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米国史上初、3大自動車メーカーに対する同時ストが二週目に突入。バイデン大統領も「大統領としてはじめて」これに参加、イーロン・マスクは「要求をのめば潰れる」

2023/09/29

米国史上初、3大自動車メーカーに対する同時ストが二週目に突入。バイデン大統領も「大統領としてはじめて」これに参加、イーロン・マスクは「要求をのめば潰れる」

| テスラは労働組合を持たないのでストライキとは無縁、しかしなぜかとばっちりを受ける |

もしビッグスリーが組合の要求をのめば、テスラの優位性がまた鮮明に

さて、現在ゼネラル・モーターズ、フォード、ステランティスに対する全米自動車労組(UAW)12,700人のストライキが2週目に突入していますが、今回のストライキは「UAWの88年の歴史で初めて」アメリカの3大自動車メーカー(ビッグスリー)に対して同時に行われたこと、そしてバイデン大統領が現職のアメリカ大統領としてはじめてストライキの現場を訪問したことでも大きな話題に。

ストライキに先駆け、UAWとビッグスリーの自動車メーカーは、2019年に締結された4年契約の延長をめぐって協議を続けてきたものの、”最大20%”という過去最高額の昇給が提案されたにもかかわらず、UAWは新契約への署名を拒否し、UAWのショーン・フェイン会長がビッグスリーに対する「正義の戦い」として宣戦布告を行ったのが今回のストライキの発端です。※UAWの賃上げ要求は当初40%で、現在は36%に引き下げられている

現在、アメリカでの自動車生産に大きな影響が出ることに

スタンド・アップ・ストライキと呼ばれるこのストライキは、ミシガン州、オハイオ州、ミズーリ州にあるフォード、ゼネラルモーターズ、ステランティスの特定の工場を対象として行われ、これによってフォード・ブロンコ、ジープ・ラングラー、シボレー・コロラドといった需要の高い車の生産に影響が出ていますが、ゼネラル・モーターズとステランティスは、ストライキ開始数分後に以下のとおり公式発表を行っており、まさに全面戦争といった局面に突入しています。

GMが歴史的な賃上げと製造公約を含む前例のない経済パッケージをテーブルに載せたにもかかわらず、UAW指導部の取った(ストライキという)行動には失望している。UAW従業員とその家族、そして我々の顧客にとって最善の利益となる公正な合意に達するための責任ある行動を、UAW指導部が拒否したのだ。

加えてフォードは「UAWの要求は同社の人件費を2倍以上に引き上げることになる」とコメントしており、「すでに(フォードの支払う賃金は)テスラやトヨタ、その他労働組合を持たない海外の自動車メーカーよりもかなり高い水準にある」とも。

これに対してUAWのショーン・フェイン会長は「まず第一に、人件費は車両コストの約5パーセントです。私たちの賃金を2倍にしても、車両価格を上げなくても、何十億もの利益を上げることができる」と主張し、双方の意見が真っ向から対立した状態が続いています。

イーロン・マスクCEO「UAWの要求をのめば、3社とも潰れるだろう」

そしてこの状況につき、テスラCEO、イーロン・マスク氏が自身の見解をXにて述べており、それによると「組合の要求は3社を倒産に追い込む確実な方法だ」。

つまり組合の要求をのむことで利益が圧迫され、ビッグスリーは厳しい競争を生き残ることができないだろうと述べているわけですが、テスラは(リビアンと同じく)組合を持たないので、今回の労使紛争については「蚊帳の外」にあるわけですね(よって通常通り工場が稼働している)。

ただしUAWのショーン・フェイン会長はテスラについても言及しており、最近放送されたCBSの番組”Face the Nation”の中で、イーロン・マスクCEOを「貪欲」だと非難(イーロン・マスクCEOにとっては、まさにとばっちりである)。

同じく番組に出演していたデビー・ディンゲル下院議員(民主党)も、EVメーカーが従業員に支払っている賃金に "大きな矛盾 "があるとしてやはりテスラを攻撃しており、「テスラは従業員への給与に大きな格差がある。この国のほとんどの人はテスラを買う余裕がない。多くの幹部でさえ、テスラを買う余裕がないのです」とコメントしていますが、本来無関係のテスラが話題に登ること自体、テスラの影響力を示す事例になっているとも言えそうです。

バイデン大統領もストライキを支持

そして上述の通り、今回のストライキは現職の大統領が訪問し、「参加」したというUAW史上初のストライキともなっていて、自動車業界を超えて政治的にも大きな意味を持つに至っています。

バイデン氏はストライキの最前線へと参加し、拡声器を使用して以下の通り激励していますが、これもまたストライキを長引かせている1つの要因となってしまい(UAWとしては”大統領の支持を得ている”と認識しているはずだ)、これによってビッグスリーはUAWの要求をある程度のまざるを得なくなり、となると収益性も下がってしまい、結果的に良い結果を産まないかもしれませんね。

UAWの皆さん、あなたたちは2008年とそれ以前に自動車業界を救ってくれたました。企業が苦境に陥ったとき、あなたがたは多くの犠牲を払い、多くのことを諦めました。しかし今、彼らは信じられないほどうまくいっているのです。それでどうですか? あなたがたも信じられないほどうまくやっているはずです。

なお、UAWの要求は「90日以内に36%の賃上げを行うこと」に加え、労働者のさまざまな階層の撤廃、(自分たちの仕事が奪われるので)通常賃金が低い臨時労働者の削減、確定給付年金の復活と、週32時間労働提案を含む労働者の休暇の増加というもので、これまでのところ、自動車メーカー側は4年間で20%の賃金引き上げと休暇の追加等を提案しているものの、まだまだ両者の主張には乖離が大きく、交渉が長引くこととなるのかもしれません。

参照:Elon Musk (X), Automotive News, FOX 2 Detroit, UAW, Detroit Free Press, CBS

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