| EVのコストの40~60%がバッテリーパックによって占められ、これを損傷すると「全交換」に |
加えてEVは販売台数がまだ少なく、パーツ価格が割高だとも指摘されている
さて、現在「EV先進国」といっていい中国にて、EVの修理費用の高さが問題となっているもよう。
AFPではいくつかの例が挙げられていますが、ひとつは「ポールスター2を約618万円で購入し、しかし修理代金に1112万円を要求された」というもの。
ポールスターは現在ロータスやボルボの親会社である吉利汽車が展開するEVブランドですが(もともとはボルボの上位ブランドだった)、あるオーナーが事故にてフロントとシャシーを損傷してしまい、その際バッテリーパネルに凹みが生じることになり、バッテリーパックをすべて交換する必要が生じたために上述の「1112万円」をディーラーから請求されたのだそう。
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EVは今後「修理費用の高さ」が問題に
なお、EVに使用されるバッテリーパックは非常にデリケートであり、基本的に損傷すると「修理」が不可能なので、殆どの場合は「まるごと交換」ということに。
そしてバッテリーパックは周囲からの衝撃など様々な影響を受けないよう車体内部に密閉されているので交換自体も容易ではなく、かつバッテリーパックは車両コストの40~60%を占めると言われるためにこういった「とんでもない金額を請求」されることが発生するわけですね。※かつ、EVは重いのでそのあたりの街の修理工場のリフトでは対応できない場合もあり、専用の工具やノウハウも不足しているので、正規ディーラーにて修理を依頼するしかない
つまりこういった例は「法外」なものではなく、EVの修理においては誰もが直面しうる話ということになりますが、今後は保険会社もEVの保険料を引きあげてくる可能性も高く、しかし自動車メーカーもユーザーの負担を軽減すべく、部分的にバッテリーを、かつ容易に交換できるような構造を採用してくるのかもしれません。
ただし、こういった配慮を行ったとしても、購入時にそこまで考えてEVを買う例は少ないものと思われ(誰も事故の際の修理費用を考えてクルマを選ばないと思う)、よって自動車メーカーとしてはそこに大きなコストを割くことはできないとも考えられます。
参考までにですが、ぼくはBMW i3(EV)に乗っていたことがあるのですが、その際の保険料率がスーパーカーであるランボルギーニ・ウラカンと一部で変わらず、その際に「やはりEVの修理にはお金がかかるので保険料が高いのか・・・」と思ったことも。
その他にはこんな例も
AFPはこのポールスターの例に加えていくつかのサンプルも紹介しており、「577万円で購入したテスラをバックさせているときにリヤをぶつけてしまい、バックドアとテールランプを損傷し、その際の修理に412万円が必要になった」「NIOのクルマ(EV)がパンクし、タイヤとホイールとの修理費用で288万円を要求された」「BAIC(北京汽車)のEVを購入し、3年が経過してバッテリーを交換したら82万円がかかった(車両価格は144万とのことなので、かなり小さなEVだと思われる)」といったものも。
いくつかは通常の範囲を逸脱しているようにも思えますが、同メディアでは「EVの販売台数はまだ少ないため、パーツ自体も割高」「EVメーカー各社はシェア獲得のために新車販売にてマージンを削って販売しており、よって修理費用を安価に据え置き、さらに利益を削ることはできない」などの事情についても述べており、「今後、EVの普及とともに、修理費用も下がってゆく」との見方も示しています。
ただ、EV販売は今後さらに激化するのは間違いなく、となると修理やメンテナンスにてすこしでも利益を稼ごうとするメーカー/ディーラーが出てくることも否定はできず、これからEVを購入しようとした場合、そのメンテナンス費用や修理費用についても予めリサーチが必要なのかもしれません。
加えて、EVは(テスラを除くと)値落ちが著しく大きく、さらにはバッテリー容量が絶対的に減少(劣化)してゆくのに加え、どんどん性能が優れる新しいEVが登場することで相対的にも価値が下がり、数年乗って売ろうとしたときに「値がつかない」ことも十分に考えられ、よって購入時にはガソリン車とは異なる視点にて捉えねばならない、とも考えています。
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参照:AFP