| 現代において、フェイクテールパイプは珍しいものではない |
アウディS6アバントのテールパイプが「フェイク」だと話題に。
これはユーチューバー、カースロットル氏が公開したものですが(同氏は以前にもフェイクエキゾーストパイプに関する動画を公開している)、アウディS6アバントのテールパイプの内側には「フタ」があり、そもそも貫通していないようですね。
そして、本当のエキゾーストパイプはどこにあるのか?ということですが、こんな感じで地面に向けて排ガスを放出するという構造を採用しています。
ドイツの自動車メーカーは大きな矛盾を抱えている
なお、これは排ガスが歩行者に与える被害を最小限にすることを目的としているのだと思われ、とくにメジャーメーカーほどこういった「下向きエキゾーストパイプ」を採用する傾向にあるようですね。
であれば別に「フェイクのエキゾーストパイプを装着する必要はないのでは」と思いますが、欧州では「ハイパフォーマンスモデルには目立つテールパイプを装着せねばならない」というステレオタイプ的な認識も根強いようで、そのためにこういった状況が生まれるようにも思います。
なお、新型フォルクスワーゲン・ゴルフ(ゴルフ8)のエキゾーストパイプも実際は「下向き」と思われるものの、リアバンパーには「テールパイプ風の」加飾が施されていますね。
こういったデザインはむしろクルマ好きな人々からすると「フェイク」ということで批判される可能性もありそうですが、それでもこういったデザインが用いられるということは、「フェイクであっても大きなテールパイプが欲しい」と考える人が多いのかも。
なお、同じく「フェイクサウンド」も最近の一つの流行であり、これも規制によって排気音を小さくせなばならず、それでは気分が出ないということで「車内に、ニセのエンジン/エキゾーストサウンドを流す」という手法が一般化しつつあります。
ほかにはこういった「フェイク」エキゾーストも
なお、フェイクエキゾーストといっても千差万別で、こちら(アウディRS6)は、細いエキゾーストパイプを、出口部分のテールパイプによって「太く」見せるもの。
ただしこれは実際に「テールパイプが貫通している」ぶん、納得はできますね。
こちらはレクサスIS-F。
「貫通」はしているものの、その奥がスカスカなので、地面が見えてしまっています。
こういった手法が一般化したのは、リアバンパー内にテールパイプがインテグレートされるデザインが一般化してからだと認識しています。
どういうことかというと、それまでのエキゾーストシステムは「テールパイプまで一体化」しているのが通常であったわけですね。
ただ、こうやってテールパイプがバンパーの中にインテグレートされてしまうと、テールパイプを「うまくバンパーから顔を出させる」のが難しくなります。
エキゾーストシステム自体は振動を伴うもので、ある程度それを許容するようにラバーブッシュを介して(タイコ部分から)揺れるようにマウントされるのが通常ですが、そうするとバンパーに設けられた穴と、テールパイプとの隙間が「ぴったりマッチ」しなくなったり、経年劣化で下がってきてバンパーとテールパイプとが接触したりするケースも。
そして、そういった問題を避けるために「テールパイプをバンパー側に取り付ける」という手法が誕生し、現代ではそれが(スポーツカー/ハイパフォーマンスカーにおいて)一般化してきたため、こういった「太いパイプの中に細いパイプが見える」という状況が発生することに。※従来の、エキゾーストパイプとテールパイプとが一体化した構造であれば、エキゾーストパイプが細くとも、出口をラッパ状に広げているため、貧弱な”本来の”パイプは見えにくい
そして、そういった状況がさらに発展して「もとのテールパイプは下に向け、そしてバンパー側にはテールパイプ”風”の加飾」が残ったのが最近の欧州車のデザインだと思われ、メルセデス・ベンツCクラスだとこんな感じで「非貫通」。
スーパーカーでも「テールパイプが飾り」なことに変わりはない
上述のように、テールパイプは視覚的にパフォーマンスを表現するための手段の一つとして用いられていますが、その意味ではスーパーカーもやはりテールパイプが誇張されていることに変わりはなく、たとえばランボルギーニ・ウラカンだとこんな感じで、テールパイプそのものはかなり太く、しかし内側の細い筒が実際のエキゾーストパイプ。
フェラーリ・カリフォルニアは縦2段のうち、上段がフェイクだとされていますね。
ただ、ぼくはテールパイプが「飾り」だろうと、貫通してそこから排気されればそれでいいとは考えています(むしろアクラポヴィッチのような、装飾的なテールパイプは大歓迎。反面、貫通していないテールパイプには抵抗を覚える)。
ちなみに992世代のポルシェ911のテールパイプも「太く見せるための飾り」ですが、これは”本来の細いテールパイプ”が一見してわからないように配慮されており、ポルシェもこういったところに気を使うようになったんだな、と驚かされますね。
参考までに、ランボルギーニ・ミウラのテールパイプはこんな感じ。
この時代のスポーツカーやスーパーカーのテールパイプは、エキゾーストパイプそのままの太さで、出口付近だけにポリッシュをかけていたり、ちょっとだけ膨らませたり、という処理が一般的であったようです。
ここから「マフラーカッター装着」「テールパイプ肥大化」「テールパイプをバンパーに内蔵」といった進化を遂げ、現在に至ったのでしょうね。
VIA:Car Throttle