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BMWは「電動化一本」ではないにもかかわらずEVの販売が急増して業界最高のEV構成率15%へ。それでも「いつ内燃機関をやめるのか、結論は急がない」

2023/08/07

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| BMWは「i」ブランド展開当初に高い代償を支払ったが、それが現在のEV開発に活かされているようだ |

たしかにBMWのEVは他社製EVに比較してコストパフォーマンスが高いように感じられる

さて、トヨタ同様に「電動化一本ではなく多様な選択肢を提供する」としているBMW。

新世代EVシリーズ「ノイエクラッセ」発表の準備を薦める一方、他社がマルチシリンダーエンジンを捨てる中において大排気量V8エンジンの開発を進めるなど一風変わった戦略を採用することでも知られます。

そしてこういった戦略については「現在、世界中における電動車の需要や環境、そして内燃機関の禁止など自動車業界の将来については不透明かつ流動的」だと捉えているからだと思われ、つまりどう転んでもいいように”(言葉を選ばずに表現すれば)逃げ道”を作っているのかもしれません。

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「電動化路線一本」に絞ることの弊害も

一方、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲンなど一部の自動車メーカーは「電動化以外に未来はない」としてEV化路線のみという姿勢を見せていますが、これは大きな危険性をはらんでおり、たとえば中国のEVメーカーの競争力が向上したり、もし今の流れから一転して「今後ずっとガソリンエンジンも販売していい」となったり、さらにバッテリーやエレクトリックモーターを製造する材料が高騰したり入手できなくなったりすると、その戦略が根本から崩れ去り、会社の経営が立ち行かなくなる可能性があるわけですね。

つまり、電動化のみに絞ってしまうと、自社でコントロールできない外部要因によって経営に支障を来たす可能性があり、しかしBMWのように、リスクヘッジの手段として様々な選択肢を残しておくことで「自身で(生き残りのための)方向性を選べる」ことになるのだとも考えられます。

参考までに、BMWとトヨタは「内燃機関」「水素」「電動化」をバランスよく進めるなど共通点も多く、しかしトヨタはこれを「カーボンフリー達成のために選択肢を多様化している」と表明しているのに対し、BMWはとくにその理由を(部分的にしか)公表していないのが興味深いところでもありますね。

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BMWの電動化車両の販売は「急増」

ただ、トヨタとBMWとでは異なる部分もあって、それは「BMWのEV販売が好調なこと」。

BMWは2023年末までに「生産する車両の15%をEVにする」というけっこう野心的な目標を掲げており、このままの調子だとどうやら達成できる見込みだとされています(EV化一直線のメルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲンが思惑通りにEVを販売できていないのとは対象的である。参考までにメルセデス・ベンツのEV販売比率は11%でポルシェと同じ)。

そしてBMWはこの勢いに乗じるため、電動化への投資を当初の計画を上回るペース増加させていると発表しており、i5と次期EVクロスオーバー、iX2の導入によって2024年には欧州の工場にて生産する車両の40%を電動化するということにも触れています(この40%はBEVとPHEVとの合計だと思われる)。

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その一方でBMWは「いつ内燃機関(ガソリン / ディーゼル)の生産を終了するかということについては決まっていない」と語っており、「結論を急ぐ必要はない」とも(これもまた、ターゲットを設定している多くの欧州の自動車メーカーとは異なる部分である)。

なお、結論を急がない理由としては「アメリカや中国といった、主要自動車市場での内燃機関車の販売が好調なこと」を挙げていて、BMWのCEO、オリバー・ツィプセ氏によれば「よりクリーンな内燃エンジンが世界のCO2排出量削減の一翼を担う可能性があり、世界の国や地域によって発展速度が異なるため、利用可能な動力源をミックスすることが理にかなっている」。※この考え方はトヨタとも共通している

更に同氏は「例えば米国では、カリフォルニア州などで見られるe-モビリティの台頭と並行して、内燃機関が依然として重要な位置を占めています。中国では、政府はe-モビリティを推進しており、内燃機関を禁止することには疑問の余地がありません。日本では、ハイブリッドが求められており、水素への関心も高いといった状況も見られます」とも述べ、市場ごとの相違についても言及することに。

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ちなみに(EV専業メーカーを除くと)「EV比率15%」というのは業界トップの数字だそうですが、EVのみに絞らずパワートレーンの多様化を軸に展開するBMWが「EV化一直線」のほかのメーカーに比較して電動化比率が高いというのはなんとも皮肉な話かもしれませんね。

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参照:Reuters

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