーバーレブ(過回転)させて壊してしまう」といったヒューマンエラーを電子制御が未然に防ぐセーフティネットも構築。

その一方で、ドライバーは完璧なヒール&トウを決め、9,500rpmの咆哮を響かせるスロットルブリッピングを存分に楽しむことができるといい、もちろん、クラッチ操作をミスすれば、実車同様に「エンスト」するというリアルな緊張感もあえて残されているのが心憎い演出でもありますね。

フェラーリ 12チリンドリ・マヌアーレ 主要スペック・特徴一覧

項目詳細スペックおよび専用装備
ボディタイプクーペ専用(スパイダーの設定はなし)
生産台数世界限定 1,499台
エンジン6.5リッター 65度 V型12気筒 自然吸気エンジン(F140HD)
最高出力 / 最大回転数830 cv / 9,500 rpm
トランスミッション新開発「マヌアーレ・バイワイヤ」付6速マニュアルモード搭載8速DCT
インテリアの変更点・ステアリングコラムからパドルシフトを排除
・足元にクラッチペダルを追加
・LEDバックライト付き丸型アルミシフトノブ&スチール製オープンゲートコンソール
・シートトリムに6速MTを暗示する「6本の垂直グルーヴ(溝)」
エクステリアの変更点・サイドバッジにレーザーエッチングの専用ロゴ
・「365 GTB/4 デイトナ」を想起させるフロントスプリッター&リアウイングのピンストライプ仕上げ
・専用5スポーク鍛造アルミホイール
カラーバリエーション25色のアイコニックな伝統カラー、専用レザー&アルカンターラ内装
フェラーリ12チリンドリ 「マヌアーレ」のインテリア〜シフトレバー

Image:Ferrari

他の超高級車ブランドの「MT戦略」との比較から見る市場でのポジショニング

超高級車市場におけるマニュアルトランスミッションの復活は現在のトレンドの最先端を行くもので・・・。

  • ポルシェ 911 S/T や GT3:ポルシェは頑なに純粋な機械式MTを提供し続け、アナログ派の熱狂的な支持を集めているが、しかし、それは純粋なサーキット指向、または公道での古典的な操作性に特化したもの
  • パガーニ・ウトピア:コレクション価値、ドアライバーとのエンゲージを考慮し7速MTを設定
  • ケーニグセグ CC850:「AT」「MT」両方の特製を備える「TWMPAFMPC」を搭載※The Worlds Most Powerful And Fastest Manual Production Car」の略
  • ヒョンデ アイオニック 5 N:EVでありながら「シフトチェンジ」を擬似的に再現しているが、操作は「パドルシフトのみ」
  • フェラーリのアプローチ:フェラーリが選択したのは、ポルシェのような純機械式でもなく、自動シフトチェンジからの決別でもない、「究極のエモーショナル(MT)と、現代の圧倒的な快適性(8速自動変速)の完全な融合」。高速道路でのクルージングや渋滞時にはATモードを選択すればDCTの自動変速機脳を使用したジェントルな走りが可能となり、この「1台2役」を最高峰のV12フラッグシップで成し遂げた点において、他社の追随を許さない孤高のラグジュアリー&ハイテク戦略を提示している
フェラーリ12チリンドリ 「マヌアーレ」のエクステリア(レッド)〜ホイールとタイヤ

Image:Ferrari

なぜフェラーリの「最後のMT」は神格化されているのか?

今回の「15年ぶりの復活」という事実がどれほど歴史的価値を持つかを理解するため、フェラーリとMTのバックストーリーを知っておくと、この12チリンドリ マヌアーレの「重要性」の重みがさらに増すようにも思われ・・・。

  • フェラーリ最後の量産MT車「カリフォルニア / 599」(2010年頃):フェラーリが最後にマニュアルトランスミッションを標準セッティングしたモデルは、V8の「カリフォルニア」やV12の「599GTBフィオラノ」。しかし、当時すでにパドルシフトの性能が圧倒的だったため、実際にMTで注文されたのは世界でわずか数台〜数十台レベル。あまりの需要の少なさに、フェラーリは「MTの歴史の幕を閉じる」と宣言することに
  • オークションでの価格高騰(コレクターズアイテム化):数年が経ち完全に新車でMTが買えなくなると市場の評価は一変し、数少ない「純正MTの599やカリフォルニア」は、パドルシフト仕様の数倍から数億円規模のプレミア価格で取引される神格化された存在に
  • 満を持しての「公式回答」:今回の12チリンドリ・マヌアーレは、そんな「もう一度、フェラーリのV12を自分の手足で操りたい」と熱望し続けてきた世界中のトップコレクターに対する、マラネロからのこれ以上ないスマートな回答。電子制御(バイワイヤ)という現代の武器を使い、かつて不人気を理由に切り捨てたはずの「オープンゲートのシフトノブ」を公式に復活させたことは自動車文化の歴史における偉大なマイルストーンとなる
フェラーリ12チリンドリ 「マヌアーレ」のエクステリア(レッド)〜サイド

Image:Ferrari

結論

フェラーリが発表した「12チリンドリ・マヌアーレ」は、単なる過去への回帰ではなく、最新テクノロジーによって「操る歓び」を再定義した、自動車工学の最高傑作ともいうべき存在です。

パドルシフトがもたらすコンマ数秒のラップタイムの短縮よりも、手のひらに伝わるアルミノブの感触、スチールゲートを滑り込むカチッという音、そしてクラッチペダルを通じてクルマと対話する時間の方が、現代の富裕層やコレクターにとって遥かに贅沢で価値があるということを跳ね馬自らが証明してみせたのがこの12チリンドリ マヌアーレ。

世界限定1,499台という狭き門、そしてV12自然吸気という絶滅寸前の至宝をマニュアルで楽しむ特権。このクルマが、今後のハイパーカー界における「アナログとデジタルの融合」の決定版として、長く歴史に名を残すことは間違いないものと思われます。

なお、SNSではいまだ「ルーチェ」の流れを引き継いで大きくコメント欄が荒れており、これからも様々な議論がなされることになると考えられますが、タイミングを見てそれらについても紹介したいと思います。

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