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アウディが「世界共通モデル」を完全廃止。欧州「物理ボタン復活して」中国「物理ボタンいらない」に対応し、”仕向け地専用開発”を加速する意向を発表

アウディのエンブレム
Life in the FAST LANE.

| かつては「グローバルモデル」が自動車業界のトレンドではあったが |

現代ほど国や地域によってクルマの好みが分かれている時代はない

自動車業界で長年美徳とされてきた「グローバルカー(世界共通車)」の思想がいま大きな転換期を迎えており、今回ドイツのプレミアムブランドであるアウディが「一台のクルマで世界のすべての市場を満足させる(ことができる)時代は終わった」と発言し業界を驚かせることに。

さらに今後は北米、欧州、そして中国という巨大な3大市場のそれぞれに対し、現地のユーザーが本当に求める形へ完全に特化した「ローカル・フォー・ローカル」の体制へと舵を切ることを明らかにしています。

【30秒でわかる】この記事の要約

  • 世界共通モデルの終焉:欧州の「物理ボタン派」と中国の「画面派」の両立を諦めて市場ごとの専用開発へシフト
  • 中国法人「AUDI」の設立:SAIC(上海汽車)と組み、スマホのように進化する中国専用の最先端EVを展開
  • 開発期間の大幅短縮:意思決定の高速化により、中国並みのスピードで魅力的な新車を市場へ投入可能に
  • ファン歓喜の副産物:この機動力を活かし、R8後継となる1001馬力ハイブリッドスーパーカー『ヌヴォラーリ(Nuvolari)』や、TT後継の『コンセプトC(Concept C)』市販版など、熱いエモーショナルカーが続々復活へ

欧州は物理ボタン、中国は画面操作…アウディが下した「万人受けはもう無理」という決断

「正直に言って、世界に適合する一モデルを作るという『グローバルカー』のアイデアは過去のものです。なぜなら、現在の米国や中国の市場にはもうマッチしないからです。これからは、地域に根ざした開発の柱が必要になります」

これはアウディの最高技術責任者(CTO)を務めるルーヴェン・モール(Rouven Mohr)氏が豪自動車メディア『Go Auto』の取材に対し語ったとされる本音ですが、この背景にあるのは市場ごとの「好みの決定的な乖離」です。

新型アウディA6のインテリア
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例えば、中国市場では「動くスマートフォン」のような、巨大なスクリーンと最先端の自動運転技術を凝縮したガジェット的なEVが求められ、その一方で歴史ある欧州のバイヤーたちは過度なデジタル画面よりも指先で触って操作できる「物理的なボタンやスイッチ、心地よいクリック感」を重視する傾向が根強く残っているという現状も。

そして現在のところ、欧州向けのアウディでは湾曲したデジタルダッシュボードの採用が進んでいますが、その一方では物理ボタンも残されていて、「どっちつかず」なのもまた事実です。

つまるところ「二兎を追うものは」状態となっているのが現在のアウディ(そしてアウディのみではなく他の多くの自動車メーカーも同様である)で、両方を満たそうとすればその分コストも掛かってしまい、であればもう「どっちか片方に割り切って」開発しよう、というわけですね。

新型アウディA6のインテリア(ドアスイッチ)
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なお、すでにこの問題に取り組んでいるのが「マツダ」であり、中国向けとしては現地自動車メーカーと組んで「フラッシュマウントドアハンドル」「タッチ式による操作系」「細長いLEDライト」「パノラミックルーフ」といった中国での人気アイテムを盛り込んだEZ-60を発売し、一方で他の国や地域向けとしては「それまでのコンベンショナルな」仕様を持つクルマを展開しています(そして両方の市場において高い評価を得ている)。

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そしてアウディに話を戻すと、アウディもすでにこの準備を進めていて、中国の上海汽車集団(SAIC)とタッグを組み、従来の4つのリング(フォーリングス)エンブレムを廃した中国専用のニューブランド「AUDI(すべて大文字)」を立ち上げたことも記憶に新しく、今後この流れは全自動車業界的に加速してゆくのかもしれません。

さらにいえば、欧米では「運転する楽しみ」を重視したり高速走行性能に重きが置かれるものの、中国市場では「自分で運転するよりも自動運転のほうがいい」「そもそも速度を出せる(アウトバーンのような)道路がないので高い速度は関係ない」といった風潮もあって、ある意味では「中国向けのクルマに高い走行性能を盛り込むことはそもそも無意味」であり、これまで欧州の自動車メーカーが現地自動車メーカーに対しコスト的な競争力を発揮できなかったのも「オーバークオリティによるコスト高」がその理由のひとつであったのだとも考えられます。

中国車(ファーウェイ)のインテリア
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よって「中国向専用に機能を取捨選択し」必要なものだけを盛り込んだクルマを作ったほうが「結果的に」効率的であるということも想像に難くなく、そしてこれが今後のトレンドになってゆくことも容易に推測できるわけですね。

