チップ不足にてVWの生産が1958年の水準まで逆戻り！同社最大の工場では年産100万台が30万台へ減産を強いられるも、テスラはチップ不足に適切に対処して利益記録を更新

｜　チップ不足によって、自動車業界全体では770万台もの減産が生じているらしい　｜

まさかここまでの影響があるとは思わなかったが、イーロン・マスクは正確にこの危機を予測していたようだ

さて、自動車メーカーに対して深刻な影響を与えているとされる「チップ不足」ですが、最大手の自動車メーカー、フォルクスワーゲンが運営する”世界最大の自動車工場”が、チップ供給関連の問題で急減な生産台数の減少に見舞われている、とのこと。

フォルクスワーゲン社の関係者がロイターに語ったところによると、このウォルフスブルク工場の今年の生産台数はこれまでのところわずか30万台で、1958年以来の最低値となった模様。

参考までに、過去10年間の平均生産台数は年間78万台であり、コロナウイルスのパンデミック前には年間100万台の生産を目指していたとされるので、この減少幅は「ちょっとやそっとではない」ということになりますね。

この状況は最低でも2022年までは続きそう

ゴルフやティグアンなどを生産している同工場では、現在半導体チップの不足などのサプライチェーン上の問題により車両の生産が制限されており、2020年には、パンデミックとそれに伴うチップ不足が重なって50万台しか生産できなかったとされますが、今年はこれに届くことなく終わるのは間違いなさそう。

フォルクスワーゲンは以前、半導体チップの不足によって数十万台規模の生産不足が発生すると予想していて、もちろんこの問題はフォルクスワーゲンだけではなく、ほとんどすべてのメーカーに影響を与えることとなっており、メルセデス・ベンツは「この解消には2年ほどかかる」、アウディは「現状はパーフェクトストーム状態だ」とも。

実際のところ、半導体チップの不足により、今年の自動車生産台数は770万台減少し、産業界には約2,100億ドルの損失が発生すると推定されていますが、自動車メーカーはもちろん、各国政府もこの問題の解決に力を入れていて、しかし最も楽観的な観測をもってしても2022年までは半導体の供給に問題が生じると予想されています。

米国では、サプライチェーン問題が自動車メーカーの新車製造能力に影響を与え続けているため、ディーラーの在庫はかなり少なくなっているといい、結果的に車両価格の高騰を招いているようですが（アメリカは需要と供給との関係で価格が変動しやすい）、現在価格の高さと選択肢（在庫）の少なさが相まって、米国の多くの購買者は新車購入の計画を（供給が通常のレベルに戻るまで）延期しているといい、自動車メーカーにとってはまだまだ苦しい状況が続くことになるものと思われます。

一方、テスラはチップ不足の影響をあまり受けていない

フォルクスワーゲンのようにチップ不足の影響を大きく受ける自動車メーカーがある一方、テスラは（この半導体危機が続いているにもかかわらず）2021年第3四半期に16億2,000万ドルの利益を上げ、自社の四半期利益記録を更新。

この第3四半期の数字は、同社が今年の第2四半期に記録した11億4,000万ドルを上回り、2020年の第3四半期に得た3億3,100万ドルの利益の約5倍に相当します。

テスラの利益発表は、今月初めに発表された「記録的な24万1,300台のEVを納車した」という公式コメントに続いて行われたもので、昨年の同時期に納車した自動車やSUVの台数と比べて72%増という数字。

今年の販売台数は63万台に達していて、2020年までの累計販売台数である49万9,550台をすでに大きく超えており、さらに今年はまだ3ヵ月も残っています（このままだと80万台くらいは行きそうだ）。

この記録的な納車台数は、2021年第3四半期に半導体不足の影響もあって販売の減速を報告した米国のGMやフォードとは対照的で、いったいどうやってチップを確保したのかはちょっと不明（このチップ危機に関してはライバル企業よりも迅速に対応し、チップを別のサプライヤーから調達したり、車両コードを変更したりするなどの回避策を講じたと言われている）。

ただ、テスラとてチップ危機の影響をまったく受けていないわけではなく、「半導体の供給不足、港湾の混雑、計画停電など、さまざまな問題が、工場をフル稼働させる能力に影響を与えている」と株主向けの声明で述べており、テスラの財務報告書には、他の自動車メーカーにクレジットを販売して2億7,900万ドルの利益を得たことや、第3四半期の売上高は増加したものの、テスラ車の平均販売価格は実際には6％低下したことなど、興味深い情報が2つ含まれているようですね。

参照：Reuters, Automotive News