| この「最初の」RSモデルであるナナサンカレラはのちのポルシェの方向性、そしてイメージをある意味で決定づけたと言っていい |
こういったモデルの歴史を振り返ると、過去の「資産」がいかに自動車メーカーにとって重要なのかがよくわかる
さて、ポルシェはつい一ヶ月ほど前に新型(992世代の)911GT3 RSを発表したところですが、今回は公式Youtubeチャンネルにて、50周年を迎える”初代”911カレラRS 2.7を振り返る動画(30分以上もの見ごたえのある動画)を公開。
この動画ではポルシェを駆って大きな成功を収めたレーシングドライバー、ワルター・ロール(ヴァルター・レアル)、そしてル・マン24時間レースのウィナーでもあるティモ・ベルンハルトがその魅力を語ります。
ちなみにワルター・ロールはポルシェのアンバサダーを務めており、これまでにも「911ターボ全世代」について語る動画も公開されていますね。
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ポルシェ911カレラRSはこんなクルマ
そしてこのポルシェ911カレラRSについて、デビューは1972年のパリ・モーターショー。
ポルシェの「ハイパフォーマンスカーは日常の足であり、レーシングカー由来のマシンも日常の足となりうる」という考えを地でゆくモデルですが、この考え方は現代でも貫かれており、レーシングバージョンのポルシェと、ロードカーのポルシェとでは同じパーツが使われていることも多く(ポルシェとしては、これを分け隔てるのは”法規”くらいにしか捉えていないのかも)、よって消耗品などが安く上がるという理由から「レースをするなら、ポルシェが一番安く上がる」と言われることもあるほどです(多くの自動車メーカーでは、レーシングバージョンに使用されるパーツの多くが専用品となり、市販モデルとの互換性がなく、よって非常に部品が高価である)。※このポルシェ911カレラRS2.7=ナナサンカレラはグループ4カテゴリのホモロゲーションモデルとして市場投入されている
初代911のFシリーズ、「911S 2.4」をベースに、より大きくパワフルなエンジンを積み、軽量化のための構造変更を行い、足回りを固めたのがこの911カレラRS 2.7で、「パワーアップ、軽量化、足回りの強化」という現代のRSモデルにまで通じる考え方を具現化した最初のモデルだとも考えることが可能です。
加えてエアロダイナミクスも改善され、ダックテール式リアスポイラーの装着によってダウンフォースを強化しており、この時代の最高のスポーツカーのひとつとして数えられますが、搭載されるエンジン(2.7リッター・水平対向6気筒)の最高出力は210馬力、最大トルクは255Nm、トランスミッションは5速マニュアル。
車体重量はわずか975kgにとどまり、0-100km/h加速は5.6秒、最高速度は241km/hというスペックを誇ります(これは現代においてもなかなかの数字である)。
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ポルシェが「911カレラRS 2.7」50周年を祝う!ナナサンカレラは「はじめてリアスポイラーを装着」「はじめて前後異なる幅のタイヤを装着」したポルシェだった
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当初は500台のみが生産される予定だったといい(限定したというわけではなく、それがホモロゲーション取得のために必要な台数だったからだと思う)、しかしいざ発売してみると注文が殺到し、結果的には1,525台が生産されることとなっていて、つまりはそれだけ「よりスポーティな911」を望む人が多かったのでしょうね。
なお、911カレラRSのグレードには「ツーリング」「スポーツ」「レーシング」という3種のパッケージが存在し、「スポーツ(ライトウエイト)」パッケージを選んだ場合はリアシート、カーペット、アームレスト、時計さえもなかったといい、「ツーリング」パッケージだと115kgの重量増となったものの、日常的に乗れる範囲の快適性を備えています。
参考までに「レーシング」パッケージだと文字通りレーシングカー同様のスペックを持っており、あまりにスパルタンだったせいか、わずか17台しか生産されなかったという記録も(ツーリングパッケージが最も多く1308台が納車されている。競技用車はこれとは別に55台が生産された)。
もう一つ参考までに、新型911GT3 RS発売に合わせ、北米では「トリビュート トゥ カレラ RS パッケージ」が設定されていますが、実はナナサンカレラ発売当時、アメリカでは排ガス規制のためにナナサンカレラを合法に登録できなかったために正規輸入できず、その後の米国環境保護庁(EPA)による規制緩和により、ようやく合法に登録ができるようになったと言われていますね。
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おそらくナナサンカレラを運転する機会はないだろうが
このナナサンカレラは現在大変な高価格にて取引されるクルマであり、実車を見ることはもちろん、自身で運転する機会はまずないであろうというクルマですが、ぼくは過去に「1975年の911カレラにカレラRSのエンジンを載せ、カレラRS仕様に換装した」車体重量990kgのカレラRS(仕様)を運転したことがあり、これは今までぼくが運転したポルシェの中では「ベスト中のベスト」。
軽さに起因するハンドリングやエンジンの吹け上がりは現代の水冷911とは比較にならないほどシャープに感じられるものの、全般的なフィーリングは現代の911とむしろ「変わらず」911はすでに初代の時点で完成されたクルマだったんだなあ、と感じたことを思い出します。
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ポルシェが911カレラRS2.7(ナナサンカレラ)を振り返る動画はこちら
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参照:Porsche