| 自然光の下で実際のクルマを確認したり、実寸でクルマを見ることが非常に重要になるようだ |
さらにはクレイモデルだと「その場で修正」できる利便性も持ち合わせている
さて、現在の自動車の設計において「デジタル」は大きな役割を果たしており、これによって設計コストや工程が大幅に短縮されるようになったほか、遠隔地同士であってもそのデータの共有が容易に行えるようになっています(複数拠点での共同開発やデザインの修正が可能になった)。
もちろんデザインプロセスにおいてもデジタル技術の役割は大きく、3Dモデリングはもちろん、仮想空間にて(その構造に至るまで)完璧なデザインを行えるようになっているわけですね。
ただ、デジタル技術全盛といえど、いずれの自動車メーカーも粘土で実物大のクルマを作る「クレイモデル」を活用したデザインプロセスを省略する予定はなく、「それはいったいなぜなのか」について焦点を当てた動画が今回公開されることに。
「デジタル技術も結局は2Dにしかすぎない」
そしてその動画によると、デジタルを使用したデザイン過程にて、3Dモデリング画像を作成したとしても、「実際には3D空間に2Dの画像を投影しているに過ぎない」といい、自動車を製品化するには、どこかの段階で「実物大」そして直接目にすることができる「試作車」が必要だといいます。
この「直接目にする」というのはけっこう重要な要素だとされ、まずはデジタルワールドで格好良く見えたデザインであっても、実物として作ってみると「不格好に見える」こともあるのだそう。
そして自然光の下で車両を確認することも重要だといい、なぜならクルマは基本的に屋外にて使用されるから。
光が当たった際の陰影の付き方で、意図せぬ視覚的効果がもたらされることも考えられ、そういった不測の事態を防ぐためにもクレイモデルが役立っている、とのこと。
そのほか、クレイモデルは「修正が容易」な点も見逃せないといい、たとえば風洞実験を行っている際に、ちょっとした問題が発見されたとして、クレイモデルだと「削ったり、付け足したり」というその場での変更が可能だといいます。
これが仮にデジタルだったり、金属やカーボンファイバーを使用して作った試作車だったりすると「その場でチャチャっと修正」というわけにはゆかず、修正の都度風洞実験設備を借りたり、実験を中止したり、出直したりする必要が生じますが、クレイモデルだとそういった問題に直面することがないというわけですね(風洞実験設備につき、設置はもちろん運営に多大なコストがかかり、すべての自動車メーカーが所有しているわけではない。よって施設を持たないメーカーは、高額な使用料を支払って風洞実験設備を借りることになるが、借りる時間を延長したり、何度も出向くことは避けたい)。
クレイモデルを最初に作ったのは1930年代のゼネラル・モータース
なお、このクレイモデルを最初に作ったのは1930年代のゼネラルモータースだといい、実際にこれを考案したのはハーレー・アール氏という技術者だという記録が残ります。
これによって、デザイナーたちは実際にクルマを見たり触ったりすることができるようになり、ボディ表面の持つカーブや凹凸をよく理解できるようになった、とのこと(たしかに当時のアメ車は非常に複雑なつくりをもっていて、実物ナシにそれをイラストで理解することは難しい)。
現代のクレイモデルは主にCNC加工によって削り出されますが(職人が手で削る場合も少なくはない)、この方法だと早く、簡単で、かつ正確だとされており、金属や樹脂のパネルを組み合わせて試作車を作るよりはずっとシンプルで開発自体も早く進めることができるとされ、これがやはり「今でもクレイモデルを採用し続ける」理由なのだと紹介されています。
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ちなみにこのクレイモデルの「構造」について、まずは金属製のフレームがあり、その上に発泡スチロールを「巻き」、さらにその上に粘土を乗せるのだそう。
そして粘土の厚みはだいたい25~50ミリだといい、1台あたり「数千万円」のコストがかかるとされていますが、それでもクレイモデルの作成によって多くのプロセスを簡略化でき、かつお金も節約できるため、今後もずっと各自動車メーカーにて「クレイモデルが作り続けられる」ことになりそうですね。
なお、マツダも「現段階ではクレイモデルを使用したほうが、デジタル技術を用いたデザインよりも優れたものができる」とし、熟練クレイモデラーの技術を若手に伝えるという伝統の継承を重視していると自社のコンテンツでも述べています。
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