開発期間を劇的に短縮する「チャイナスピード」の衝撃

そしてグローバルカーではなく「ローカルカー」思想へとシフトする最大のメリットは「新型車の開発スピードが爆発的に上がる」ことにあるのだと考えられ、これまでグローバルモデルを開発する際は、世界中の安全基準や各地域の好みの最大公約数を取るために膨大な調整と社内承認(いわゆる大企業病的なプロセス)が必要で、しかしアウディは今回、開発チームが取締役会へダイレクトにアクセスできる「プロジェクトハウス」と呼ばれる独立組織を設立することに。※たとえば日本や中国では「ドアカメラ」が認可されているが、他の多くの国や地域では認可されておらず、1台の車に両方の仕様を想定し設計するのは無駄である。そのほかワールドワイドに通用する車名の調査にも膨大な時間とコストがかかるという例も

これによって意思決定のプロセスを限界まで削ぎ落とし、トレンドの移り変わりが激しい中国市場と同じような「チャイナスピード」での車両開発が可能になるというわけですね(中国内での販売しか考慮しないのであれば、飛躍的に意思決定や仕様決定が速くなる)。

新戦略がもたらす「R8」「TT」後継モデルの全貌

そしてこの迅速かつ柔軟な「開発体制への移行」はぼくらにとっても最高のプレゼントをもたらしてくれる可能性があり、アウディの場合、「世界中を納得させる仕様を持たせる必要がなくなったこと」により、特定のファンだけに刺さる「エモーショナルな尖ったモデル」にGOサインが出やすくなったのだそう(中途半端なものを作って「結果的に売れなくなる」という状況を避けることが可能になったのだとも考えられる)。

その象徴としてすでに動き出しているのが名車「アウディ R8」の精神的後継車となるハイブリッドスーパーカー『ヌヴォラーリ(Nuvolari)』であり、さらに「アウディ TT」の後継となる次世代スポーツカー『コンセプトC(Concept C)』の市販化です。

アウディ、新型「コンセプトC」を市販化決定。TTの後継ではなく“スピード、デザイン、感性の象徴であり、ブランドの魅力を高める存在”へ

Image:Audi

アウディ最新パフォーマンスモデル暫定スペック

項目ヌヴォラーリ(Nuvolari) / R8後継コンセプトC(Concept C)市販版 / TT後継
車両タイプ限定ミッドシップ・スーパーカー(世界499台)次世代ピュアEV(またはHV)スポーツカー
パワートレインV8ツインターボ + 3モーター ハイブリッド次世代スポーツEVプラットフォーム(ポルシェとの共同開発)
最高出力1,001馬力(1,015 PS)未定(エントリースポーツクラス)
0-100km/h加速2.6秒未定
駆動方式新世代 quattro predictive ride(全輪駆動)後輪駆動(RWD) または quattro(AWD)
特徴・位置づけランボルギーニ「テメラリオ」と基本骨格を共有ミニマルな内装と伝統の「TTモーメント」の再来

R8の魂を継ぐ「ヌヴォラーリ」

ランボルギーニの最新V8ハイブリッド車「テメラリオ」のプラットフォームや1万回転まで回るV8ツインターボエンジンをベースとしつつ、アウディ伝統の「軽量カーボン・スペースフレーム」と独自のハイテク4WDシステム(quattro predictive ride)で武装。デザインはバウハウスやブルータリズム建築を意識した、イタリアンとは異なるドイツらしいソリッドな美しさを放つことに

アウディの新型スーパーカーコンセプト「ヌヴォラーリ」のフロント

Image:Audi

アウディの新型スーパーカーコンセプト「ヌヴォラーリ」のリア
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TTの再来「コンセプトC」

生産終了となったTTの穴を埋める「新たなブランドのアイコン」。ポルシェの次世代電動スポーツカー(次期718系)とプラットフォームを共有しつつ、初代TTのような「無駄を削ぎ落としたミニマリズムと明快なデザイン」を新しいデザイナーであるマッシモ・フラシェッラ氏のもとで表現するクルマでもあり、EV市場の動向によっては、内燃機関(ガソリンエンジン)の搭載も噂されるなど、新しい方針のもとでの開発スピードを活かした柔軟な設計が進められている

ポルシェのエンブレム
一見するとポルシェ新型「ボクスターEV」、しかし装着されるナンバーは「アウディ本社所在地」という謎車両が目撃。両者の関係は思ったよりも「近い」?

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結論:最大公約数の「退屈な車」にサヨナラ。これからのアウディはもっと面白くなる

自動車メーカーにとって、1つのプラットフォームとデザインで世界中で大量に売る「グローバルカー戦略」は今まで最強の正義ではありましたが、しかし、スマートフォンのようなハイテクさを求める中国と、伝統的な走りと操作感を愛する欧州・北米の溝は、もはや1台の車で埋められるものではありません。

アウディが「世界共通車は死んだ」と割り切ったことは一見するとコスト増のようにも思われ、しかし、地域特化の組織を作ることで開発スピードを劇的に高め、結果として『ヌヴォラーリ』や『コンセプトC』のような、ファンの心を震わせるエモーショナルなスポーツカーを素早く形にできる環境が整ったというのがアウディの現在地。

効率重視の「退屈な最大公約数」を捨て、尖った魅力で勝負に出るアウディの”次世代のクルマ作り”には大いに期待したいと思います。

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参照:CARSCOOPS

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