| たしかにその姿は「芸術品」のように美しい |
歴史的価値、その希少性を考慮すると「もっと高額で」落札されるんじゃないかとも考えている
さて、シボレー・コルベットはC8世代にて「ついに」フロントエンジンからミドシップへと移行していますが、実はコルベット誕生初期にも「ミドシップ化」の話が存在したということも知られています。
ただしコストや製造難易度の問題からミドシップ化はずっと見送られ続け、実際にミドシップ化がなされるまでには60年もの歳月を要しているわけですね。
そして当時の「コルベットのミドシップ化」を推進したのはシボレーのエンジニア、ゾラ・アルカス=ダントフで、今回は「ゾラ・アルカス=ダントフによって当時1台のみが製造された、コルベットSSプロジェクトXP-64」が競売に登場するとして大きな話題を呼んでいます。
-
コルベットのミドシップ化に要したのは60年。途中で「ロータリエンジン搭載」モデル、「デロリアン」の元祖とも言えるモデルもあった!
| ここまで多くのプロトタイプが作られながらも「60年」かかったのは実に不思議 | さて、シボレーはミドシップレイアウトを採用した新型C8コルベット・スティングレイを発表しましたが、この「ミドシップ化 ...
続きを見る
コルベットSSプロジェクトXP-64の予想落札価格は500万ドルから600万ドル
この「コルベットSSプロジェクトXP-64」の物語はシボレーのエンジニアであるゾラ・アルカス=ダントフの名前とともに始まりますが、当時彼は「シボレーの新しいレースカーを開発せよ」という任務を受け、しかし耐久レースのドライバーとして成功を収めたという経験から、単に他の誰かが作った既存のシボレー車をベースにするのではなく、高性能な車をゼロから作り上げる方法を選びます。
当時、シボレーのブランドホルダーであるゼネラルモータースは「ジャガーEタイプにシボレーのエンジンを搭載する」という案を検討していたとされ、しかしゾラ・アルカス=ダントフはこの計画を受け入れることができず、シボレーのエンジニアリングセンターの隅で”ひっそりと”新たなレースカーの開発に取り組み始め、そして完成したのがこのコルベットSSプロジェクトXP-64。
コルベットSSプロジェクトXP-64はクロムモリブデン鋼製のパイプを使用した軽量なチューブラーフレームにて構成され、ボディ外板はマグネシウム製となりますが、空力性能を最大化するためにできる限り流線型を目指してデザインされています。
搭載されるエンジンはV8エンジン(283キュービックインチ)、そしてハイパフォーマンスカムシャフト、アルミニウム製シリンダーヘッド、燃料噴射装置を備えており、出力は約300馬力を誇ったというので、当時としては「時代に先駆けた」革新的な車であったのは間違いなさそう。※このエンジンに組み合わせられるのは4速マニュアルトランスミッション
コルベットSSプロジェクトXP-64の乾燥重量はわずか839kgにとどまり、これは量産型コルベットより約453kg軽量で、完成から5ヶ月が経過した後にテストを開始し、1957年のセブリング12時間耐久レースにて初めてモータースポーツの世界へと登場しています。
XP-64は即座に競技においてその速さを証明したものの、レース中に信頼性の問題に直面し、マグネシウム製ボディが熱を伝えることでキャビンを”耐えられないほど”熱くしてしまい、そのためレース中にリタイアを選択することになったものの、シボレーはその後XP-64を改良してル・マン24時間耐久レースに挑戦する計画を立てていたとされ、しかし自動車メーカー協会(AMA)がセブリング12時間耐久レース後にモータースポーツ活動の支援を停止することを決定し、XP-64プロジェクトはここで終わりを迎えることに。
コルベットSSプロジェクトXP-64のモータースポーツにおけるキャリアは非常に短く、1967年になるとゾラ・アルカス=ダントフはこのクルマをインディアナポリス・モーター・スピードウェイ博物館へと寄贈し、それ以来この博物館における”スター展示車両”としてずっと保管されてきたそうですが、ときには博物館を離れて数多くの歴史的なレースイベントに出展され、1950年代と同じ美しさを今も保っている、と説明されています(たしかにそのコンディションはすばらしく、まるでいま製造工場から出てきたかのようである)。
そして今、セブリングでの走行から数十年が経ち、このコルベットSSプロジェクトXP-64は新たなオーナーを求めており、オークション開催元であるRMサザビーズによると予想落札価格は500万ドル(現在の為替レートにて約7億8600万円)〜600万ドル(約9億4300万円)というエスティメイトが出されており、しかし前例がない車両であるために予測が難しく、さらにはアメリカにおけるコルベット人気を考慮すると「この価格を遥かに超える」可能性も。
そしてこのコルベットSSプロジェクトXP-64は「コルベットのミドシップ化への生き証人」でもあり、シボレーの最も優れたデザインの一つとしても知られているだけに予想落札価格を大きく超えて落札されるんじゃないかとも推測しています。
合わせて読みたい、シボレー・コルベット関連投稿
-
これまで門外不出!幻の「ミドシップコルベット」試作車、GS IIBがはじめて公の場にて展示されることに
| コルベットの歴史上、誕生から間もなく、60年間もミドシップ化を追求してきた | これまでテキサスのペトロリアム・ミュージアムの外に出たことがなかった「シボレー・コルベットGS IIB(1964年製 ...
続きを見る
-
【動画】シボレーは60年前からコルベットのミドシップ化を検討していた!エンジニアたちが製作しては却下されてきた、幻の「ミドシップコルベット」たち
| エンジニアたちの「コルベットを速くしたい」という情熱には頭が下がる | 発表が近づく新型シボレー・コルベット(C8)。すでにプロトタイプの画像が公開されたり、一部イベントに登場するなど盛り上がって ...
続きを見る
-
新型コルベットZR1のあちこちには「イースターエッグ」が仕掛けられていた。ウインドウには今年退職するコルベットの開発チーフの肖像が印刷されている
| コルベットの長い歴史の中で、開発を主導する立場にある人物はわずか5人しか存在しない | そしてこの肖像がプリントされるのは2025年モデルのみである さて、シボレーはつい先日1,064馬力を発生す ...
続きを見る
参照:RM Sotheby's