
| 今回ばかりは「売却しないと」現状を打開できないかもしれない |
とにかく「現金が欲しい」のがいまのフォルクスワーゲンである
世界の自動車業界の頂点に立つフォルクスワーゲン(VW)グループにかつてない規模の激震が走っており、傘下のポルシェがハイパーカーブランド「ブガッティ・リマック」の全株式を売却して1998年以来続いていたブガッティとVWグループの歴史に終止符が打たれたばかりではありますが、これはほんの序章に過ぎなかったのかもしれません。
有力経済紙「フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)」が報じたところによると、VWグループは構造改革の資金を捻出するため、イタリアの至宝である二輪ブランド「ドゥカティ(Ducati)」の売却や、スーパーカーブランド「ランボルギーニ(Lamborghini)」の株式公開(新規上場:IPO)」の圧力を外部アドバイザーから受けていることが明らかになっており、つまり先日報じられた「ウワサ」の真実味がいっそう増すことに。
このセンセーショナルな報道に対し、VWグループの広報担当者が示した回答は「完全否定もしないが、肯定もしない」という極めて異例のもので、これがさらなる憶測と話題を呼んでいるわけですね。

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この記事の要約(30秒チェック)
- ドゥカティ売却&ランボルギーニ上場の噂: 構造改革資金の調達を巡り、アドバイザー陣がグループ内の「至宝ブランド」の切り離しや上場を提案
- VWグループは「否定せず」: 公式コメントを求めた海外メディアに対し、VW側は噂を真っ向から否定せず、「全ブランドの深刻な変革と再アライアンス(再構築)が必要」と含みを持たせた
- ビジネスモデルの根本的崩壊: ドイツで開発し、欧州で製造して世界へ輸出するという「数十年の成功パターン」が、中国勢の台頭やEVシフトで完全に通用しなくなった
- 10万人削減&4工場閉鎖の衝撃: 独メディアは、VWグループが世界で最大10万人規模の人員削減と、ドイツ国内を含む4工場の閉鎖という自動車業界史上最大のリストラを検討中と報じる
「ドイツ開発・欧州製造・世界へ輸出」のビジネスモデルが完全に破綻
海外の二輪専門メディア「RideApart」が、フィナンシャル・タイムズ紙の報道を受けてVWグループに直接取材を敢行したところ、返ってきたのは驚くほど広範かつ深刻な声明で、VWグループの広報担当者は、ドゥカティの売却について個別に否定することを避け、代わりにこう答えています。
「すべてのブランドおよび子会社は、根本的な変革(transform profoundly)を遂げなければならない。現在、会社全体の再アライアンス(再構築)を進めているところだ」
つまるところ売却とIPOに関しては「否定せず」、さらにVW側はこれまでの「伝統的なビジネスモデルがもはや機能していない」と言及することに。

具体的には、長年彼らのドル箱だった「ドイツで設計・開発し、コストの高いヨーロッパで生産して、それを中国をはじめとする海外市場へ輸出する」という仕組みそのものが現在の国際情勢や関税、そして安価で強力な中国製EV(BYDなど)の台頭によって立ち行かなくなったことを認めています。
この危機感はグループ全体で共有されており、元ポルシェCEOであり現在はVWグループ全体のトップを務めるオリバー・ブルーメ氏も、以前から「数十年にわたり我々を支えてきたビジネスモデルは、現在の形態ではもはや機能しない」と社内に警鐘を鳴らし続けていたことでも知られます(よってポルシェは本国以外では初となる開発拠点を中国に設置している)。
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フォルクスワーゲングループが直面する再編・リストラ計画一覧
現在のVWグループは、生き残りのために「資産の切り売り」と「容赦ないダウンサイジング(規模縮小)」を同時並行で進めていて、その具体的な動きと業界の歴史を塗り替えるレベルのリストラ案を整理してみると以下の通りとなっています。
| 再編・コスト削減項目 | 現在のステータスと驚愕のデータ |
| ブガッティ(Bugatti) | 【完了】 ポルシェが保有していたブガッティ・リマックの株式を売却。VWグループの手から完全に離れる。 |
| ドゥカティ(Ducati) | 【売却検討中】 フィナンシャル・タイムズ紙が報道。VW側は否定せず。アウディ傘下の超優良ブランドだが、資金調達の標的に。 |
| ランボルギーニ(Lamborghini) | 【新規上場(IPO)の圧力】 完全子会社から株式を一般公開する形へ移行させ、VW(アウディ)が支配権を維持したまま、市場から巨額の資本を吸い上げる計画。 |
| エバーレンス(Everllence) | 【株式売却】 船舶用ディーゼルエンジン事業(旧MAN Energy Solutions)の過半数株式を売却。約74億ユーロ(約1.2兆円)の資金を確保。 |
| CARIAD ✕ ボッシュの提携 | 【解消の噂】 独ビルド紙報道。15億ユーロ(約2,400億円)を投じた自動運転ソフトウェア開発の提携が打ち切られる可能性。 |
| 人員削減・工場閉鎖の規模 | 独マネージャー・マジャツィン誌によると、最大10万人の人員削減およびドイツ国内の4工場の閉鎖が検討中。 |

