
| ポルシェ・フェラーリ化で狙う「超・高収益」への大転換 |
ポルシェ、フェラーリそれぞれの「いいところ取り」へ
度重なる経営危機や財政難を乗り越えてきた英国の至宝、アストンマーティン。
彼らが生き残りをかけ、ブランドのあり方を根本から変える壮大な「再建計画」を進めていることが明らかになり、その仕掛け人はベントレーのCEOからアストンマーティンの最高経営責任者へと電撃移籍したエイドリアン・ホールマーク氏。
彼が掲げるのは、既存のモデルをただ量産するのではなく、ポルシェやフェラーリのように「膨大なバリエーション、限定車、そして高利益なオプション」を組み合わせ、顧客に世界で唯一の1台を売るという超高収益ビジネスモデルです。
ここではアストンマーティンがこれまでの「量産拡大」の失敗をどう総括し、どのような具体策で超高級車市場の覇権を奪い返そうとしているのか、その内容を見てみましょう。
本記事の要約
- 従来の量産戦略からの決別: 年間1万台の販売目標を約半減(6,500〜7,000台)へと大幅下方修正し、コストベースを30%削減して「希少価値」を高める戦略へシフト。
- ポルシェ流の「多品種展開」: ポルシェ911が20種以上の派生モデルを展開する手法に倣い、アストンも年間7〜8車種の限定・派生モデルを投入予定。
- 199種類の「高利益オプション」追加: 競合他社を分析し、チタンマフラーやカーボンホイールなど、これまでアストンに欠けていた超高収益なカスタマイズメニューを大量に導入。
- ビスポーク部門「Q」の強化: 前職のベントレーで高級カスタマイズ部門「マリナー」を成功させ黒字化した経験を活かし、アストンの特注部門「Q」を収益の柱へ育てる。

詳細:「ラグジュアリーの二日酔い」からの脱却と大減産への舵切り
2年前、エイドリアン・ホールマーク氏がアストンマーティンのCEOに就任した当時、ブランドは深刻な過剰供給の罠に陥っており、前経営陣が設定した「年間1万台」という野心的な目標は、コロナ禍以降のラグジュアリー市場の冷え込みと完全に矛盾することに。
ホールマーク氏はこれを「パーティーが終わって明かりがついた瞬間に、アストンマーティンが主役に躍り出ようとしたようなものだ。私たちはラグジュアリー市場の『二日酔いフェーズ』に全モデルを投入してしまった」と表現しています。
そこで彼は、即座に26ものコスト削減・利益改善プログラムを立ち上げ、以下の抜本的改革を断行することになり・・・。
- 生産台数の大幅カット: 年間1万台の目標を exclusivity(独占性・希少価値)を守るための約6,500〜7,000台へと削減。
- コストの30%削減: 固定費を徹底的に見直し、スリムで打たれ強い経営体質へ移行。
「需要が供給をわずかに上回る状態を作る」というフェラーリが何十年も実践してきた黄金律を、アストンマーティンもついに本格導入するというわけですね。
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車種概要、性能・デザイン・スペックなどの特徴:アストンマーティン新戦略の3つの柱
アストンマーティンが利益率を高めるために実行する「ポルシェ・フェラーリ化」の具体策は主に3つのアプローチで構成されており・・・。
1. 派生モデル(デリバティブ)と限定車の大量投入
ホールマーク氏によれば、彼が就任した当初、新型ヴァンテージには5年間でわずか2種類のバージョンしか計画されておらず、一方でポルシェは911だけで「カレラ(ベースモデル)」から「GT3 RS」まで21種類ものバリエーションを展開し、カイエンでも13種類を揃えています。
アストンマーティンは現在、ヴァキッシュ(クーペ/ヴォランテ)、DB12、DBX707といった強力なコアモデルを持っていますが、今後は毎年7〜8車種の限定モデルや派生モデルを投入していく計画だといい、既存モデルのパーツの9割以上を共有する派生車(デリバティブ)は開発の複雑さを最小限に抑えつつ、高いプレミアム価格を上乗せできる最高の収益源となることが見込まれています。

