
Image:Ferrari
| とにかくルーチェほど様々な議論を巻き起こしたフェラーリは他にない |
ルーチェはフェラーリファンすらも「分断」してしまった存在である
モータースポーツの伝統とガソリンエンジンの官能的なサウンドで世界を魅了してきたフェラーリ。
その歴史における大きな転換点となるブランド初の完全EV(電気自動車)「ルーチェ(Luce)」の第一号車が中国・広州のディーラーに到着したと報じられています(先日、上海で公開された車両と同一のものなのかどうかはわからない)。
なお、この個体はワールドプレミア時に初披露された鮮やかなレッド「ロッソ・フィアマンテ(Rosso Fiammante)」を纏った展示・試乗用のデモカーだとされ、このカラーを選んだのは「中国市場の嗜好を意識して」のことなのかもしれませんね(ロッソ、そしてフェラーリのイエローのエンブレムは中国の国旗と同じカラーコンビネーションである)。
1,000馬力オーバーの中国製EVが台頭するEV最先進国・中国において、イタリアの至宝が放つ電動ハイパーカーはどのように受け止められているのか、現地での反響、過酷な市場環境、そしてスペック比較を上回る圧倒的なブランド力について考えてみましょう。

この記事の要点(30秒でわかるサマリー)
- フェラーリ初の完全電動モデル「ルーチェ」が中国・広州に到着:一般顧客用ではなく、グローバルデビュー時に公開された「ロッソ・フィアマンテ」のデモカー。
- デザインやスペックへの賛否両論:斬新なスタイリングと高スペック(1,050馬力)を誇るものの、過酷な中国EV市場において圧倒的とは言えないとの声も。
- 約8,500万円の超高価格帯:中国での販売価格は398万8,000元(約8,500万円相当)。欧州よりは低い設定だが、地元中国製ハイパーEVと比べると大幅に高額。
- 中国割り当て分88台は即完売:性能数値の比較を超えた「フェラーリ初のEVという歴史的価値」を求める富裕層により、瞬時に予約が埋まる事態に。
現地での反響とデザインの評価
現地SNSやメディアでの反応は「賛否両論」が入り交じる複雑なものとなっているようで、特にフェラーリの伝統的なプロポーションから一線を画す先進的なスタイリングに関しては議論が続いており、従来のガソリンエンジンモデルを愛するコレクターと、新しい電動化時代を歓迎する層とで評価が分かれているもよう。
ただ、他の国や地域ほど「否定派」ばかりというわけではなく、肯定派も相当数存在し、ある意味ではそういった肯定派がこれからのフェラーリ、そして自動車業界の未来を作ってゆくのかもしれません。
そして興味深いのは、Weiboなど現地のSNSを見る限りでは、実際に購入できる財力がある人は「ルーチェに肯定的」で、そうでない人々は「否定的」といった傾向を見て取ることができ、ルーチェの否定派は(中国だと)「実際に買えない人のやっかみ」という風潮が存在すること。
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超激戦区・中国EV市場と価格設定
中国におけるルーチェの販売価格は398万8,000元(約8,500万円)とすでに発表されていて、これは欧州市場での価格設定よりは若干抑えられているものの、現地の中国系高級EV(1,000馬力級モデル)と比較すると非常に高額です。
現在の中国マーケットでは、はるかに手頃な価格で同等以上の加速性能を提供する国産ハイパーEVが存在するため、純粋なスペック対価格比(コスパ)では苦戦が予想され、さらにはインフォテイメントシステムの先進性、自動運転機能、充電含むEVとしての利便性も「中国勢が上」という状況があり、しかし蓋を開けてみれば「即完売」。※諸説ある
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フェラーリ ルーチェ(Luce)主要スペック一覧
| 項目 | スペック・詳細 |
| パワートレイン | 4モーター独立駆動(AWD) |
| 最高出力 | 1,050 hp |
| 0-100 km/h 加速 | 2.5 秒 |
| 最高速度 | 310 km/h |
| バッテリー容量 | 122 kWh |
| 航続距離 | 最大 530 km(CLTC規格) |
| 急速充電性能 | 最大 350 kW 対応 |
| 中国販売価格 | 398万8,000元(約8,500万円) |
競合比較と市場での位置付け
スペック上の数値だけを見れば、昨今の中国EV市場には驚くべき競合が存在し、例えば、BYDのハイエンドブランド「仰望(Yangwang)」が展開するU9などは1,300馬力オーバーの出力を備えつつ、ルーチェの半額以下の価格帯で販売されています。
しかし、こうした市場環境にもかかわらず、中国市場に割り当てられた初期限定88台の「ルーチェ」は即座に完売していて、このセグメント(ウルトラ・ラグジュアリーEV)を購入する富裕層やコレクターにとって、単なる「0-100km/hがコンマ数秒速いかどうか」といったスペック数字は最優先事項ではなく、彼らが購入しているのは、「跳ね馬のエンブレムを掲げた史上初のEV」という歴史の1ページ(歴史的価値)そのものというわけですね。
実際のところ、中国ではルイ・ヴィトンそしてエルメスといったハイブランドが相変わらず人気ではありますが、バッグ市場を見渡すと、「それらよりも遥かに安価で、遥かに使い勝手に優れる」製品が多数あるにも関わらず、それでも「エルメスやルイ・ヴィトンの製品を購入するのはなぜか」という疑問が「なぜルーチェが売れるのか」という同じ疑問にも通じているように思われ、そしてその答えはただひとつ、「それらはほかに代えることができないブランド価値を持っているから」。
そう考えるならば、ルーチェを批判する人々は、ブランドバッグを批判する層ともまた共通点があるのかもしれません。

結論
広州に到着したフェラーリ ルーチェはスペック競争が激化する現代のEVマーケットに「ブランドの歴史と格」という新たな価値基準を突きつける存在であり、デザインやパフォーマンスへの評価は人それぞれではあるものの、中国割り当ての88台が瞬時に完売した事実こそが、跳ね馬のバッジが持つ絶対的な価値を証明しているようにも思います。
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