| もちろんハイブリッドはトヨタが圧倒的にアドバンテージを持つ分野であり、その認知度も非常に高い |
一方、GMはじめいくつかの主要メーカーはEV重視政策のためハイブリッドに関しては無関心であった
さて、「自動車業界の将来はBEV(バッテリーEV、純電気自動車)のみ」と信じられて久しい状況ではありますが、ここ最近になって「どうもそうはならないようだ」というサインがいくつか登場しています。
今回ロイターがそういった状況の変化についてレポートしており、「ハイブリッドが今後しばらくの主流となり、米国では今後5年間でハイブリッド市場が3倍になる」との見方を示すことに。
なぜハイブリッドの販売が拡大するのか?
そこで気になるのが、なぜ「過渡的技術であり、すぐに時代遅れになる」と言われていたハイブリッドが主役となりうるのか。
まず、この背景にあるのはEV普及におけるハードルで、これまでの調査によって明らかになっているとおり「(BEVは)購入コストが高い、航続距離が限られている、充電時間が長い、充電ネットワークが限られている」といった理由にて消費者がその購入をためらっていることが明らかになっています。
ただ、ここ数年において、これらの理由のほとんどが大きく改善されたにもかかわらず、一部(あるいは大半)の消費者がいまだEVの購入に消極的であることも明確になっており、これが予想以上にEVの普及を遅らせていることの「理にかなった」説明だというわけですね。
そしてEVの普及が遅れているといえど、規制によって内燃機関オンリーのクルマの選択肢が少なくなり、かつガソリン高、環境意識の高まりによって「脱ガソリン車」が進むのは間違いなく、ここで選択肢として浮上するのがハイブリッド。
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実際のところ、EVの普及においてはアーリーアダプターの域を超えることが非常に難しく、S&P Global Mobilityによる試算では2023年のパワートレーン別試算は「ハイブリッド7%、EVが9%、ガソリンエンジン搭載車が80%」。※ここでいうハイブリッドはPHEVを指しているものと思われる
そして2028年の予測として見積もられるのが「ハイブリッド24%、バッテリー電気自動車37%、燃焼式ハイブリッド車とマイルドハイブリッド車と純粋な内燃機関搭載車で残りの39%」という数字です。
これを見るとたしかにハイブリッドは3倍となっていますが、BEVは「4倍以上」となっていることにも着目する必要があり、なんだかんだでEVも伸びると予想されているということに(ただ、予想されていたほどEVは伸びず、その伸び率を食ってしまうのがハイブリッドということになりそう)。
ハイブリッドにおいてはトヨタが優勢
現在、米国では60以上のハイブリッドモデルが販売されていますが、そのうちトヨタとレクサスが18車種、ヒュンダイとキアが7車種、フォードとリンカーンが6車種、ステランティスが3車種という内訳となっており、ゼネラルモーターズは今年後半に最初のハイブリッド車を発売する予定。
今どき”初”のハイブリッドというのはかなり意外ではあるものの、これは「ハイブリッドを重視せずにピュアエレクトリックカーに注力してきたから」であり、フォードもやはり、EVに注力してきたにもかかわらず、2028年までにハイブリッド車の販売台数を4倍にする意向を述べていますね。
さらにトヨタ、フォード、ステランティスは、より保守的なユーザー向けのEVに代わる選択肢として、今後5年間で「数十万台のハイブリッド車」を米国市場に投入する見込みであり、電動化されたガソリンエンジンを搭載するハイブリッド車両は厳しい排ガス規制に適合させることも容易だと言われています(よって、自動車メーカーとしては、よりリスクの低いハイブリッドへと移行することも考えられる)。
なお、トヨタはこれまで、ハイブリッド技術のパイオニアであり世界的リーダーであったにもかかわらず、EVへの移行が遅いと批判され続けてきましたが、トヨタはこの「消費者によるハイブリッド支持」というトレンドに最初に乗ることになるのは間違いなく、ここで時代の流れが思いがけずトヨタに傾いたということになるのかもしれません(トヨタはハイブリッドに注力する理由としては、希少希土類の不足を挙げていた)。
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参照:Reuters