
| はじめて愛車でこの「サビ」を見たら誰もが驚くに違いない |
ただしこのサビは「必ず発生するもの」であって問題はない
洗車中や洗車後、あるいは雨が降った後に愛車のブレーキローターが茶色く錆びていて驚いた経験が誰しもあるかと思います。
笑い話としてよく「このサビを見たオーナーが”不良品”だとしてディーラーにクレームを入れる」ということも語られるほどではありますが、洗車直後や湿気の多い日に発生するこのオレンジ色の錆は「フラッシュラスト(瞬間錆)」と呼ばれ、基本的に正常な化学反応であり、害はないものとして認識されています。
ここでは、なぜローター(ディスク)が一瞬で錆びるのか、さらにはEV特有の注意点、放置して危険な「本当の危険信号」までについて考えてみましょう。

この記事の要約
- 原因は鋳鉄の露出:ブレーキローターの多くは「鋳鉄(キャストアイアン)」製。制動のための摩擦が必要なため、塗装や防錆処理ができず裸の鉄が剥き出しになっている。
- 雨が降らなくても錆びる:湿気、結露、朝露、洗車後の残り水だけでも、数時間で酸素と反応して表面にオレンジ色の酸化被膜が形成される。
- 数回のブレーキで消える:走り出して数回普通にブレーキを踏めば、ブレーキパッドが表面の錆を削り落とし、元の美しい金属光沢に戻る。
- EV・HVは錆が残りやすい:回生ブレーキを多用する電気自動車やハイブリッド車は、摩擦ブレーキを使う頻度が低いため錆が削れにくく目立ちやすい。
- 危険な錆の見分け方:走行後もジャリジャリ音が消えない、ペダルやハンドルが振動する、異臭や引っかかりがある場合はローターの波打ちな異変(侵食・ジャダー)のサイン。
一晩でブレーキが茶色くなる理由:犯人は「剥き出しの鋳鉄」
愛車をピカピカに洗車して駐車場に止めた翌朝、ホイールの隙間から見えるブレーキディスクが真っ茶色に錆びていてショックを受けたことがあるかもしれません。
こういったブレーキローターはまるで長年放置された遺棄車両のように見えますが、実のところなんら心配の必要はなく、なぜなら多くの一般的な自動車のブレーキローターには「鋳鉄(キャストアイアン)」という素材が使われていて、この素材の特製が引き起こす「仕様」だからです。

なぜ防錆コーティング加工ができないのか?
そこで疑問に思うのが「このブレーキローターに錆止め対策を施すことができないのか」。
車体のボディパネルやホイールと同じく塗装を施したり、サスペンションアームのようにサビ止めコーティングを行えば「錆び」は基本的に発生せず、しかしブレーキローターの「パッドが当たる面(摺動面)」は、ブレーキパッドが直接強力に挟み込んで摩擦を起こす必要があります。
もしここに塗料、オイル、防錆スプレーやコーティング剤などが付着していると、摩擦力が失われてブレーキが効かなくなってしまい、あるいはそれらが剥げた途端に急激に制動力が発生したりして危険が生じ、よってローターの表面は常に「無塗装の生鉄」として外気に晒されている必要があるわけですね。※例外としてポルシェのPSCBが存在する
そして”剥き出しの”鉄と酸素、そして水分という条件が揃うことにより、短時間で「酸化鉄(錆)」へと変化するというのが「どうにもできない」ブレーキローターの実情ということに。

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雨が降っていなくても錆びる「フラッシュラスト(瞬間錆)」
そしてこのサビは「かなり」発生しやすく、洗車や雨によって、水を直接ブレーキローターにかけていない場合でも発生することがままあります。
「昨夜は雨が降っていないのに、なぜ?」と疑問に思うかもしれませんが、実は目に見える大雨でなくとも以下の環境だけで数時間で錆が発生することも。
- 空気の高い「湿気(湿度)」
- 夜間から朝方にかけての「結露・朝露・霧」
- 潮風(海沿いの駐車場)や冬場の「融雪剤(凍結防止剤・塩カル)」
このように、ごく僅かな水分と空気中の酸素が反応して急速に発生する表面の薄い錆が見られることがあり、この場合は「真っ茶色」ではなく「うっすらと」茶色くなる場合がほとんどです。※梅雨時期などにクルマを長期保管している場合、直接雨がブレーキローターに当たっていなくてもローターが錆びることがある
ホイール越しに見るとショッキングな見た目ではありますが、この時点では金属の「表面」にうっすらと膜やスポット的なサビができただけなので、ローター自体の強度や性能には何の問題もなく、やはり心配は無用です。

