| 過去のブガッティにはピュアエレクトリックSUVの話も出ていたが |
そしてなぜ最先端の電動化技術を持つリマックがピュアエレクトリック版ブガッティを作らないのか
さて、先日「W16エンジンを搭載する最後の記念モデル」としてW16ミストラルを発表したところであり、そこで気になるのが「次の一手」。
シロン後継モデルについては「W16エンジンを搭載しない」「ハイブリッド化される」ことがほぼ確定していると考えるのが妥当ではありますが、今回ブガッティ・リマックCEO、メイト・リマック氏が「すでに我々は今後10年間について具体的な計画を持っているが、そこにSUVとピュアエレクトリックカーは含まれない」とコメント。
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ちなみに数年前に「ブガッティは(リマックの力を借りて)ピュアエレクトリックSUVを発売する」というウワサが流れたことがあるものの、そのプロジェクトは(実在していたとして)霧散したということになりそうです。
なぜブガッティはSUV、ピュアエレクトリックカーを発売しないのか
なお、ここからの10年というと2032年までを指し、この2035年には欧州はじめ多くの国や地域で「ガソリンエンジンを搭載する新車販売が禁止」されることになりますが、ロータスはもちろん、フェラーリやランボルギーニもこの期間内にピュアエレクトリックハイパーカーの発売を行うことが明らかになっています。
そこで「なぜブガッティがSUVやピュアエレクトリックカーを発売しないのか」を考えてみると、まずSUVを発売しないのは「その必要がないから」なのかもしれません。
ポルシェ、ランボルギーニ、アストンマーティン、ロータスはすでにSUVを投入もしくは発表済みであり、フェラーリではプロサングエがスタンバイ、そしてマクラーレンからもSUV登場の可能性が囁かれていて、こういったスポーツカーメーカーがSUVを投入するのは「SUVの販売によってより多くの販売機会を獲得し、利益を最大化するため」。
よってブガッティにも同様の理論が当てはまりそうなものですが、ブガッティの場合は年間100台にも満たない生産規模であり、その生産枠めがけて多数の顧客が列をなし、さらに「1台あたりの利益が非常に高い」ブランドです。
そういったブガッティがSUVを発売するとなると、そもそも「規模の小さい会社だけに、そこに割ける人員がない」というお家事情がまず考えられ、さらにSUVを発売するのであれば、それはおそらくブガッティの顧客を対象とした”日常的に乗ることができるブガッティ”になるんじゃないかと推測していますが、であればSUVに「匹敵するものがあれば、それはもはやブガッティではない」ほどの性能を持たせる意味も必要もなく、そしてそういったSUVを「何億円」という価格で販売することは難しいのかもしれません。
つまりはハイパーカーを作っていたほうがよっぽど儲かるということで、ブガッティがSUVを作るということは、「少ないリソースを、より儲からないSUVに割り当てる」ということを意味し、ここは他のスポーツカーメーカーと全く事情が異なると部分だとも考えています。
シロン後継モデルのエンジンはどうなる?
そしてもうひとつ、ピュアエレクトリックカーを(この10年で)発売しないということについて、これは主にコレクション価値を考慮した判断なんじゃないかと推測。
ブガッティのクルマは非常にコレクション価値が(昔から)高く、そしてブガッティは現代のクルマにおいてもその価値を高めようとしていることが一連の行動からもわかりますが、発売したモデルの価値を高めることが「将来のモデルの価値を決める(より高く売ることができるようになる)」のは間違いのないところ。
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もちろんブガッティがいまピュアエレクトリックカーを発売しても、非常に高い価格での販売も可能だとは思われますが、電動化技術そのものが過渡期であり、そして将来的にはバッテリーも現在主流のリチウムイオンからソリッドステート(全固体電池)に取って代わられる可能性が高く、となると発売したピュアエレクトリックハイパーカーの性能がすぐに(相対的に)劣ることになり、となるとこれもブガッティ創業者、エットーレ・ブガッティのモットーである「匹敵するものがあれば、それはもはやブガッティではない」を実現できなくなるものと思われます。
現在ブガッティをコントロールするリマックは、現時点で最も進んだエレクトリック技術を持っていると考えてよく、それを考慮すると「ブガッティがピュアエレクトリックカーを発売しない」のはちょっとナゾではあるものの、むしろ「電動化技術を知り尽くした」リマックだからこそ、「今はピュアエレクトリックハイパーカーを発売すべきではない」と考えているのかもしれません。
いずれにせよ、シロン後継モデルは「ハイブリッド」となるわけですが、現時点でそこに搭載されるエンジンは一切不明。
新規開発の可能性もあるものの、おそらく一世代限りで消滅し、しかも数百台しか生産されないモデルのためにガソリンエンジンを開発するとは考えにくく、よってフォルクスワーゲングループの持つエンジンを拝借するか(しかしそれではブガッティのファンが許さないだろう)、もしくはランボルギーニ・アヴェンタドール後継モデル用に開発されている新型V12エンジンを積むのかもしれません。
なお、メイト・リマックCEOの言葉を借りれば「非常に魅力的な内燃機関(エンジン)を搭載」し、「大規模な電動化がなされ」「エレクトトリックモードにて50kmの距離を走ることが目標」とのこと。
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参照:Bugatti