| 製造から56年が経過し、その間の様々なオーナーによって数々の変更が加えられる |
当時のフェラーリは「1台ごとに仕様が異なっていた」
さて、フェラーリは自社にてクラシックカー部門「フェラーリ・クラシケ」を保有していますが、今回はそのフェラーリ・クラシケにて4年の歳月をかけてレストアしたという250GTOが公開に。
そしてこのフェラーリ250GTOは1962年から1964年にかけて36台が製造され(330GTOまで入れると39台)、現代において「もっとも価値が高いフェラーリ」のひとつに数えられます(現在の相場は100億円くらいだとも言われている)。
ポジション的には250SWBの発展形であり、この250GTOの開発を担当したのはジオット・ビッザリーニ。
エンツォ・フェラーリから与えられた命題はただひとつ「ジャガーEタイプに勝利すること」であり、1961年9月にはテストを開始するものの、同年11月には「宮廷の反乱」によってジオット・ビッザリーニはフェラーリを離れることになり、最終的なボディの架装はスカリエッティへと委ねられることになります。
なお、この250GTOがその価値を高めているのは「素晴らしい戦績」にあり、1962年3月のセブリングにおけるデビュー戦でのGTカテゴリー優勝にはじまり、その後3年にわたり勝利を量産したことが高く評価されているわけですね。※GTOとは「Gran Turismo Omologato(グラン・ツーリスモ・オモロガート)」を意味している
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このフェラーリ250GTOはこういった経歴を持っている
そして今回レストアされたフェラーリ250GTOについて、最初のオーナーはオリンピック金メダリストのアンリ・オレイエ。
彼は23歳のときにスキー競技にてフランス初のオリンピック金メダリストとなり(1948年のサンモリッツ冬季オリンピック)、それ以降「ダウンヒルの狂人」と呼ばれるほどにぶっとんだ滑りを見せたと言われます。
その後はさらなる刺激をもとめてモータースポーツへと興味の対象を移しますが、フランス生まれの実業家であるジョー・シュレッサーとコンビを組み、1962年に納車されたばかりのフェラーリ250GTO(シャシーナンバー3851GT、250GTOとしては17番目の生産)を駆ってツール・ド・フランス・オートモービルに参戦してイキナリ2位を獲得することに。
ただ、その2週間後のレースでアンリ・オレイエは競技中にコントロールを失って民家に衝突し、その衝撃でマシンは大破、アンリ・オレイエは即死状態だったといいます。
しかしながらパートナーのジョー・シュレッサーは大破した250GTOをフェラーリにて修理し、その際にはシルバーからレッドに改められたそうですが、今回のレストアによってもともとのシルバーに戻されており、工場出荷時の状態に復元されています。
そしてまた当時に話を戻すと、レッドにペイントされたこのフェラーリ250GTOを手に入れたのはパオロ・コロンボというジェントルマンレーサーで、スクーデリア・トレンティーナのカラーリングでレースを戦った後、この個体は南チロルのオルティゼーイに住む冒険家であるエルネスト・プリノートの手へと渡り、さらにその1年後にローマの企業家一族の青年、ファブリツィオ・ヴィオラティへとこの250GTOを譲渡します。
なお、この青年はフェラーリ250GTOを両親に内緒で購入したために自宅から離れた場所へと保管し、もっぱらドライブするのは夜だったそうですが、なんと彼はオリジナルのナンバープレート(MO 80586)とともにこの250GTOを「死が分かつまで」所有し続け、その死後には彼が収集した数々のアイテムとともにオークションへとかけられたのだそう。
現オーナーが「当時の仕様へと戻すべく」フェラーリ・クラシケへとレストアを依頼
そして2014年にそのオークションにてこの250GTOを購入したのが現在のオーナー、ロンドン在住のブラジル人実業家であるカルロス・モンテベルデ。
そして同氏は2018年にフェラーリへとこの250GTOのレストアを依頼し、そして今ついに完成した、というワケですね。
フェラーリ・クラシケ、そしてカルロス・モンテベルデが目指したのは、このフェラーリ250GTOを、アンリ・オレイエ、そしてジョー・シュレッサーが乗っていた頃と同じ仕様へと戻すこと。
なお、当時フェラーリは250GTOを1台づつハンドメイドにて生産していたのですべて異なる仕様を持っていたといい(シートメタルを木型に当てて叩きながら成形しており、顧客の要望に応じて細部を変更するのが当時の方法だった)、よって標準の仕様というべきものがなかったため、フェラーリ・クラシケは当時の写真を参考にしつつレストアを進めていたようですね。
参考までに、この個体の場合、ヘッドライトはほかの250GTOに装着されていたマーシャル製ではなく、アンリ・オレイエのスポンサーであったシビエ製が装着されるなど特殊な部分があったといい、しかしそういった固有の仕様もレストアに際してしっかりと再現されています。
加えてフォグランプ(シビエ製)も長方形かつ角が張っており(マーシャル製のランプはもっと奥に入っている)、しかしこういった部分すらも「復元」されていて、さらにインテリアにおいても製造当時と同じブルーへと変更済み。
レース仕様の3リッターV12(ヴィオラティによってパワーアップされていた)、シャシー、サスペンション、アクスル、トランスミッション、ブレーキシステムなど可動部品は徹底的にレストアがなされ、文字通りの「新車コンディション」へと復元された、と紹介されています。
なお、この画像では、250GTOの特徴的なD字リッドが閉じていますが、これはもともと「脱着式」構造を持っていて、ファスナーを回転させることでカバーを外し、ラジエターへの空気流入量を調整できるようになっているのだそう。
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