このほか、雨が降った後や洗車後に一定の距離を走り、ブレーキローターから水分が飛んでいたとしても、「水分がまだ残っている」ブレーキパッドが当たっていた部分だけが”その形に”錆びることもありますが、これも正常な現象でなので心配無用。
解決策は簡単。走って数回ブレーキを踏むだけ
この薄い表面の錆を落とすための特別な整備やスプレーは一切不要で、その対策としては「クルマを走らせて、普通にブレーキを踏む」、これだけで解決します。
走り始めの注意点と変化
- 音と感触:走り出しの数回は「ザザッ」「ジャリッ」という磨耗音が出たり、ブレーキペダルにわずかな振動(ザラザラ感)を感じることがある
- 数回の制動で元通り:数回減速を繰り返すうちに、音や振動は消え、ローターは元のピカピカな銀色の金属面を取り戻す
クルマを走らせてブレーキをかけると、ブレーキパッドがローター表面の錆を物理的に削り落としてくれ、またもとのピカピカのローターに戻るというわけですが、ブレーキとローターとの摩擦が「不十分」だとこんな感じでサビがちょっと残ってしまうことも。

ちなみにですが、パッドが触れないローターの外周部、中心のハブ部分、冷却用ベンチレーションホールの隙間には錆が残るものの性能上は問題なく、しかし美観上の問題は残されており、どうしても気になるのであれば、せめてハブ部分に錆止めペイントを塗っておくと「少しはマシ」に(その他の部分は摩擦や塗料の剥がれによる別のトラブルの原因となるのでオススメできない)。

ときには「究極の選択」も
そしていったん錆びが発生してしまうと、いかに走行してそれを落としたとしても「剥がれ落ちた錆び」がホイールやボディを汚してしまい、よってもっとも好ましいのは「錆びさせない」ということではありますが、これはなかなかにハードルが高く、雨天走行後にブレーキローターやパッドを乾燥させることは(雨が上がっていないかぎり)至難のワザで、洗車後であれば「せっかく洗った後なのに、ローターとパッドを乾燥させるために走行しないといけない(できれば洗車後すぐに、クルマが汚れるようなことはしたくない。さらにあちこちから水が出てきて拭き上げたボディを汚してしまう)」ということに。
ただ、クルマによってはこの錆びが原因でブレーキローターとブレーキパッドが「固着」してしまい、錆びが生じた後にクルマを発進させようとなるとその固着がブレーキのような役割を果たすため動き出すまでに通常以上のトルクが必要になったり、その固着が外れると「バッキン」というとんでもなく大きな音がしたり、急にクルマが動き出したりするので精神衛生上、そして安全上好ましくはなく、よってぼくは「錆の発生」と「固着後の問題」とを天秤にかけ、こういった症状が出やすいクルマについては「洗車後に少し走ってブレーキに熱を入れ、ローターとパッドから水分を飛ばす」ようにしています。

参考までに、ぼくの経験上だと、こういった「洗車後にブレーキローターとパッドが固着する(梅雨時期の長期保管でも固着することがある)」のはかなり大きなブレーキ(6ポット以上の対向ピストン)、そして面積の大きなブレーキローターを持つスポーツカーの場合が多く、つまりこれらについては「要注意」ということになりますね。
EV(電気自動車)やハイブリッド車(HV)で錆が目立つ理由
近年、EV(電気自動車)やハイブリッド車において「ブレーキの錆が消えにくい」「錆が目立つ」という相談が増えているといい、その理由は「回生ブレーキ」にあって、というのもEVやHVは減速する際、モーターを発電機として利用してバッテリーに充電する「回生ブレーキ」を優先的に使用するから。
そのため、物理的にパッドをローターに押し当てる「油圧(摩擦)ブレーキ」を使う機会がガソリン車に比べて格段に少なくなり、パッドで削り落とす機会が少なくなり、表面の錆が残ったままになりやすいというわけですね(とくにポルシェだと、普通に乗った場合では制動力のうち回生ブレーキが90%ほどを負担する)。
- 対策:たまに安全な場所(後続車がいないストレートなど)で、やや強めにブレーキを踏んで物理ブレーキを動作させ、ローター表面をクリーンに保つことが推奨される
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ただ、多くのEVでは空力上の理由にて「フルカバー」「ディッシュ」ホイールを装着することが多く、オーナーが実際に「ローターのサビ」を目にする機会は多くはないのかもしれません(もしかすると自動車メーカーは「ローターのEVのブレーキローターはサビが目立つ」という事実を認識し、ディスクが見えにくいホイールを採用しているのかもしれない)。

