ポルシェ911のエンジン開発責任者、トーマス・ブランドル氏によると「次期911ではマニュアルは作らないかもしれない」とのこと。
現在ポルシェ911においてマニュアル・トランスミッションを選ぶのはわずか10%とのことですが、その10%のためにマニュアル用のパーツを用意したり開発費を投じるのはもはやビジネスとして正当化出来ない、という内容です。
実際のところそのとおりかもしれず、10%を切り捨ててもそのぶんの研究開発費が浮いたりすれば「利益として10%分ををまるまる失う」わけではない、ということになります。
たとえ開発が完了しているトランスミッションであったとしても、新型車に搭載するに当たりテストは必要で、もちろんマニュアル化のための専用パーツの手配も必要。
それらのコストが「見合わない」と判断するかもしれないということですね。
もちろんこれは決定ではなく、社内のひとつの「声」だとは思われますが、GT3をPDKのみで発売したり、ケイマンGT4や911RをMTのみで発売したりということは、「MTを用意した場合とそうでない場合との可能性」を探っているのかもしれない、とは考えます。
マニュアル・トランスミッションは北米を中心に人気となっていますが、北米はポルシェにとって非常に重要なマーケットであり、ポルシェがマニュアルを廃止するということは北米の要望を封印するということにも近く、北米のディーラーが強く反発することも考えられますね。
ポルシェ、フェラーリ、マクラーレンはすでにマニュアル・トランスミッションを廃止しており、逆にアストンマーティンは「最後の最後までマニュアルを存続させる」と明言。
ぼく自身はポルシェ・ボクスターS(986)、911カレラ(997)ではマニュアルを選択しており、ほかにもミニクーパーS(R56)でマニュアルを選択するなど比較的マニュアル好きではありますが、ロボットクラッチもしくはPDKによるドライビングポジションの自由さ(クラッチの踏みしろを考えなくても良い)、最近の車の運動性能の高さにはもはや人間の手の動きがついて行かず「指先」だけのパドルシフトがマッチしていることを考えると、「マニュアルの消滅やむなし」とは考えています。
なおポルシェ社内でもマニュアル賛成派とそうでない派がいるようで、そういった人たちのインタビューごとに異なる意見が出てくるので、今回の意見が「ポルシェ社の総意」ではないことは再度認識しておく必要があります。
アストンマーティン「我々はMTを作る最後のメーカーになる」
フェラーリ「もうマニュアル・トランスミッションを作ることはない。絶対にだ」
BMW「マニュアルに加えDCTも消滅。もはやトルコン式ATには勝てない」
ポルシェのGT部門責任者Andreas Preuingerによると、まずケイマンGT4はプレミアム性を高めるために生産が1800-2500/年に絞られる見込み。
常にウエイティング・リストが出来る状態にしておきたいようですね。
なお、GT系においてはマニュアルトランスミッションを搭載したいと考えているようで、これは現在のラインナップとは異なる(GT3/GT3RSはPDKのみ)ところではありますが、将来的に「GT系の掟」のようなものでポルシェ内でも統一の見解が出るかもしれません。
ケイマンGT4はMTのみの提供ですが、これが高く評価されたり、受け入れられたりすると、GT3やGT3RSにもMTが用意されるかもしれませんね。
なお、マカン/カイエンのGT系(GTS)はスポーツモデル(911/ボクスター/ケイマン)のGT系とは意味が異なるようで、マカン/カイエンGTSはどちらかというとイメージ的なもの、スポーツモデルGT系はサーキットを重視したもの、という位置づけのようです。
そのため、BMWのMモデルがAWDになろうとも、ポルシェのスポーツモデルGT系には4WDを搭載しない、とも発言しているようですね。