| まさかポルシェがシンガーを公的に認め、専用にエンジンを製造することになろうとは |
たしかにシンガーの技術、そして芸術性は突き抜けているが
さて、シンガー・ヴィークル・デザインは「ポルシェのレストモッド」というニッチな世界への扉を開いた先駆者でもあり、そこからガンサーワークスはじめ多くのフォロワーがなだれ込んでいます。
このシンガー・ヴィークル・デザイン創業者であるロブ・ディッキンソン氏はちょっと変わった経歴を持っていて、もともとはロータスのデザイナーとしてそのキャリアをスタートさせています。
そして「変わった経歴」というのは、ロブ・ディッキンソン氏自身が1990年にいったん自動車業界を離れて「キャサリン・ホイール」というロックバンドを結成したこと(ロブ・ディッキンソンは、アイアン・メイデンのボーカリスト、ブルース・ディッキンソンのいとこでもある)。
ここでいくつかアルバムを出したのち(けっこう成功した部類に入る)2000年に解散することとなり、その後スタートさせたビジネスが「シンガー・ヴィークル・デザイン」。
参考までに、この「シンガー(Singer)というネーミングは、自身がバンドにてヴォーカルを担当していたこと、そしてポルシェのエンジニア(ジンガー)の名に由来する、と紹介されています。
シンガーはただ「ポルシェ911をレストアするだけではない」
そしてシンガー・ヴィークル・デザインの特徴としては「ただポルシェ911をレストアするだけではなく、進化させていること」。
そのボディはカーボンファイバーによってワイド化されており、エンジンは最新の世代へ、そしてトランスミッションも最新の6速マニュアルへ。
さらに足回りやブレーキシステムも新しくなり、ブレーキディスクは「カーボンセラミック」が採用されています。
そのイマジネーションはとどまるところを知らず、そして少し前にはシンガーACS(オールテレイン・コンペティション・スタディ)なる911のオフロード版を発表していますが、当のポルシェはこのシンガーACSに対してNGを出し、ポルシェの文字をその車体に付与することや、ポルシェと名乗ることを禁じるように法的手段を取っています。
かくしてシンガー・ヴィークル・デザインはこのシンガーACSを「なかったこと」にしてしまい、今後のビジネスにも(ポルシェとの関係悪化による)悪影響が出るんじゃないかとも考えられていたわけですね。
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ただしシンガーはポルシェの「お墨付き」をもらうことに
ただ、今回シンガーは声明を発表していて、これによると「ポルシェとのエンジン供給に関する提携を行った」と記されており、今後シンガー・ヴィークル・デザインのレストモッドするポルシェ911には「シンガーの指定するスペックにあわせてポルシェが製造したエンジン」が搭載される、とのこと。
つまり、ポルシェは公的にシンガー・ヴィークル・デザインを認め、そのレストモッドを公認し、エンジン供給によってむしろそのビジネスをバックアップするということになりますが、これは極めて異例なことだと思われます(ポルシェはプライベーター向けにカスタマースペックのエンジンを製造しているが、シンガー・ヴィークル・デザインはあくまでも個人が立ち上げた”いちビジネス”であり、レーシングチームではない)。
加えて、これはポルシェがシンガー・ヴィークル・デザインのレストモッドの方向性や、その技術を認めたということになりそうですね。
ポルシェは「この新しいコラボレーションは、リビルトエンジンの組み立てにのみ焦点を当てる」とコメントしており、よって新規にエンジンを設計するのではなく、すでに製造されてエンジンを「カスタムする」にとどまるということになりそうですが、この作業はカリフォルニア州ロサンゼルスの南にあるポルシェモータースポーツノースアメリカ(PMNA)本社で製造される予定だと公表されています。
ひとつ注意すべきは、シンガーDLS(Dynamics and Lightweight Study)はこの契約とは別のものであり、これに搭載されるエンジンはハンス・メッツガーとの共同設計によってイギリスのウィリアムズ・アドバンスド・エンジニアリングによって製造されることになるようですね。
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参照:TopGear