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3年の歳月と巨費を投じて製作されたにもかかわらず、納車後は乗られないまま放置されていたポルシェ911カレラ3.8 RSRシュトラッセンが3億円で落札される

3年の歳月と巨費を投じて製作されたにもかかわらず、納車後は乗られないまま放置されていたポルシェ911カレラ3.8 RSRシュトラッセンが3億円で落札される

| このポルシェ911カレラ3.8 RSRシュトラッセンは964世代の911の中で「もっともワイルドなバリエーションのひとつ」として知られている |

おそらく、これ以上にカスタムがなされた911はほかに存在しないだろう

さて、驚異の内容を誇る「ホワイトコレクション」より、今回は1993年製ポルシェ911カレラ3.8 RSRシュトラッセンの落札報告。

なんと2,073,000ドル(現在の為替レートでは3億500万円)にて落札されており、ポルシェのハードコアモデルの価値の高さが改めて立証される形に。

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なお、ポルシェは51台の競技用911RSR(964世代)を生産していますが、今回落札された個体はポルシェのVIPが注文し特別に製造された2台の”公道仕様(シュトラッセン)”のうちの一台です(一人のVIPカスタマーが一度に二台を注文している)。

そして驚くべきことに、今回落札された911カレラ3.8 RSRシュトラッセン(シャシーナンバー109)の片割れであるポラリスシルバーの個体(シャシーナンバー107)もつい1週間ほど前に別のオーナーとオークションカンパニーによって競売にかけられ(こちらは2,127,500ドルにて落札されている)、まるで「離れ離れになった双子であっても、同じような人生を別の場所で辿っていた」というストーリーのようだとぼくの中で話題に。

存在するのは世界に二台、走行わずか10km。納車されてから一度も運転されることなく30年ぶんの埃を被ったポルシェ911RSR 3.8が競売に
存在するのは世界に二台、走行わずか10km。納車されてから一度も運転されることなく30年ぶんの埃を被ったポルシェ911RSR 3.8が競売に

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このポルシェ911カレラ3.8 RSRシュトラッセンはこんな仕様を持っている

なお、このポルシェ911カレラ3.8 RSRシュトラッセンは新車時に約3000万円ほどで販売されたそうですが、1993年時点の「3000万円」なので、現在のインフレ率を考慮すると、今の貨幣価値では優にその倍を超えるくらいだとも考えられます。

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そしてその価格の高さはとにもかくにも「とんでもない数のオプション」に依存しており、それらオプションを組み込むのにかかった時間は「約3年」(納車されたのは1996年3月で、すでにポルシェはこの2年前に964世代の生産を終了させている)。

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納車先は英国だと紹介されており、しかしどういった理由なのかこのVIPカスタマーの膨大なコレクションの中に収められた後は運転されることはなく、ずっと放置されていたのだそう(もう一台のシャシーナンバー107がそれを証明している)。

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そしてこのシャシーナンバー109の911カレラ3.8 RSRシュトラッセンについては2015年12月にホワイトコレクションのオーナーが所有者(ポルシェのVIカスタマー)から直接購入したもので、当時の距離はわずか66キロメートル 。

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ボディカラーはポルシェオリジナルのグランプリレッド、ホイール(のディスク)はアメジスト、ブレーキキャリパーはゴールド、インテリアはカンカンレッドとグランプリホワイトという仕様を持っており、見たところ「シャシーナンバー107とはボディカラーが違うだけ」。

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スピードライン製ホイールのカラー(38Aアメジストメタリック)と仕様もシャシーナンバー107と共通しており・・・。

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5穴のように見えますが実はセンターロック。

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ポルシェ911カレラ3.8 RSRシュトラッセンはあまりに特別な仕様を持っていた

そしてこの911カレラ3.8 RSRシュトラッセンを特別たらしめているのはその生い立ちのみならず「インテリアにもある」と考えてよく、おそらくはこれまでに生産されたどのポルシェ911に比較してもコストが掛かっているかもしれません。

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ポルシェ・エクスクルーシブの職人によって慎重に作業がなされ、信じられないほど高度な仕上げを持っていますが、カーペットやスイッチ、メーターパネル以外の部分は基本的にすべて革張り。

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このホワイトの部分は遠目にはペイントに見えるものの、実は丁寧にレザーが貼り込まれています(これだけの年月を経ても工場出荷時の状態が失われていないことにも驚かされる)。※エアコン吹き出し口のルーバー、コントロールノブ、ドアロックピンにまでホワイトレザーが巻かれている

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サイドシルやロールケージに至るまでレザーが貼られ、文字通り「筆舌尽くしがたい」仕様です。

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とにかくインテリアは至るところレッドレザーで覆われ・・・。

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シフトノブはもちろん、素材の異なるカーペットやシートベルトの色味までもが合わせられていて、ここまでカラーをマッチさせるには(もちろん既製品では難しいと思われるので)なんども染色を繰り返してサンプルを作ったのかもしれません。

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なお、上述の通りポルシェ911RSRはもともとレーシングカーで、トップクラスのプライベーター向けにポルシェより直接販売され、スパ24時間レース、鈴鹿1000km、インテルラゴス24時間レースなどを戦い注目すべき勝利を収めたほか、ル・マン24時間レースでもクラス優勝、デイトナ24時間レースではクラス表彰台を独占、セブリングでもクラス優勝を果たしたことで知られます。

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そしてこの公道バージョンである911カレラ3.8 RSRシュトラッセンをオーダーするに際し、オーナーは「デチューン」よりも「アップグレード」を望み、より強力なツインイグニッション「ル・マン」仕様のレースエンジン、エアジャッキシステム、120リッターのフューエルタンク、40%ロック率を持つリアディファレンシャルを指定することに。

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そこまでして「お金と時間をかけた」911カレラ3.8 RSRシュトラッセンであるにもかかわらず、納車後に乗ることはもちろん気にかけることもなく放置していたというのは全くのナゾであり、しかしこのシャシーナンバー109はホワイトコレクションのもとで完璧なメンテナンスを受け、ガソリンタンクライナー等が交換されている他、月に一度エンジンに火を入れて各部が適温になるまで動かされているのだそう。

この911カレラ3.8 RSRシュトラッセンは964世代では最もレア、そしてもっともハードコアな911のひとつとして認識されていますが、次にオークションに登場する時は間違いなく「さらに高い価格にて」落札されることになりそうですね。

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参照:RM Sotheby's

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