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テスラはパンドラの箱を開けてしまったのか?テスラの値下げによって中国の自動車市場が大混乱をきたし多くのメーカーが淘汰される可能性。現地団体も懸念を示す

テスラ

| まさかテスラの値下げがこれほどまでのインパクトを与えるとは |

そのため欧米メーカーのEVでは「中国で販売される車両価格のほうが本国よりもずっと安い」という逆転現象が発生

さて、テスラは昨年末から度重なる値下げを行っていますが、それが「多くの自動車メーカーを廃業に追い込むおそれがある」という報道。

昨年末、テスラは「生産能力が市場の需要を上回っている」、つまりもう人気がなくなったのではないかと報じられ、それに前後したイーロン・マスクCEOのツイッター買収劇も関連し、株価が大きく下がる曲面があったわけですね。

ただしイーロン・マスクCEOは「需要減退説」をただちに否定し、続いて行ったのが大幅値下げであり、これによってテスラの受注は「いまだかつてないレベル」に達した、とも言われています。

テスラ・モデルY
中国にて「テスラは予想より遥かに売れてない。予定の1/2〜1/3以下にとどまる」との報道。ただしテスラはこれを即座に否定

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テスラは中国の自動車市場を一変させる可能性も

そして今回示された懸念が「テスラは中国の自動車市場を一変させてしまう可能性がある」ということ。

御存知の通り、現在中国は世界最大の自動車市場となっていますが、市場黎明期はフォルクスワーゲンやメルセデス・ベンツ、GM、BMWといった欧米の自動車メーカー、そしてトヨタやホンダのような日本の自動車メーカーが現地との合弁企業によって設立した会社によって開拓されています。

ただしその後、世界の自動車業界全体が「電動化」へとシフトするにあたり、中国では家電やIT機器、バッテリー製造などエレクトリック関連技術をバックボーンに持つ会社が続々と電気自動車業界へと参入してきたわけですね。

テスラ・モデルY

米経済誌「中国のEVバブルはもう弾けるところまで来ている」。なんと現在中国には486ものEVメーカーが存在している

どう考えても1国に486モノメーカーは多すぎる。明らかに「供給過剰」になるのは火を見るより明らか 現在中国は「エレクトリックカーバブル」ではありますが、ブルームバーグによると「そのバブルももうじき弾け ...

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そういった中国のメーカーは「中国の市場の嗜好を知り尽くしている」「安価な労働力によって低コストなクルマを作ることができる」ために日米欧の自動車メーカーに対して高い競争力を発揮することになり、そのため現在中国市場では「中国の自動車メーカーのシェア」が年々高まってきているわけですが、そのぶん中国の自動車メーカーどうしの競争も熾烈になっており、現時点でも利益を出すことができているのはBYDのみだという報道も。

中国
好調ばかりが報じられる中国のEVメーカーだが、実は1社を除いて軒並み巨額の赤字を記録していた!そのうち倒産ラッシュとなる気配

| 中国では「後先考えず」とにかく売りまくるというビジネススタイルも珍しくはない | 商品力よりも、その経営戦略が業績を大きく左右 さて、現在中国では様々な優遇政策に引っ張られる形で電気自動車の販売が ...

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テスラは開けてはならないパンドラの箱を開けてしまった?

そこへきてテスラが行った値下げが中国の自動車業界を大きく圧迫しているとされ、中国におけるテスラ車の価格は昨年末に比較して最大で(モデルにより)14%下がっており、米国や欧州で販売されるテスラ車の価格を50%下回る例もあるもよう(つまり、テスラ車をもっとも安価に購入できるのは中国ということになる)。

テスラ
テスラがアメリカでも「値下げ後に爆売れ」!多くのテスラの店舗が過去最高の受注を記録との報道、他社は悲鳴か

| 他社も値下げを行いたいところだろうが、テスラを超える値下げを行うことは難しく、いたずらに値下げをすると利益を失うだけになるのかも | テスラはもともと「アメリカで最も安価なEVを製造する」というヴ ...

