ポルシェはなぜ911のオフロード版を「サファリ」ではなく「ダカール」にしたのか？「他社が商標を持っていて、使用許可をくれなかったからです・・・」

｜　車名に関する商標に関する問題は年々複雑になっている　｜

ポルシェは「911」の商標についてもプジョーと揉めたことがある

さて、ポルシェは先日「911ダカール」を発売したところですが、これは発売前には「911サファリ」と（非公式に）呼ばれていた911のオフロードバージョンです。

ちなみにですが、ポルシェはこの911ダカール発売の10年前、2012年に「911ヴィジョン・サファリ」なるコンセプトカーを製作したことがあり、以前から”911のオフロードバージョン”に対しては一定の関心を持っていたことがわかります。

なぜ911ダカールは「911サファリ」ではなかったのか？

そこでちょっと気になるのが「911ダカールはなぜ911サファリという名称にならなかったのか」。

この疑問について正式に回答を行ったのが911ダカールのディレクター、トーマス・クリッケルベルグ氏で、同氏によれば、「911サファリ」という名にならなかったのは、ただ単に「商標権の問題があったから」。

ちなみに「サファリ」の商標権を持っているのは現在インドのタタ・グループ（ジャガー・ランドローバーを所有している）で、ポルシェは実際にタタとの交渉を行ったものの、トーマス・クリッケルベルグ氏いわく「タタは”サファリ”の名称の使用を許可してくれなかった」のだそう。※日本だと日産が”サファリ”の商標権を所有しているものと思われる

よってポルシェは「プランB」に切り替えてダカールという名称を使用することにしたそうですが、ここでもまた問題が発生し、他社によってこの商標が取得されていたといいます。

ただしダカールの商標も他社にによって取得済み

なお、「ダカール」というのはセネガルの首都の名で、そしてこういった固有の地名については商標を取得することが一般的にできないため、ポルシェとしては「大丈夫だろう」と考えていたものの、念のために調べてみると、毎年開催される”ダカールラリー”のオーガナイザーであるアマウリスポーツ・オーガニゼーションが”ダカール”の商標権を所有していることが判明したもよう。

ただ、アマウリスポーツ・オーガニゼーションはポルシェとの交渉には（タタとは異なり）積極的で、「多少の金銭の授受」によってポルシェはダカールの名称を使用することが可能になった経緯がある、と紹介されています。

つまりポルシェはタタが交渉に応じれば「サファリ」の名（こちらがプランA）を使用したかったということになりますが、それはもちろんポルシェは1970年代、東アフリカのサファリラリーに”911 SCサファリ”複数回出場させて好成績を納めていたため。

そしてこのオフロード仕様のポルシェ911は、オフロードモータースポーツを愛するポルシェファンの間でカルト的な人気を博することになり、アフターマーケットで製作されたオーバーランディング（オフロード仕様）ポルシェは基本的にサファリと呼ばれるようになっています。

参考までにタタは1998年からその名もズバリ「サファリ」というSUVを販売していますが、これは未だ現行モデルなので、タタがポルシェからのオファーを断ったのも納得できるところですが、おそらくは911ダカールの発売前、まだ「911サファリ」という俗称で呼ばれたいた頃、多くの人が「Safari」という文字列にて検索を行い、そこではじめてタタ・サファリを知ったという人も少なくないかもしれません。

なお、欧州の人々はアフリカ大陸に憧れを抱くことが多いといい（ハイファッションブランドもサファリをテーマにする事が少なくない）、サファリという名称を四王すれば多くの人々に対してロマンチックな響きを感じさせたかもしれませんが、ポルシェはサファリラリーの他にもダカールラリーで大きな成功を納めており、この世界で最も過酷なレースのひとつの名もまた、サファリに劣らぬ（ポルシェらしい）素晴らしいネーミングだと思います。

参考までに、ポルシェは911を発売した際に「901」という名称を使用しており、しかしこれに対してプジョーが「自社の商標に酷似している」としてポルシェに名称を変更するように申し入れ、そこで「901」は「911」になった、という経緯も。

それ以降、ポルシェはそうとうに命名に気を使っているようで、最近だと造語や古語など、他社と被らない名称を使用する傾向にあるようです。

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参照：CARBUZZ