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メルセデス・ベンツがEV用レンジエクステンダーを検討し試作するも「販売台数、製造コストの高さから採用を見送る」もよう

メルセデス・ベンツ

| レンジエクステンダーは航続距離伸長のひとつの解決策ではあるが、効率という点では妥協であるとも考えられる |

おそらくメルセデス・ベンツは「EVとしての効率」を追求すべきと考えたのであろう

報じられるところによると、メルセデスベンツはレンジエクステンダーEVの計画を撤回し、代わりに簡素化されたエレクトリックドライブトレインに焦点を当てる、とのこと。

レンジエクステンダーEVとは、(駆動力としては機能しない)発電のみを担当する内燃機関を搭載し、これによって発生させた電力を用いてエレクトリックモーターを駆動させ走行するEVを指しており、日産の「e-POWER」の作動原理を思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。

なぜメルセデス・ベンツは戦略の変更を?

今回メルセデス・ベンツは戦略を変更し、一つの可能性を切り捨てたということになりますが、上級内部関係者の弁として紹介されているのが「私たちは、パッケージングと路上テストの両方のために、既存モデルをベースに(レンジエクステンダーの)プロトタイプを作成しました。しかし、最終的には、レンジエクステンダーのドライブトレインは、比較的短期間の利点を持つ過渡的な技術であると結論付けました、加えて、 売上高と比較的高い生産コストとのバランスを正当化することができません」。

このレンジエクステンダー搭載EVのプロトタイプには、バッテリー残量が低いパーセンテージに達した場合、バッテリーを充電するために使用される小型の燃焼式エンジンが搭載されているのですが、メルセデス・ベンツがこの試作車に搭載したのはCクラスやGLCクラスを含むいくつかの車両で使用されているM254(2.0リッター4気筒)から派生させたターボチャージャー付き1.0リッター2気筒。※参考までに、BMW i3に積まれていたレンジエクステンダーはスクーター用の単気筒で、バッテリー残量が6.5%になると自動で起動するというロジックを持っている

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メルセデス・ベンツが新しく開発したレンジエクステンダーは(EQS ベースの)プロトタイプの車体前方に配置され、駆動輪にはパワーが送られず、発電機としてのみ機能し、フロントマウント排気を使用することで、アンダーボディのエアロダイナミクスを損なう従来のエキゾーストシステムの必要性を排除することに成功したそうですが(つまりフロア下にエキゾーストパイプを通さず、車体前方のどこかで排気を完結させている)、さらにこのエンジンは圧縮比よりも膨張比が高いミラーサイクルで動作するように設計変更がなされていたといいます。

メルセデス・ベンツの関係者によると、”EQSレンジエクステンダー”はリアに268馬力を発生するエレクトリックモーターを1つ搭載し、リチウムイオンバッテリー(容量不明)でこれを駆動したとされ、理論上の航続距離はWLTPサイクルで約783kmであったとのことので、なかなかの実用性を持っていたということになりそうです。

ただ、メルセデス・ベンツは上述のとおり「販売台数とコスト」の面でこれを断念しており、もしメルセデス・ベンツが大衆車メーカーで、より多くの販売台数を持っていたならば話が違っていたのかもしれません。

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なお、こういった理由のほか、ガソリンエンジンを積むと、それが発生する振動や音を抑え込まねばならず、ここも「コストや重量を」増加させる要因となり、であればレンジエクステンダーを積まずにバッテリーの容量を拡大したほうが結果的にいいという判断が働いた可能性も。

というのも、エレクトリックモーターにて静かに走行している時にイキナリ2気筒エンジンが起動すると著しく高級感を阻害することになり、それはメルセデス・ベンツにとって許しがたい現象であったのだとも考えられます(ぼくはBMW i3に乗っていたとき、レンジエクステンダーが起動した際に発する音や振動がすごく気になった。それは屋台で使用する発電用エンジンのような音である)。

加えて、メルセデス・ベンツは「どこでもできるような手法でEVの航続距離を伸ばすのは我々のやり方ではなく、あくまでもEVとしての効率性を追求することでそれを達成する」とも述べており、1つの車両に2つのパワートレーンを入れることには意義を見出せなかったのかもしれませんね。

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参照:Autocar

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