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イーロン・マスクCEOは以前から「最も安いEVを提供することを目指す」とコメントし、「価格がモノを言う」と発言していますが、実際に中国ではテスラの値下げによって多くのEVが売れなくなったと見え、小鵬汽車(Xpeng)や蔚来汽車(NIO)が値下げに踏み切ったほか、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、フォードも相次いでEVを値下げしており、現在は連鎖反応が拡大しているといった状況です。

中国の新興EVメーカー、Xpeng(シャオペン)が驚異の成長を見せ、ついに20万台目を生産。10万台目から数えてわずか8ヶ月後に達成

テスラに続け!中国の大手EVメーカー、シャオペン(Xpeng)が10%強の大幅値下げに踏み切る!「インテリジェントな当社のEVを多くの人に」
テスラに続け!中国の大手EVメーカー、シャオペン(Xpeng)が10%強の大幅値下げに踏み切る!「インテリジェントな当社のEVを多くの人に」

| 値下げ幅はテスラとほぼ同じ、1月初旬に失った販売をこれで取り返すことができるか | 需要が減っているのはテスラのみではなく、多くのEVメーカーにとってもそれは同じであるようだ さて、テスラは日本、 ...

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ただ、これら3社については、テスラの値下げによって直接販売を食われたわけではなく、もともと割高だったことから中国市場で競争力を発揮できておらず、しかしテスラの値下げによる「爆売れっぷり」を見て、やはり”価格戦略が重要”だと判断したのかもしれません。

メルセデス・ベンツ
メルセデス・ベンツのEV、EQEとEQSが中国で絶望的に売れず、それぞれ100万円と470万円値下げ。もはや中国国内では「中国メーカーのEV」に歯が立たない

| 欧米の自動車メーカーはずっとテスラをベンチマークとしてきたが、それがそもそもの間違いだったのかも | しかし誰も中国の自動車メーカーがここまで伸びるとは予想できなかっただろう さて、先日はテスラが ...

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そして値下げの幅はけして小さくはなく、たとえばフォード・マスタング・マッハEだと米国でのマッハEの価格よりも「33%くらい安い」という驚きの現象が発生しており、多くのメーカーにてこういった「本国価格と中国価格との逆転現象」が起きているようですね(テスラの場合は中国現地で生産しているのでこの状況の理解ができるが、フォード・マスタング・マッハEはアメリカ生産=中国では輸入車だと思われるので、フォードはかなり無理しているのだと思われる)。

マスタング・マッハE

現在の中国国内のEV市場について、コンサルティング会社であるJSCオートモーティブのヨッヘン・シーベルト氏は「テスラの値下げによって、中国市場は大混乱に突入した」と語っているほか、中国自動車業界(CAMM)では「値下げ競争は在庫増加を招くために長期的な解決策になりえず、健全な業界に発展にならない」とコメントしており、こういった発言を見るにあたり、中国では相当なカオス状態となっているのかもしれませんね。

なお、EVは非常に大きな先行投資が要求され、その投資を回収するには非常に多くの台数を販売せねばならず(トヨタのEV専用プラットフォーム、E-TNGAのみでも200万台売らないと開発費用のモトを取れないといい、さらにはバッテリーやインバーター、制御プログラムの開発コストも吸収する必要がある)、しかしテスラ以外のEVメーカー、既存自動車メーカーはそのレベルに達するまでEVを販売していないため、今の時点での値下げは赤字を量産するだけ、ということを意味します。

ただしテスラはまだ誰も手を付けていないときにEVの開発と販売を(バカにされながら)行い、しかし他社に先駆けることによって現在のポジションを築いているので、その先行者利益をもって戦争を仕掛けることはテスラの権利であり、ぼくとしてはこれを邪魔するほうが「健全ではない」とも考えています。

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参照:Bloomberg

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