2. 「199種類」に及ぶ未開拓オプションの解放
競合であるフェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレンを徹底的にリサーチした結果、アストンマーティンにはライバルにあって自社にないオプションが「199種類」も存在することが明らかに。
チタン製のエキゾーストシステム、超軽量カーボンホイール、超ハイエンドのオーディオシステムなど、これらはどれも顧客が喜んで数100万円を支払い、かつ原価率が極めて低い「超高利益アイテム」です。
3. 特注部門「Q by Aston Martin」の爆発的進化
ホールマーク氏は前職のベントレー時代、ビスポーク(特注)部門である「マリナー」を大成功させ、ベントレーを長年の赤字から7年連続の黒字企業へと変貌させた実績を持っていて、アストンマーティンにおいても独自のカスタマイズ部門「Q by Aston Martin(キュー・バイ・アストンマーティン)」を同様のドル箱へと成長させる計画を持っている、と述べています。
アストンマーティン最新ラインナップと派生戦略の現状
| コアモデル | タイプ | 主なパワートレイン | 今後の派生展開の方向性 |
| Vantage(ヴァンテージ) | スポーツ | 4.0L V8 ツインターボ | トラック向けのハードコア仕様、MT(マニュアル)限定車の噂 |
| DB12 / DB12 S | スーパーツアラー | 4.0L V8 ツインターボ | 60周年記念モデル、オープン(Volante)、Qによる特別仕様 |
| Vanquish(ヴァンキッシュ) | フラッグシップGT | 5.2L V12 ツインターボ | 2035年までV12を死守、超希少限定車・ワンオフのベースへ |
| DBX707 | ラグジュアリーSUV | 4.0L V8 ツインターボ | Qによる限定エディション(AMR23等)、V12搭載噂のハイパーSUV |

エンスージアストへの朗報:PHEV開発を凍結しV12を死守
ホールマークCEOの英断により、アストンマーティンは重量増を招くプラグインハイブリッド(PHEV)開発プログラムの凍結を発表することとなっていますが、これは小規模メーカーにとって規制や性能面でのメリットが薄いと判断したため。
これにより、アストンマーティンの象徴である「ツインターボV12エンジン」は少なくとも2035年まで生き残ることが確定し、競合が電動化へ急ぐ中で強烈な差別化ポイントとなることが予想されています。※さらに「1万台以下」に販売台数を留めることにより、欧州でCO2排出量に関し「特例措置」を受けることができる
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なぜ「オプション」がスーパーカー企業を救うのか?
自動車業界においてポルシェが18.6%という驚異的な営業利益率を誇っている(誇っていた)のは車両の本体価格だけで稼いでいるからではなく、ベースモデルを比較的「手頃」な価格に設定しつつ、オーナーがコンフィギュレーター(仕様選択画面)を開いた瞬間、好みのボディカラー、シートのステッチ、カーボンパーツなどを追加していくうちに、気づけば車両価格の30%以上の高利益なオプションが上乗せされる仕組みが完璧に構築されているから。

フェラーリも同様に、購入総額の15〜20%がオプションや特注仕様で占められることが常となっており、しかしこれまでアストンマーティンでは、その美しいデザインや「007」に代表される圧倒的なブランドイメージを持ちながらも、顧客が「もっとお金を払って自分だけの1台にしたい」と思ったときの受け皿(オプションの選択肢や限定車の数)が圧倒的に不足していたのもまた事実。
結果として、台数を売らなければ利益が出ず、台数を売ればブランドの希少価値が下がるという悪循環に陥っていたというわけですね。
よって今回のホールマーク氏の戦略はアストンマーティンを「単なるラグジュアリーカー製造業」から、ポルシェやフェラーリ、そしてかつて彼自身が再建したベントレーのような「究極のパーソナライズ・ビジネス」へ昇華させるための「最も現実的かつ強力な処方箋と言えるもの」で今後の同社の再生には大きな期待がかかります。
結論
アストンマーティンの新しいサバイバルプランは、これまでの自動車業界の常識だった「規模の経済(たくさん作って安く売る)」とは真逆の「価値の最大化(少なく作って、密度の高い体験を売る)」へと舵を切るもの。
年間生産台数をあえて絞り込み、V12ガソリンエンジンの官能性を2035年まで維持しながら、199種類以上の新たなオプションとQ部門によるオーダーメイドの世界を提供する――。この戦略が計画通り12〜18ヶ月以内に軌道に乗れば、アストンマーティンは「何度も倒産を経験しながらも大富豪のパトロンの個人的な資金注入に依存する、倒産寸前の英国ブランド」という数十年来のイメージを完全に払拭することになりそうです。

単に絶滅を免れるだけでなく、フェラーリやポルシェと真に肩を並べる「持続可能で超高収益なドリームカー・マニファクチュール」へ。
アストンマーティンの第二章は、かつてないほど解像度の高い、現実的なロードマップとともに幕を開けているというのが今の状況であり、これからの「復活」に期待せずにはいられない、といったところでもありますね。
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参照:Auto Express