要注意。放置すると危険な「本物のブレーキ不具合」サイン
一瞬、あるいは一晩でできる薄い表面の錆は一般に無害ですが、長期間(数週間〜数ヶ月)動かさずに放置されたクルマや過酷な環境に晒され続けたブレーキの錆は危険です。
深い錆がローターの金属組織まで浸食すると、表面に凹凸(ピッティング)ができ、制動力を低下させたり部品を痛めたりすることがあり・・・。
すぐに点検・整備が必要な「危険信号」
| 症状 | 考えられる原因 | 必要な対処 |
| 走行後もジャリジャリ音・異音が消えない | 重度の錆侵食、またはパッドとローターの間に異物 | ブレーキ整備・研磨または交換 |
| ブレーキ時にハンドルやペダルが激しく振動する | ローターの波打ち(ジャダー)や変形・錆による偏摩耗 | ローターの研磨(研削)または新品交換 |
| ブレーキを踏むと車が左右どちらかに引っ張られる | ピストンの固着、キャリパーの作動不良 | キャリパーのオーバーホール・修理 |
| ホイール周辺から異常な熱や焦げ臭い匂いがする | ブレーキの引きずり(固着) | 直ちに走行を中止しディーラー・整備工場へ |
ブレーキローターの錆を抑える・防ぐためのテクニック
完全に錆を防ぐことは物理的に不可能ですが、日常の少しの意識で軽減することができ・・・。
- 洗車直後に少し走る:上述のように、洗車が終わったらクルマを庫内に入れる前に、近所を1周して軽くブレーキを数回踏んでみて「摩擦による熱」で水分を飛散・蒸発させる(ただ、ちょっとやそっとの移動程度では水分は飛ず、しっかり熱を入れなければならない)
- 定期的に動かす:長期間乗らない場合でもたまにクルマを動かしてブレーキを機能させる
- 防錆コーティング(Coated)ローターを選ぶ:交換時期が来たら、パッドが当たらないハブや外周部に防錆塗装が施された社外ローター(ディクセル等)を選ぶと、見た目の美しさが長持ちする
- カーボンセラミックブレーキ:スーパースポーツ等に採用されるカーボンセラミック製ローターは一切錆びないため、オプションが用意されていたら装着を検討する(ただし非常に高価)

絶対NGの危険行為
「錆びているから」といって、ローターの摩擦面に防錆スプレー(Kure 5-56等)、オイル、ワックス、グリスを塗ることは絶対にNG。
ブレーキが滑って制動不能になり、重大な事故につながります。
結論:一晩の錆は車の正常な証拠。異音が続かなければ心配無用
洗車後や湿気の多い日の翌朝に見られるブレーキローターのオレンジ色の錆は、純度の高い「鋳鉄」が正常に機能している証であり、ほとんどの場合は全くの無害です。
走り出して数回のブレーキ操作によって自然と削れ、元通りの輝きを取り戻すのであれば何の問題もなく、ただし「走行後も異音が消えない」「ペダルに激しいキックバック(振動)がある」といった症状が続くケースでは表面だけでなく内部まで錆が侵食している可能性があり、その場合は無理をせず、信頼できる整備工場やディーラーで点検を受ける必要がある、というこも覚えておかねばなりません。
現代のクルマは電子化が進んでいるものの、しかし車体を構成するのは「鉄などの金属やガラス、樹脂、ゴム」であって、実際に稼働するのは「機械」部分でもあるため、ぼくらはそれらの素材的特性、機械的構造を正しく理解し、適切に扱うことことが「充実したカーライフ」を送るコツなのだと考えています。

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参照:Motor1











