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メルセデス・ベンツがソリッドステートバッテリー(全固体電池)搭載プロトタイプの公道テストをついに開始。一回の満充電あたり航続距離は約1,000km、EV新時代の到来か

メルセデス・ベンツがソリッドステートバッテリー(全固体電池)搭載プロトタイプの公道テストをついに開始。一回の満充電あたり航続距離は約1,000km、EV新時代の到来か
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| 現時点では多数のバッテリーメーカー、自動車メーカーがソリッドステートバッテリーの実用化に王手をかける |

ただし「実現」できたとしても価格や生産ボリュームなどの課題も残る

さて、直近の「今後の展開」プレゼンテーションにおいてはガソリンエンジンへの最注力を示したメルセデス・ベンツですが、EVについてもその開発ペースをスローダウンさせるわけではなく、今回「ソリッドステートバッテリー(全固体電池)を搭載したEQSベースの試作車」を公開し公道テストを正式に開始した、とアナウンス。

メルセデス・ベンツはこれまでソリッドステートバッテリーについて言及する機会があまりなく、現在の技術の延長線上にある「シリコンバッテリー」にひとまず重点をおいていたと認識しているので、今回の発表は同社のEV用バッテリー技術における最大の進展と言っていいのかもしれません。

ソリッドステートバッテリーを積んだメルセデス・ベンツEQSの試作車は「航続距離1,000km」

今回のメルセデス・ベンツEQSプロトタイプはメルセデス・ベンツと米国のバッテリースタートアップ企業「ファクトリアル・エナジー(Factorial Energy)」とによって開発され、両社によると、これは「グローバルOEMによる世界初の全固体電池搭載車」。

メルセデス・ベンツはプレスリリースにて、「このEQSの航続距離がWLTP基準で最大1,000kmに達する」と発表していますが、これは118kWhバッテリーを搭載したEQS 450+と比べて25%の向上を意味し、さらに将来的には航続距離の向上幅が40%に達する可能性もあるとしています。

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参考までに、この「航続距離」については様々な計測方法があって、もっとも甘いのは(中国の)CLTC、次いでWLTP、そしてEPAの順だとされ、よってこの「1,000km」をEPA基準(WLTPよりも約22%厳しくなる)にあてはめたとしても約880kmを走行できることを意味し、これは米国で最も長い距離を走ることできるEVのひとつであるルシード・エア グランドツーリング(EPAにて約830km)よりも長い距離を実現できるということになり、メルセデス・ベンツにとってのゲームチェンジャーとなる可能性も。

しかし、全固体電池の利点は航続距離の向上だけではなく、軽量化やパッケージングの最適化、効率向上といったメリットも考えられ、実際のところ、EQSの全固体電池版は現在のリチウムイオン電池搭載モデルとバッテリーパックのサイズや重量が全く同じでありながら、25%も航続距離が延びているわけですね。

このメルセデス・ベンツEQSプロトタイプに搭載されるソリッドステートバッテリーの仕様とは?

メルセデス・ベンツによると、この技術はリチウムメタルアノードと組み合わせることで次世代のエネルギー密度を実現しており、この技術によって車載用バッテリーの比重エネルギー密度(バッテリーセルの単位重量あたりのエネルギー量)を最大450Wh/kgまで向上させる可能性があるとされ、それによって航続距離が延びることが期待されています。

この比重エネルギー密度は、特に電動車両のように重量が重要な要素となる用途において、バッテリーの効率や性能を評価する上で非常に重要な指標となりますが、この「450Wh/kg」は現時点だとかなり高いレベルだと言って良いかもしれません。

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ファクトリアルエナジーは2021年からメルセデス・ベンツとの提携を開始してこの新技術の開発を進めていて、しかし提携先はメルセデス・ベンツのみではなく、同社はステランティスやヒョンデ(現代自動車)とも提携し全固体電池セルの開発を行っており、たしかについ先日はダッジも「ソリッドステートバッテリーを搭載した試作車の公道テストを開始する」とアナウンスしたばかり。

そのほかのバッテリーメーカー、自動車メーカーも相次いで全固体電池の実用化が近づいたと主張しているのが現在の状況なので、「いよいよ」EVの新しい章が膜を開けることになりそうですね。

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