
| EVやPHEVのエンジンルームに「オレンジのケーブル」がある理由とは? |
電気自動車(EV)とガソリン車の違いは数多くありますが、その中でも見た目で最もわかりやすいのが「オレンジ色のケーブル」。
ガソリン車のエンジンルームにはほとんど存在しないこのオレンジケーブル、実は400ボルト以上の高電圧が流れていることを示しています。
そして将来的には1,000ボルト超の電圧が一般的になる可能性もあり(実際にボルボは800V対応のEVをすでに市販化している)、そういった「高電圧」を示すのがこのオレンジ色のケーブルというわけですね。
オレンジ色は「警告の色」——公式な規格にも基づく
なぜケーブルはオレンジなのか?その理由は視認性の高さだけでなく、国際的な安全規格によって定められているから。
2017年に改定された米国の「連邦自動車安全基準 No.305」では、電気保護バリアの外にある高電圧ケーブルは「オレンジ色の外装」で識別すべしと明記されていて、建築や工場などの電気設備を管轄する「全米電気規定(NEC)」でも、高電圧ケーブルにはオレンジのマーキングを義務付けており、これがEV業界にも影響を与えているとされています(つまりこの「オレンジ」は自動車業界が自主的に制定したものではないようだ)。
メカニックや救助隊への「警告サイン」
つまりこのオレンジ色のケーブルは単なる配線ではなく、触れてはいけない危険部位を示すマーキングでもあり、特に自動車整備士や事故現場で対応する消防・救助隊員にとっては、絶対に素手で触れてはいけないエリアということに。
EVでは、ケーブルだけでなく以下のような高電圧コンポーネントもオレンジで表示されることがあり、やはりこれらも「触れてはならない」部位ということになりますね。
- DC/DCコンバーター
- 急速充電ポート
- 電動エアコンコンプレッサー
衝突事故時、オレンジケーブルは絶対に触らない
通常であればケーブルはしっかりと絶縁されており、誤って触れても問題は起きにくいのですが、衝突事故などで絶縁被覆が破れた場合は極めて危険です。
このような緊急時のために、自動車メーカーは「エマージェンシー対応マニュアル(Emergency Response Guide)」を提供しており、レスキュー隊が安全に高電圧システムを無効化できる仕組みを用意しています。
テスラの例:緊急遮断ループ「ファーストレスポンダーループ」
たとえばテスラ・モデル3には、フロントトランク内に「ファーストレスポンダーループ」と呼ばれる緊急遮断装置があり、高電圧系とエアバッグを同時に無効化できるそうで、もしフロントトランクがアクセス不能な場合は、リアシート裏のトリム内にある第2のループにアクセスし、ガラスを割って金属部分を切断することで同様の機能を果たせるのだそう。
今後さらにEVの普及が進む中、消防士、警察官、救急隊員といった一次対応者は各車種の構造や遮断手順に熟知しておく必要があり、とくにテスラは(販売台数が多いので)事故件数が多く対応頻度も高いため、より高いレベルでの啓蒙活動が求められるところですね。
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参照:Jalopnik