なぜランボルギーニは「売却」ではなく「上場」なのか?
ここで興味深いのは、ドゥカティには「売却」の噂が出る一方、好調なランボルギーニには「上場(IPO)」という手段が提案されている点です。
これは、同じVWグループ内の「ポルシェ」が2022年に株式上場して大成功を収めたスキームを踏襲しようとしているもので、ランボルギーニは現在、PHEV(プラグインハイブリッド)の「ウルスSE」や新型スーパーカー「レヴエルト」が世界中でバックオーダーを抱える”超ドル箱”ブランドです。
よって完全に手放す(売却する)のは長期的な利益獲得を考えた場合に”惜しい”ため、株式の一部だけを市場に売り出して世界中の投資家から現金を集めつつ、経営権はVWグループ(アウディ)が握り続け、上場後も利益を確保し続けるという、極めて現実的な「錬金術」を狙っているというわけですね。
「10万人リストラ」が意味する「欧州自動車産業の冬」
今回のVWの動きは単に「1つの自動車メーカーの不況」というレベルを超え、ヨーロッパ全体の経済と政治を揺るがす大事件に発展しつつあり・・・。
- GMの破産を超える、歴史上最大の構造改革:もし本当に10万人の削減が実行されれば、2009年にアメリカのゼネラルモーターズ(GM)が連邦破産法を適用された際のリストラ規模(約7.4万人)をはるかに凌駕する、世界の自動車業界の歴史上最大の大手術に
- なぜここまで追い詰められたのか?:最大の原因は「中国市場での大敗」と「EVコストの圧倒的な差」で、これまでVWの利益の大部分を稼ぎ出していた中国市場において、現地メーカー(BYDやジーリーなど)の安くて高品質なEVにシェアを急速に奪われてしまうことに。マッキンゼーの調査によると、中国メーカーは欧州メーカーよりも20%〜50%も安くEVを製造できるコスト競争力を持っており、3万ユーロの車を作る際、中国勢とは最初から6,000ユーロ(約100万円)ものコスト差があり、これがVWの利益率をわずか2.8%にまで押し下げる要因となっている
- 強力な「労働組合」との全面戦争へ:ドイツには、労働組合や本社のあるニーダーザクセン州(VWの第2位株主)の権限を強く守る「フォルクスワーゲン法」という法律があり、これまで経営陣による安易な工場閉鎖は法律と組合によって阻止されてきたものの、株価が過去16年間での最安値水準に落ち込む現在、オリバー・ブルーメCEOは組合との全面衝突を覚悟で子会社の分社化などによる「法に触れてまでの改革」に踏み切らざるを得ない状況に

結論
フォルクスワーゲンが放った「すべてのブランドが深刻な変革を遂げなければならない」という言葉は、かつて数の力と多様なブランドポートフォリオで世界を制覇した「巨大帝国」のビジネスモデルが完全に終わりを迎えたことを明確に示しており、ブガッティに続き、ドゥカティやランボルギーニといった、クルマやバイク好きの憧れの象徴であるプレミアムブランドたちが「本社(親会社)の延命とデジタル投資の原資」を作るための交渉材料としてテーブルに乗せられているというのが2026年現在の冷徹な現実です。
しかしこれは裏を返せば、VWがただ縮小して消え去るのではなく、巨体ゆえに遅れていた意思決定をスマートにし、アジアの新興勢力に対抗するための「本気の覚悟」を決めたということであるとも受け取ることができ、この嵐の先にどんな新しいフォルクスワーゲングループの姿が待っているのか、7月9日に予定されている監査役会での提案を含め、今後の動向には注視していく必要がある、というのが現在の状況です。
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参照:Motor1











