![「自動車史上初の」ミドシップカーはメルセデス・ベンツが100年前に作ったRH型2リッター”ティアドロップ”だった。ただし3年後にはその計画が終焉を迎える](https://intensive911.com/wp-content/uploads/2023/09/Mercedes-Benz-6.jpg)
| メルセデス・ベンツが100年も前にミドシップカーを作っていたというのは意外な事実でもある |
さすがは「自動車を発明した」メルセデス・ベンツだけのことはある
さて、前後重量配分や重心という観点から(サーキットを走行するのに)もっとも理想的と言われるのがミドシップレイアウト。
実際のところ、ニュルブルクリンクのラップタイム上位の多くはミドシップ車が占めることとなっていますが、やはり一般的にミドシップと聞いて連想するのはフェラーリやランボルギーニかと思います。
現在ニュルブルクリンクの市販車ランキング1位に輝くのは「メルセデスAMG One」で、このハイパーカーはミドシップではあるものの、ぼくとしては「メルセデス・ベンツのスポーツカーやレーシングカーはフロントエンジンが多い」という印象を持っているものまた事実。
ただし今回、メルセデス・ベンツが「自動車史上はじめてミドシップレーシングカーを作っていた」という事実が紹介されており、ここでそのクルマ「RH型2リッター”ティアドロップ”を見てみましょう。
![Mercedes-Benz (2)](https://live.staticflickr.com/65535/53179119459_fe58a02ca1_c.jpg)
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メルセデス・ベンツRH型2リッター”ティアドロップ”はこんなクルマ
このRH型2リッター”ティアドロップ”がデビューしたのは1923年9月9日にモンツァで開催されたヨーロッパ・グランプリで、つまり「ちょうど100年前」。
戦績としてはフェルディナンド・ミノイア(ゼッケン1番スタート)が4位、フランツ・ホーナー(ゼッケン7番スタート)が5位、ウィリー・ヴァルブ(ゼッケン13番スタート)は完走できずという結果となっていて、この「史上初の」レーシングカーは優勝こそ逃したものの、このマシンのデザイナー、マックス・ワグナーは「名誉賞」を受賞したという記録が残ります。
![Mercedes-Benz (4)](https://live.staticflickr.com/65535/53179422003_bd37d6d2e6_c.jpg)
当時の画像を見ると、他のレーシングカーはフロントにエンジンを積むため、車体前部に大きなラジエターを持つものの、このRH型2リッター・ティアドロップはそれらとは全く異なる砲弾のようなボディを持つことがわかります。
なお、観客の多さにもびっくりではあるものの、現代の基準からすると無防備にも近いコースと観客との関係性にも驚かされますね。
![Mercedes-Benz (5)](https://live.staticflickr.com/65535/53178921546_6a88dc0236_c.jpg)
このRH型2リッター”ティアドロップ”の開発は、1922年にベンツ社の開発責任者であるハンス・ニーベル博士とマックス・ワグナーが、エドモンド・ランプラーの考案した「ティアドロップ」カーに感銘を受けたことから始まったそうですが、その後ベンツ社は関連図面一式を含む「ティアドロップ」カーのライセンス契約を獲得することに。
![Mercedes-Benz (7)](https://live.staticflickr.com/65535/53179363065_c43d0eb6e4_c.jpg)
これによって史上初のミッド・エンジン・レーシングカーが誕生し、レースで初めてダブルジョイントのスイングアクスルを備えた独立リア・サスペンションが採用されたわけですが、当時このクルマをはじめて見た人は「どちらが前か」わからなかったかもしれませんね。
![Mercedes-Benz (3)](https://live.staticflickr.com/65535/53179363080_dd18058c1e_c.jpg)
車体ミッドにはアーサー・バーガー博士が開発した90馬力の2.0リッター直列6気筒エンジンを搭載し、2基のゼニス製水平キャブレターと7個のローラーベアリングを備えたクランクシャフトが組み合わされ、フレーム、ペダル、シフトレバーにも軽量化のためのホールが穿たれます。
![Mercedes-Benz (1)](https://live.staticflickr.com/65535/53179422013_2094f9fcc8_c.jpg)
しかしメルセデス・ベンツは「ミッドエンジン・プログラム」を終了させることを選択
なお、このRH型2リッター”ティアドロップ”には公道走行バージョンが作られており、車体構造はそのままに、ボディ形状を変更し、フェンダーを取り付け、ヘッドライトを取り付けたクルマが試作されたことも。
ただしメルセデス・ベンツはこの「ミドシップ」プロジェクトに特段の興味を示さず、よってこの公道走行版試作車にも名称が与えられることもなく、1926年のベンツ&シーとダイムラー・モーターゼン・ゲゼルシャフトの合併後(この際にダイムラー・ベンツとなる)、ついにRH型2リッター”ティアドロップ”プロジェクトが打ち切られることとなっています。
![Mercedes-Benz (8)](https://live.staticflickr.com/65535/53179363055_7cd7713e59_c.jpg)
当時ダイムラー・ベンツ社にて開発責任者を努めていたフェルディナント・ポルシェも(意外なことに)ミドシップ・プロジェクトを指示しておらず、しかし後の1934年にはアウトウニオンの依頼にて「Pヴァーゲン」を製作しているのはちょっと興味深いところ(フェルディナント・ポルシェは1928年にダイムラー・ベンツを辞し、1931年に独立している)。
今日、ミッド・エンジン・レーシングカーはすべてのモータースポーツで採用されており、その頂点がF1ではありますが、その始祖が100年前に作られており、そしてそれを製作したのがメルセデス・ベンツ(当時はベンツ社)であったというのはちょっとした驚きでもありますね。
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参照:CARBUZZ