
| このヒゲには立派な名前があり、存在にはその「理由」がある |
ただし存在する理由はがあったとしても、タイヤの性能や機能には影響を及ぼさない
さて、新車が納車されたときにいつも思うのが「タイヤについているヒゲはいったい何なのか」。
すべてのタイヤにこのヒゲあるわけではありませんが、一般に新しいタイヤにはこの「ヒゲ」がついており、しかしこれにはなにかの機能があるわけではなく、単なる「生産工程上の副産物」なのだそう。※ミシュランのタイヤにはこのヒゲが生えていないことが多い
このヒゲには「ベントスピュー(vent spews)」という名前がある
なお、このヒゲには「(機能がないにもかかわらず)ベントスピュー」という立派な名前があり、走行時こそなんらかの役目を果たすわけではないものの、製造時にはちゃんとした機能を果たす(正確に言えばその名残)ようですね。
まず、タイヤは製造過程で「グリーンタイヤ」と呼ばれる状態を経ることになるのですが、このグリーンタイヤとは、まだ未完成の状態、つまり未硬化で柔らかい生ゴムの状態のタイヤを指していいます。
この段階ではトレッド(接地面)の溝やサイドウォール(側面)のデザインやマーキングはまだ施されておらず、次に行われるのが「加硫(かりゅう)」と呼ばれる工程です。
加硫とは、ゴムに熱と圧力を加えて硬化させるプロセスであり、タイヤを完成品に仕上げる上で非常に重要だとされ、この工程では巨大な金型(モールド)の中にグリーンタイヤを入れ、内部から超高温の蒸気を含んだ加圧ブレダー(膨張袋)によってゴムを押し付けることに。
こうしてタイヤの表面にトレッドパターンや側面のロゴなどが(圧力によって金型に押し付けられ)刻まれ、タイヤとしての体をなすわけですね。
ここでポイントとなるのが「空気抜きのための穴」で、タイヤと金型の間に空気が閉じ込められると、均一な仕上がりにならず、タイヤに気泡やムラが発生し、完全な製品とならないのですが、そのため、金型には無数の「ベントホール(vent holes)」と呼ばれる小さな穴が開いており、そこから内部の空気を逃がす仕組みになっています。
ところが、このベントホールから空気と同時に柔らかい生ゴム(グリーンタイヤ)も押し出されてしまい、その結果として、加硫後のタイヤにはベントホールの跡として、細く短いゴムの毛(ベントスピュー)がたくさん付着するのだと説明されています。
ベントスピューは切り取っても問題ない
よって、タイヤから飛び出しているこの小さな「ヒゲ」は、タイヤの性能や安全性、耐久性、寿命には全く影響を与えず、さらにはウエアインジケーターのように摩耗を示すといったやくわりはなく、「そこにただ存在しているだけ」。
走行中に摩耗することで接地面(トレッド)のベントスピューはすぐに削れますが、サイドウォール(側面)のベントスピューはしばらく残ることが多く、そしてこれは「もし見た目が気になるのであれば」ハサミやカッターで切り落としてしまっても構わないのだそう(一方、放置していても何の問題もない)。※最近は最初からこのヒゲが切り取られているような跡があるタイヤも少なくはない
参考までに、サイドウォールにベントスピューが残っているからといって「新品タイヤ」とは限らず、例えば、長期間走行されずに保管されていた古いタイヤにも、ベントスピューが残っている場合があるわけですね。
そのため、タイヤの製造年を確認したい場合は、タイヤのサイドウォールに記載されている「製造年月日コード(date code)」をチェックするのが確実で、これによりタイヤの鮮度や安全性を確認することが可能となります(古いタイヤは硬化して性能を十分に発揮できないことがあり、その場合は安全性を損なってしまう)。
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参照:Jalopnik